「資産購入枠の統合」で本当に「緩和規模」が分かりやすくなるんですか?~ いいかげんに「白川否定」から「大胆な転換」を

「日銀はデフレ脱却へ国債買い入れを拡大するため新たな購入目標を設ける。白川方明前総裁の下で導入した『資産買い入れ基金』と、通常の資金供給のための国債買い入れ枠を統合し、緩和規模をわかりやすく示す。4月3、4日に開く金融政策決定会合で検討する。黒田東彦総裁への交代を機に、金融政策の大胆な転換を強調する」

黒田日銀は、「資産購入枠の統合」を次回の決定会合で打ち出すようである。以前から囁かれていたことであり、それ自体に驚きはないが、「国債購入目標拡大」と「資産購入枠の統合」が、どのように結びつくのかは今一つはっきりしない。

「新たな購入目標を導入するのは、従来の基金と通常枠による『二本立て』の資産購入では、日銀の緩和姿勢が市場に伝わりにくく、緩和効果をそいでいるとの批判が背景にある」そうであるが、本当だろうか。

日銀が「通常の資金供給」のために行っている国債買い入れ「輪番オペ」と、「資産買入れ基金」を統合してしまった方が、よっぽど「緩和規模」が分かりにくくなってしまうはずである。

それにも関わらず「資産購入枠の統合」に拘る理由は、「資産買入れ基金」の規模自体が、「緩和規模」の当面の上限だという印象を与えたくないということに加え、「金融緩和を目的とした国債購入」を、日銀の「通常の」業務に格上すること、海外からの通貨安政策という批判の材料に使われかねない「資産買入れ基金」の存在自体を消し去る、といった「金融政策の大胆な転換」とは全く「次元の違う」ものがあるからかもしれない。

本音のところは、白川日銀の政策を否定することで誕生した黒田日銀は、白川日銀時代につくられた枠組みを否定し、消去することで、「金融政策の大胆な転換を強調する」必要があったということなのだろう。「緩和規模が分かりにくい」などという、取ってつけたような理由を持ち出したのは、黒田日銀が実際にとれる政策が、白川日銀時代の政策の延長線にあるものばかりということの裏返しでもあり、白川日銀時代に作られた「仕組み」を消去することでしか、「金融政策の大胆な転換を強調する」術がないということ。

「資産買入れ基金」の中身に関しては、現在でも日銀のHP上で「分かりやすく」公開されており、実務上「緩和規模が分かりにくい」ことはない。「資産買入れ基金」の上限が「緩和規模」を分かりにくくしているのであれば、黒田日銀が「2年間」で使い切れないような規模に設定し、信託銀行との契約をコミットメントライン契約(予め決められた枠内であれば、信託銀行の要請に基づき買付資金を拠出することを確約する契約)にすればいいだけである。

「指数連動型上場投資信託受益権等の買入れは、市場の状況に応じ、本行が定める基準に従って受託者に進捗させるものとする」

「資産買入等の基金の運営として行う指数連動型上場投資信託受益権等買入等基本要領」の中では、このように規定されている。この規定からは、信託銀行には、「日銀から指示された買付量範囲内で、買入れ対象として認められたETFの中から買入れる銘柄を選別し、何時購入するか」という裁量権が与えられていることが見て取れる。

こうした信託銀行が介在する「資産買入れ基金」を利用することで、日銀は購入するETFの具体的銘柄を選別したり、購入日を指示したりする必要がなくなっている。もし、このような裁量権を全て日銀が持つとなると、日銀には「なぜそのETFを購入したのか」「なぜTOPIX連動ではなく日経平均連動を選んだのか」「なぜそのタイミングで買付けたのか」等々の理由を明確に示す義務が生じてくる。そして、こうした質問に対して回答を示さないということは、日銀自らが金融政策を「分かりにくい」ものにしてしまう行為である。

なかでも、日銀が直接ETF等の買入れを行うということは、事実上、市場価格に介入することであり、「金融政策が市場価格に基づいて行われる」という誤った印象を市場に植え付けることになる。このような印象を市場に抱かせるということは、中央銀行が市場価格からの中立性を失うことであり、「財政ファイナンス懸念」以上に危険なことである。

黒田日銀総裁の発言も、それを報じるマスコミの論調も、「白川日銀時代の政策否定」によって、「黒田日銀が目指す金融政策が正しい」という印象を与えようとする偏ったものになっていることは、非常に残念である。

「白川日銀の政策否定」と、「黒田日銀の政策の正しさの証明」は、全く独立した別次元の問題である。「白川日銀の政策否定」が、「黒田日銀の政策の正しさの証明」には繋がらないことを、黒田総裁もマスコミももっと認識するべきである。

「黒田日銀の政策の正しさの証明」は、一般国民に「分かりやすい」「白川日銀の政策否定」という「前任者否定」という安易なやり方ではなく、「黒田日銀の政策の是非」という「政策論」を通して行うべきものである。
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