国民と司法を軽視した、耳を疑うような「衆院選挙制度改革」

昨年12月に実施された衆院総選挙で1票の格差が最大で2.43倍あったことに関して、東京に次いで札幌、仙台、名古屋と、相次いで「違憲」「違憲状態」という判決が出される中、自民党から耳を疑うような衆院選挙制度改革案が出て来た。

14日に自民党が公明・民主両党に示した改革案は、「比例代表の定数を30削減して150にし、このうち60議席を得票率2位以下の政党に割り振る『特例枠』を設ける」というもの。

自民党が提示したこの改革案は、国民をなめきった代物である。

衆院選挙制度が抱える問題点は、「定数削減(身を切る改革)」、「1票の格差」、「得票率と獲得議席数の大きな乖離」である。しかし、今回自民党が出して来た改革案は、これらの問題をどれ一つとして満足に改善しない「国民と司法に対する0回答」に近いものである。

「比例代表の定数30削減」の規模の議論はともかくも、「1票の格差」に関して「違憲」または「違憲状態」という司法判断がなされている中で、何の対応策を出してこないというのは驚きである。自民党が掲げた「0増5減」は、司法から「格差が2倍未満になるよう最小限の改定にとどめるもの。最高裁判決が求めた改正とは質的に異なる」と批判を受けたもの。その「0増5減」を平然と掲げる厚顔無恥ぶりには呆れ返るばかり。

さらに、「得票率と獲得議席数の大きな乖離」には殆ど手を付けていないに等しい。2012年の衆院選で小選挙区に出馬した自民党候補は、300選挙区の有効投票総数のうち43%の票を得たのに対し、獲得議席数は300議席の79%にあたる237議席と大勝した。一方、民主党は有効投票総数に占める総得票率が22.8%だったが、300議席の9%にすぎない27議席しか獲得できなかった。

単純に小選挙区の得票率から算出した獲得可能議席数と比較してみると、自民党は108議席得(超過議席獲得)したのに対して、民主党は41議席、日本共産党は23議席、日本維新の会は21議席、日本未来の党は13議席、みんなの党は10議席の損をした(逸失議席数)と言える状況となっている。

一方、比例代表選挙の方は、得票率と獲得議席比率の乖離は最大の自民党で4.1%、7議席得をし、日本未来の党、日本共産党、社会民主党各党が3議席ずつ損した形。

この分析から言えることは、「得票率と獲得議席数の大きな乖離」を修正するためには、比例代表ではなく、小選挙区制度を見直す必要があるということ。

こうした事実を無視して、制度を見直すべき小選挙区において「最高裁判決が求めた改正とは質的に異なる」と批判を受けた「0増5減」でお茶を濁し、直ちに大きな修正を必要としていないと思われる比例代表において「特別枠」なる中小政党「買収枠」を設けるというのは、全くの茶番である。

そもそも小選挙区制というのは、日本が2大政党制に向かうことを前提に採用されたもの。しかし、現実は少数政党が乱立する形になり、小選挙区制が「1大政党」を誕生させるという笑えない構図になっている。

それに対して今回自民党が示した改革案は、少数政党の乱立を前提に、比例代表において少数政党に「買収枠」を設けるというもの。あるいは、総選挙で大勝、大敗が繰り返されている事実に基づき、自民党は次回の総選挙での敗北(比例で第2位以下になること)を念頭に置いて「救済枠」を設けたということなのだろうか。

2大政党を前提とした小選挙区制を残したまま、比例代表制度を、中小政党乱立を前提とした制度に衣替えして行くというのは、どう考えても論理矛盾である。

 「今国会で成立させる義務まではない」

14日の自民党選挙制度改革問題統括本部で細田博之本部長がこう語ったと報じられている。

この発言は、2012年の総選挙の際に国民に提示した「自民党政策集J-2012」で掲げた「衆議院議員の定数削減については、三党合意に基づき、選挙制度の抜本的な見直しについて検討を行い、次期通常国会終了までに結論を得た上で必要な法改正を行います」という「国民との約束を違えるもの」。

さらに、「最高裁判決が警鐘を鳴らしてから約1年9カ月が経過していた昨年選挙まで見直しが困難だったとは認められず、是正するための合理的期間を過ぎていた」として「違憲」とした司法の判断を無視するものでもある。

そもそも、国会議員の定数削減に関しては、第三極の政党の方がより積極的な数字を掲げている。比例代表部分の削減幅は第三極の主張に比較して小規模にとどめ、その代わりに「買収枠」を設けて中小政党を籠絡しようとする自民党案は、信じられないもの。公明党は自民党案でも当選議席数が変らないということから「評価」しているようだが、仮に、このような改革案を通過させるような国会なら、即刻昨年の総選挙を「無効」にすべきである。

今回自民党が公明、民主両党に提示した衆院選挙制度改革案は、国会には選挙制度に関する自浄作用を持たないことを示すことになった。選挙制度に関しては、司法が介入するような「次元の違う改革」を検討すべき段階に入ったようである。
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