法と内閣に縛られた審議会による「元凶を残した無駄な勧告」 ~衆院選挙の「抜本改革」は、「衆院選挙区画定審議会設置法」の改正から始めよ

「衆院選挙区画定審議会(会長・村松岐夫京大名誉教授)は28日、『1票の格差』を是正するための区割り改定案を安倍晋三首相に勧告した。全国17都県42選挙区の区割りを見直し、2010年の国勢調査で最大2.524倍だった格差は、変更後は1.998倍になる。政府は新たな区割りを反映した公職選挙法改正案を4月中旬にも提出し、今国会の成立を目指す」

各地の高等裁判所で「違憲」、さらには「無効」という司法判断が出される中、衆院選挙区画定審議会は、「一人別枠方式」を前提にした「0増5減」に基づいて、最大2.524倍であった「一票の格差」を最大1.998倍にする「ありがたい」区割り改正案を安倍総理に勧告した。

今回の衆院選挙区画定審議会の勧告は、2011年3月に最高裁から「1票の格差」を生む主な要因と指摘された「一人別枠方式」(衆院の小選挙区300議席のうち、まず47都道府県に1議席ずつを「別枠」として割り当て、残り253議席を人口に比例して配分する方式)を維持し、司法から「格差が2倍未満になるよう最小限の改定にとどめるもので、最高裁判決が求めた改正とは質的に異なる」と批判を受けた「0増5減」を前提に提出されたもので、司法の指摘を全く無視したもの。

今回の勧告を受けて与党は、衆院選挙制度の抜本改革とは切り離して小選挙区の「0増5減」を実現する法案を先行処理し、早期成立をめざす方針を示している。しかし、司法から「1票の格差」を生む主な要因と指摘されている「一人別枠方式」を残したまま、高裁から「最高裁判決が求めた改正とは質的に異なる」という指摘を受けた「0増5減」に基づいて区割り変更を行ったとしても、司法から再び「違憲状態」であると指摘されるのは時間の問題である。

今回、衆院選挙区画定審議会が国民感覚にそぐわない勧告を出したのは、審議会の法的根拠となっている「衆議院議員選挙区画定審議会設置法」そのものが国民感覚からかけ離れたものだからである。

設置法の「第三条(改定案の作成の基準)」では、「最近の国勢調査又はこれに準ずる全国的な人口調査の結果に基づいて『1票の格差』が2以上とならないようにすることを基本とすること」、「衆議院小選挙区選出議員の定数に相当する数から都道府県の数を控除した数を人口に比例して各都道府県に配当した数を加えた数とする『一人別枠方式』を採用すること」が明記されている。

法律で「『一人別枠方式』を採用し、『1票の格差』を2倍以内にすること」を求められている衆院選挙区画定審議会が、最高裁の意向に反して「一人別枠方式」を前提に、「最高裁判決が求めた改正とは質的に異なる」という指摘を受けた「0増5減」に基づいて「1票の格差」が最大1.998倍となる区割り変更案を勧告したのは、致し方のないこと。審議会にとって、最高裁から「1票の格差」を生む主な要因だと指摘を受けている「一人別枠方式」を前提にしないことが、「違法行為」になってしまっているのだから。

設置法の「第三条(改定案の作成の基準)」で作成基準が決められている上、「第六条(組織)」で「両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する」ことで選ばれる7名の審議委員で構成されることが定められている審議会の勧告が、「司法軽視、立法・行政府重視」となるのは当然である。

野党は、今回の審議会の勧告に従い、与党が「0増5減」の先行処理しようとしていることに対して、「選挙制度を含めて議論し結論を出さないと司法の判断に応えたことにならない」と反対の意思を表明している。

野党の主張する通り、「1票の格差」の問題と、「身を切る改革」、「得票率と獲得議席数の乖離」といった問題を国会が一体で改正出来るのであれば理想的だが、現実問題としてそれが難しいことは、「違憲」「無効」判決が出るまで国会がこの問題を放置して来たことからも明らかである。一方では、与党の主張通りに、司法から「違憲状態」との判断を下される可能性が高いことが分かり切っている「0増5減」案の成立、実施に全力を注ぐというのは、「政治的労力の無駄遣い」でもある。

この際、与野党は、「与野党は衆院選挙区画定審議会設置法」を、「一人別枠方式」を前提とする規定を外すとともに、「二以上とならないようにする」としている「1票の格差」の許容範囲を、「限りなく一に近付ける」という内容に改正案の成立を目指すのが現実的選択肢なのだろう。「1票の格差」は2倍以内を目指すのではなく、統計上の誤差の範囲内に収める、つまり 「限りなく0」を目指すべきものである。設置法で「1票の格差」を「二以上とならないようにする」と規定していること自体が異様な状態と言える。

同時に、設置法の「委員は、国会議員以外の者であって、識見が高く、かつ、衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定に関し公正な判断をすることができるもののうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する」(第六条「組織」)という規定も、司法或いは司法専門家が、立法・行政府から独立して審議加われるように改正すべきである。

国会の自浄能力の限界を前提とした衆院選挙区画定審議会の設置法が、「司法軽視、立法・行政府重視」の主な要因になっている現状は、一日も早く取り除くべきである。
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