金融円滑化法終了 ~ 再生ファンドを育てるは易し、企業再生は難し

「中小企業の事業再生を支援する『地域経済活性化支援機構』が18日、発足した。地域金融機関など民間との共同出資を通じて全国に約70基金、総額2000億円規模の再生ファンドを育てる」

今月末の金融円滑化法終了を控え、政府の中小支援策がほぼ出揃ったようだ。「前身の企業再生支援機構から機能を拡充し、疲弊する中小企業を地域単位で再生させる取り組みも始める」ようであるが、日本経済新聞の記事は、「全国に約70基金、総額2000億円規模の再生ファンドを育てる」と、「再生ファンドを育てる」ことが目的のような印象を与えるものになっている。

政府が出資者になりさえすれば、「全国に約70基金、総額2000億円規模の再生ファンドを育てる」ことなどは容易なこと。金融円滑化法で中小企業に融資を行って来た金融機関にとっても、自行の融資を再生ファンドからのものに切り替え、自らは再生ファンドへのローンレンダー(融資者)に立場を変えることによって、個々の企業の経営リスクからファンドが融資する企業全体のリスクへと、「リスク分散」が図れるうえ、再生ファンドが受け取る全体の元利金を優先的に受け取れる立場になるので、リスクの高い融資先中心に再生ファンドからの融資に切り替えることに異存はないはずである。

問題は、「再生ファンドを育てる」のではなく、企業再生が出来るかという問題。しかし、これは現状では極めて難しい。何故ならば、企業再生というのは、本来、環境変化に適応出来なくなった個別企業を対象にしたものだからである。

「円滑化法の終了で支援が必要となる企業」が、日本の法人数258万6,882社(国税庁「会社標本調査」平成22年度)の2%強に相当する「5万~6万社」に及ぶ上、「欠損法人は187万7,801社で、欠損法人の割合は72.8%となっている」(同)経済状況下で、個別企業の再生を果たすのは難しい。政府が打ち出した「全国に約70基金、総額2000億円規模の再生ファンドを育てる」というのは、個別対応の域を超えたマクロ対応であり、全体としては、個別企業ベースで効果を出す対応とはなっていない。

例えば、昨年9月に再上場を果たしたJAL。更生法の申請をする前に2008年度には631億円の当期純損失を計上していたJALは、2011年度には1,866億円という当期純利益を計上し、見事に再生を果たした(と言われている)。

しかし、JALの売上は不採算路線からの撤廃等々の対応により、2008年度の1兆9511億円から、2011年度には1兆2048億円へと、7,000億円以上も減少している。しかし、営業費用を2008年度の2兆20億円から9,998億円へと、1兆円削減したことで、当期純利益を確保している。

JALに代表されるように、企業再生の手始めは、不採算部門からの撤退、コストカット等々である。JALが削減した1兆円の営業費用は、従業員の給与や、他社の売上を消滅させた結果でもある。

このような、社員の給与や外部企業の売上を犠牲にする企業再生が全国で行われるということは、マクロ経済に打撃を与えるものでもある。「再生ファンドを育てる」過程で、再生する企業も出てくることは確かだが、その裏側でそれ以上の消滅して行く企業が出てくることも確かである。

こうした「合成の誤謬」を避けるために必要なのは、19日付「経済教室」で指摘されているような「中小企業の『目利き』を育てる」ことではない。「目利き」が発揮されるためには、そこに需要が無ければならない。需要がない中で幾ら「目利き」を磨いても、宝の持ち腐れである。クラウドコンピューティングがいくら将来性の高いビジネスであっても、ネット環境がないところでは何の価値もないのと同様である。

限られた企業の再生は可能だが、大量の企業の再生を実現するためには、マクロ環境が整っている(需要が維持・拡大)ことが不可欠なのである。

金融円滑化法の終了に伴って、企業再生に力を入れるというのは当然のことだが、企業の売上を伸ばせるようなマクロ環境の整備が進まなければ、今回の計画も、企業再生ファンドの仮面を被った企業延命策、銀行支援策で終わってしまうことになる。
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近藤駿介

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