「能ある鷹」か「爪の無い鷹」か ~ 次期日銀総裁候補、「金利スワップやデリバティブ取引検討」

「現在の円安・株高は『マネーゲーム的な状況ではない』とし、今後強力な金融緩和を進める姿勢をあらためて強調した」

政府が次期日銀総裁の候補者に指名した黒田東彦・アジア開発銀行総裁は11日、参院の議院運営委員会で行った所信表明後の質疑でこのように述べた。「マネーゲーム」の定義が定かでない質問自体、大した意味を持つものではない。しかし、民主党政権時代に2兆円前後であった個人投資家の週間売買代金が、今年に入り「信用取引の規制緩和」などを背景に5兆円~8兆円と大幅に増加して来ていること、ネット証券大手が個人投資家向けにデイトレーダー用のパソコン一式の仲介販売を始めることが報じられるなど、「マネーゲーム」の様相が徐々に強まって来ていると言える状況にはなって来ている。

「大胆な金融緩和」を謳う次期日銀総裁候補にとって、正式就任前に市場が「マネーゲーム」の様相を強めることは、「大胆な金融緩和」実施の障害にしかならない。定義には関係なく、「マネーゲーム状況」にある中で「大胆な金融緩和」を実施すれば、中央銀行がバブルを助長することになる。一方、それを恐れて「大胆な金融緩和」を実施しなければ、「やるやる詐欺」と見做され、市場の信頼を失うことになる。就任後早い時期に「大胆な金融緩和」を実施しなくてはならない立場にある次期日銀総裁にとって、就任前にこれ以上の円安・株高が進むことは必ずしも歓迎すべきことではなさそうだ。

「金利スワップなどデリバティブ市場での買い入れの是非も議論・検討したい」

今回の参院議員運営委員会での発言で注目されるのは、先週行われた衆議院での所信聴取では口にしなかった「金利スワップなどデリバティブ市場での買入れ」に言及した点。

通常元本の受け渡しを伴わない金利スワップや、レバレッジを掛けるデリバティブ取引を中央銀行が行っても、市場への資金供給には繋がらない。簡単に言えば、それは「金融緩和」ではなく、中央銀行が「マネーゲーム」に参加するということ。

また、市場で買い入れる国債の価格変動リスクをヘッジするために金利スワップを使うにしても、金利市場をコントロールする権力を持っている中央銀行のカウンターパーティーになる市場参加者が出て来るのか、大いに疑問である。

例えば、日銀が金利スワップの買(固定金利を受け取り、変動金利を渡すポジションで、金利が低下すると利益が出る)のポジションを取ろうとして市場でその相手方(金利が低下すると損するポジションを組む)を探そうとしても、金利を下げる力を持った中央銀行相手に、中央銀行と正反対のポジションンを取る勇気あるプレーヤーがいるか、という問題である。

また、金利スワップのカウンターパーティーを市場で探すということは、中央銀行の意向が一部の投資家に伝わるということで、場合によっては究極のインサイダー情報になりかねない危険な行為である。こうした危険を冒してまで、中央銀行が金融緩和政策とは言えない金利スワップやデリバティブ取引を行う意味があるのだろうか。

白川日銀の政策に対して批判を加えることで市場に対して期待を与えて来た次期日銀総裁候補。しかし、伝わって来ることは、安倍総理に対する忠誠心であり、残念ながら新たな金融政策や、金融市場に対する高度な知見ではない。今回の「金利スワップやデリバティブ取引」発言は、白川日銀との違いを出そうとするあまりに、知見の浅さを露呈してしまったというのが真相かもしれない。

「能ある鷹」が爪を隠しているだけなのか、そもそも出すほどの爪を持ち合わせていないのか。その答えが分かるまで、あと1週間ほどである。
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