円安の必要条件は強いユーロとドルの存在である~「何もしないのに」とばっちりを受けたアベノミクス

早川日銀総裁の後任に、「大胆な金融緩和」を支持する黒田アジア開発銀行総裁を登用する政府人事案が決まった翌日の金融市場は、イタリアの政局不安の煽りを受け、円相場が一時91円台へと前日比で約2円50銭急進。これを受け日経平均株価も今年2番目の下げ幅を記録。昨日の上げ幅276円の殆どを吐き出す結果となった。

「何もしないうちに」その効果が金融市場に現れたアベノミクス。今回は「何もしないのに」イタリアのとばっちりを受けた格好。

イタリアの総選挙の結果が「想定し得る最悪の結果」(ロイター)となったとはいえ、緊急経済対策を盛り込んだ総額約13兆1000億円の2012年度補正予算がねじれ国会の参院本会議で可決、成立し、アベノミクスの「大胆な金融緩和」と「機動的な財政政策」の「2本の矢」が揃ったその日に、円高・株安に見舞われたのは何とも皮肉な現象である。

また、イタリアの総選挙で反緊縮財政を掲げる中道右派が予想外の支持を集めたことが、日本で積極財政を掲げて大勝したアベノミクスに冷や水を浴びせる結果になるのも、皮肉なこと。震源地となったイタリアでは国債利回りが上昇し、余波を受けた日本では国債利回りは0.6%台と、実に9年8か月ぶりの水準まで低下した。

「大胆な金融緩和」を支持する日銀総裁人事案に対する国内の反応は、一段の円安が期待できるという好意的なものが殆どであった。しかし、こうした円の事情だけに着目した円安期待論は、ドルやユーロが相対的に強い状況を維持することが円安が続く必要条件であることを無視したもの。今回のイタリア発のとばっちりは、こうした議論のスキを突かれたものでもある。

「大胆な金融緩和」を支持する日銀総裁人事案が固まったとはいえ、日銀が今現在市場に提供しているハパワードマネーが欧米に比較して少ない状態にあり、ドルやユーロからのリスクオフの動きが生じた際、必要以上に円高になってもおかしくない状況が続いていることを忘れてはならない。

日本の「大胆な金融緩和」が物価上昇をもたらすという主張は妄想に近いが、「大胆な金融緩和」は「有事の円買い」が生じた際の円高を緩和するための必要な措置である。

イタリアの総選挙によって、忘れかけていたユーロ危機がゾンビのように甦ったが、米国でも今週は財政支出の強制削減問題や、バーナンキFRB議長の議会証言など、市場に影響を及ぼしそうなイベントが盛り沢山であり、日本の国内要因だけで円安が進行するとは限らない。

筆者の経験則からすると、「万人が悪材料と感じる材料による影響は、比較的短時間で終わる」ケースが多いが、日本の国内事情だけで円安が進むと盲目的に考えるのは危険である。当たり前のことであるが、為替市場は相対比較で動くものである。
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近藤駿介

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