日銀総裁人事案固まる ~ クライマックスを迎える「アベノミクス相場」

日銀総裁に黒田アジア開発銀行総裁を起用する政府の人事案が固まったようだ。TPPへの交渉参加が決定的になったことに加え、安倍総理の掲げる「大胆な金融緩和」を支持する日銀総裁の誕生を歓迎して、為替市場では94円台まで円安が、株式市場では日経平均株価が2008年9月以来約4年5か月振りの11,600円台まで上昇して来ている。

金融市場が円安・株高に反応するにつれ、相場に対して強気の見方も増えて来ているようだ。しかし、金融市場は、「大胆な金融緩和」を支持する日銀総裁人事の決定をもって、一旦クライマックスを迎える可能性があることも視野に入れておくべきである。

野田前首相が「自爆解散」を打ち出し、安倍政権誕生のアシストをして以降、 「おれたちはまだ何もしていない。ちょっとアゴでするだけで株価は2割強上がり、為替もスルスルと円安になった」(麻生財務相)。安倍政権が「まだ何もしていない」のに、金融市場が円安・株高に転じたのは、安倍政権の誕生が、タイミング的に米系投資銀行等が新年度入り(多くの投資銀行の決算は11月~12月)と重なったことが大きく影響している。

新年度を迎え、投資運用の世界でアセットアロケーション(資産配分)の見直しが行われるのは日米とも共通の行事である。安倍政権の誕生により、政策的に円安・株高の可能性が高まった日本固有の要因に加え、米国ではFRBが金融緩和の「出口」に関する議論を始め、欧州ではECBが金融危機回避のために実施したLTRO(期間3年流動性供給オペ)のECBへの返済が始まり、欧米との金融環境における相対比較においても円安の可能性が高まる状況となった。

こうした投資環境の変化を反映して、外国人投資家は、昨年11月12日から始まる週以来、2013年2月第2週(2月15日)まで14週連続で日本株を買い越しており、その期間の買い越し総額は3兆6737億円に達している。この買い越し額は、昨年第1四半期(2012年1~3月)の買い越し額1兆2897億円の約3倍に達するだけでなく、昨年1年間の買い越し総額2兆8264億円、過去5年間で最も買い越し額が大きかった2010年の年間買い越し額3兆2105億円をも上回る大規模なものである。

買い越し総額が3兆6737億円に達したから今後外国人投資家の大幅な買い越しが期待できないというものではない。考えておかなければならない問題は、運用に関する「時間軸」である。

今年に入り、明らかに外国人投資家は全体として日本株への資産配分を増やして来た。この資産配分を増やす段階で重要なことは、「量を集める」ことである。「量を集める」必要がある段階では、業績の良い個別企業をピックアップして投資するような投資手法は採らないのが一般的である。「量を集める」必要のある「質より量」の段階では、投網を掛けるような買い方が最も効率的であり、Topixなど主要指数(ベンチマーク:BM)に連動したバスケットを買うという投資行動が主流となる。それ故、この「質より量」を求める段階は、株価指数が上昇しやすい局面となる。

そして、必要な「量を集める」段階の次に来るのが、ポートフォリオの「量より質を高める」段階である。ここで行われるのは、「量を集める」ために玉石混交となっている銘柄を取捨選択する工程である。業績の良い銘柄はBMに対してオーバーウエイトとし、業績的に劣る銘柄はアンダーウエイトにして行くという作業である。この「量より質」の段階では、売りと買い共に生じることから、「質より量」を求めた段階と比較すると買い越し額は大規模にならないのが普通である。従って、この局面ではベンチマーク(主要株価指数)よりも、個別銘柄物色傾向が強まっていく。

外国人投資家の多くは、BMとの競争をしている。従って、BMの上昇が見込まれる過程では株式の組入れ比率を早く引き上げる必要性が高くなる。外国人投資家の投資行動が時として順張りになるのは、多くの運用担当者がBMとの競争を強いられている結果でもある。

日経平均株価は昨年11月13日の8,661円から25日の引値11,662円まで約35%、今年に入ってからでも約12%上昇して来た。

こうしたブル相場の中で、「大胆な金融緩和」を支持する新総裁が決定するということは、投資家の期待をさらに膨らませる出来事である。しかし、「大胆な金融緩和」を支持する日銀総裁の誕生は、日銀に「大胆な金融緩和を求める」として来たアベノミクスの第1楽章の終幕でもある。

「大胆な金融緩和」を支持する日銀新総裁の誕生は3月19日。そして、新体制で開かれる最初の金融政策決定会合は、4月3日~4日である。新総裁誕生直後に臨時金融政策決定会合が開催されないとは言い切れない。しかし、2003年3月に米国によるイラク空爆と日銀新総裁誕生(当時福井新総裁)が偶然重なったことで、5日後の3月25日に臨時の金融政策決定会合が招集されたことはあるが、白川総裁が就任した際には臨時の金融政策決定会合は招集されてはいないことを考えると、特殊なイベントが起きない限りは臨時金融政策決定会合が開かれる可能性は高くない。ということは、新総裁誕生から半月の間は、新たな「大胆な金融緩和」が実施されない空白期間となる。

新総裁を迎えて「大胆な金融緩和」を打ち出される可能性の高い4月4日まで1か月強。その間、日銀総裁人事決定による「大胆な金融緩和政策期待」でマーケットを引っ張り続けられるだろうか。

日銀総裁人事が、金融市場の期待通りの結果で決着することで、金融市場も一つの節目を迎える可能性は高い。それと共に、株式市場でも「質より量」の局面から、「量より質」の局面に変化して行く可能性があることは念頭に置いておいた方が賢明かもしれない。

「大胆な金融緩和」を支持する日銀総裁人事案の決定は、株式市場がより高みを目指すための号砲というよりも、高値波乱を迎える可能性に対する警報と捉える慎重さが必要である。

スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

入会キャンペーン 実施中!

メルマガのお知らせ

著書

アラフォー独身崖っぷちOL投資について勉強する

Anotherstage LLC

金融に関する知見を通して皆様の新しいステージ作りを応援

FC2ブログランキング

クリックをお願いします。

FC2カウンター

近藤駿介 facebook

Recommend

お子様から大人まで
町田市成瀬駅徒歩6分のピアノ教室

全記事表示リンク

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

QRコード

QR