大胆な金融緩和 ~ 米国で「インフレリスクを生じさせていない政策」で「2%のインフレ達成」を目指す日本

「日本国債にマネーが流入している。日銀の正副総裁人事が映す大胆な金融緩和観測に加え、イタリアの政局混乱で投資家のリスク回避姿勢が再び強まったためだ。…(中略)… 長期金利の指標となる新発10年債利回りは26日、一時0.675%と2003年6月27日以来9年8カ月ぶりの水準に低下(価格は上昇)した」

国内で暴落懸念が絶えることの無い日本国債に、マネーが流入している。日本経済新聞は「日銀の正副総裁人事が映す大胆な金融緩和観測に加え、イタリアの政局混乱で投資家のリスク回避姿勢が再び強まったためだ」と尤もらしい説明を加えて伝えているが、これはおかしな話し。

「アベノミクス」への期待を背景に、 「おれたちはまだ何もしていない。ちょっとアゴでするだけで株価は2割強上がり、為替もスルスルと円安になった」(麻生財務大臣)。日経平均株価は、野田前総理が「自爆解散表明」に打って出た昨年11月14日以降、今月25日には08年9月29日以来となる水準である11,662円まで、価格で約3,000円、率にして34.7%上昇して来た。また、80円を割り込んでいたドル円も、94円13銭と、価格で14円強、率にして17.8%上昇して来た。

こうしたなか、日本の国債市場では、10年債利回りが9年8カ月振りとなる0.675%まで低下(価格は上昇)して来ている。日本国債10年物利回りは、野田前総理の「自爆解散表明」時には0.73%近辺であった。その後昨年末に0.835%付近まで上昇(価格下落)したものの、今月に入り低下傾向を鮮明にして来ている。

日本経済新聞は「日銀の正副総裁人事が映す大胆な金融緩和観測」が日本国債利回りの低下の要因であるかのような報道をしているが、これは説得力に欠ける説明である。

次期日銀総裁にほぼ内定している黒田アジア開発銀行総裁は、直近のインタビューでも、日銀が掲げた物価目標2%達成の期間を2年としていることに対し、「各国のインフレターゲットも2%で、期間も2年程度。おおむね妥当だ」という認識を示したうえで、「日銀が買うことのできる金融資産はいくらでもあり、2%達成の手段は多い」と答えている。

「日銀が買うことのできる金融資産はいくらでもあり」という発言は、現在3年債以内に限られている日銀の買い入れ対象国債の長期化を示唆したものであり、中長期国債の需給が改善するという読みも成り立つかもしれない。しかし、アベノミクスによる「機動的財政政策」によって、国債の発行残高が増えるとともに、「2年程度で2%のインフレを達成出来る」と豪語する日銀総裁が誕生することが確実な情勢で、0.6%台の10年国債に投資していくのは余りに危険な投資行動である。

債券市場の投資家の投資行動が論理的に正当化されるのは、次期日銀総裁の「2年程度で2%のインフレは達成出来る」という発言を信用していない、かつ、2%のインフレ目標を達成出来ず「デフレ脱却に失敗」したとしても、「日本国債にイタリアのような信用不安は生じない」という場合である。

「日本国債にマネー流入」という現象は、債券市場の投資家が、「大胆な金融緩和で2%のインフレを達成出来る」とは考えていないこと、実際には債券投資の経験のない有識者や財政至上主義者達が声高に騒ぎ立てる、「ハイパーインフレ」や「日本国債暴落論」の現実性は高くないと考えていることの証左である。

アベノミクスの効果に大きな期待を寄せる為替市場と株式市場と、アベノミクスに対する期待もリスクも感じていない債券市場。両極端の見方の間で揺れ動いている現在の日本の金融市場。どこかで落ち着きどころを探ることになる可能性は高い。

「現在の経済環境において、資産買い入れおよび、より全般的な金融緩和による利点は明白だ。金融政策は景気回復への重要な支援を提供する一方、インフレ率を連邦公開市場委員会(FOMC)の目標である2%の近辺に維持している」

米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は26日、上院銀行委員会での議会証言で当局による前例のない資産購入を擁護する姿勢を示した。また、「成長率が引き続き2%近辺で推移していることはプラスの材料だ。しかし、われわれが望んでいるほどの力強いペースではない」とも述べ、資産購入は景気拡大を支援している一方で、インフレや資産価格バブルを引き起こすリスクはほとんどないと説明した。

「成長率が引き続き2%近辺で推移している」米国で、大規模な金融緩和政策が「インフレや資産価格バブルを引き起こすリスクはほとんどない」と説明するバーナンキFRB議長。

これに対して、成長率が「海外経済の低迷に伴う輸出や設備投資の不振で3四半期連続のマイナスとなった」日本で、「2年程度で2%のインフレは達成出来る」と主張する次期日銀総裁。

バーナンキFRB議長の主張が正しいとしたら、「3四半期連続のマイナス」「16四半期連続でGDPデフレーターがマイナス」の日本で、「2年程度で2%のインフレ」という目標を達成することは至難の業と言える。反対に、次期日銀総裁が「3四半期連続のマイナス」「16四半期連続でGDPデフレーターがマイナス」の日本で、「2年程度で2%のインフレ」という目標を簡単に達成したら、バーナンキ議長の面目は丸潰れとなる。

「通貨マフィア」と呼ばれ、国際金融担当者と通貨政策で非公式の利害調整にしのぎを削ってきた経験を買われて次期日銀総裁に内定した黒田アジア開発銀行総裁。「大胆な金融緩和」で「2年程度で2%のインフレ」が達成可能であるということを、どのようにFRB議長に伝えるのだろうか。「通貨マフィア」の真価が問われることになりそうだ。
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