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結果が全て ~「異次元金融緩和」に対する、それぞれの「本音」

「デフレから脱却し、経済を再活性化することが最優先で、野心的な金融緩和の枠組みは前向きな一歩だ」

IMFのラガルド専務理事は10日、ニューヨーク市内で講演し、「現状では、緩和的な金融政策によって経済の回復を支える必要がある」と述べ、日本をはじめ先進各国の大幅な金融緩和策を支持し、このように発言した。

少し前まで「財政再建」を唱え続けて来たIMFが、ようやく現実を直視し、「財政再建」よりも「景気回復」を優先する姿勢を示し始めた。安倍総理の言葉を借りれば、「結果がすべてなんです」といったところ。しかし、日本に対して「成長促進に向けて一段と金融政策に頼る必要があると」いう発言を重ね合わせると、ラガルド専務理事の本音は、景気回復は財政政策ではなく金融政策で計るべきだということのようである。

ラガルド専務理事は、日本の財政については「地方などを含めた公的な債務残高はGDP比で245%にのぼっている。私には、日本の財政はますます持続が不可能になっているようにみえる」と指摘した。わざわざ「245%」という数字部分をゆっくりと2回繰り返して深刻さを強調したり、「世界経済には『好調』、『回復途中』、『回復にはまだ距離がある』という『3つの速度』が見られる」という分析を披露し、「欧州と日本が回復せず他の先進国に後れを取ると」という判断を示し、日本と欧州を同列だと評価したりするところに、「財政再建至上主義者」の素顔が見え隠れしていた。

「財政再建」を最優先した、ラガルド専務理事おひざ元の欧州各国は、依然として景気回復からは程遠い状況にあるうえ、「政治的な混乱」を招き始めている。将来示される「結果」がどうなるかは「神のみぞ知る」の世界だが、少なくとも「政治的混乱」を生む「財政再建至上主義」よりも、「政治的混乱」を生じにくい「景気回復優先主義」の方が、社会的コストは低いという明らかな「結果」は出ている。是非はともかく、安倍総理の支持率は70%前後と高水準を維持している。

「財政再建至上主義者」からの支持を取り付けた「金融緩和万能主義者」の黒田日銀総裁。「異次元の金融緩和」を打ち出したあとも、金融市場で懸念された「材料出尽くし感」が表れなかった安心感からか、「狙い通りの効果をもった」とご満悦のご様子。

「狙い通りの効果」とは、円は1ドル100円に迫るところまで円安が進み、日経平均株価も4年8か月ぶりの高値を記録したことを念頭に置いての発言だろうが、これは、「異次元の金融緩和」が、市場を「円安・株高」に誘導しようとする意図を持っていたという「本音」を示唆するもの。一方では「為替レートを目標にすることはない」と強調しており、「結果」はともかく、黒田総裁の発言は相変わらず一抹の危うさを感じさせるもの。

そもそも、黒田日銀が「異次元の金融緩和」を打ち出したのは、「金利低下を促す効果があり、企業や家計が資金を借りやすくすることで設備投資や住宅購入の活発化」を目指してのもの。しかし、「異次元の金融緩和」実施後の債券市場では乱高下が続き、新発10年国債利回りは0.6%台まで上昇(価格は下落)して来ている。黒田総裁は「今回の金融緩和がこれまでと相当違ったものだったため、ありうる動きだと思っていた」という認識を示しているが、債券市場では「狙い通りの効果」が出なかったことは確か。為替市場と株式市場という一般受けする市場で「狙い通りの効果」が得られたのだから、ほぼプロだけが参加する地味な債券市場で「狙い通りの効果」が得られないなどという「小さなことは気にしない」ということのようだ。プロセスは違えど、「結果が全て」ということ。

黒田総裁は、金融市場で「円安・株高」が進んだことについて、国際的に最も通用している「マネタリーベース」という量的指標を金融政策の操作目標とし、2本立てになっていた国債買い入れオペを統一し、ストックがどれだけ増えたかを示すという「分かりやすく政策を伝える」ことにした効果だという認識を示している。しかし、「ミセスワタナベ」と称される個人FX投資家や、証券会社の投資セミナーに押し寄せている個人投資家が、どれだけ「マネタリーベース」を正しく理解しているかは定かではない。筆者の周囲の証券マンでも「マネタリーベース」という言葉は覚えていても、意味や意義などを正確に理解して人間は少ないのが実態である。

政策目標となった「マネタリーベース」は、一般投資家にとってひとつも分かりやすいものではない。金融政策の操作目標を、誰にでも分かる「金利」から、馴染みのない「マネタリーベース」に変更したことで、黒田日銀は、多くの投資家に「何か自分の知らないような凄い政策が発動された」という「期待」を植え付けることに成功した。それは、馴染みのない「マネタリーベース」の後に、誰でも分かる「2倍、2倍」というフレーズを付けたからである。馴染のない横文字の専門用語を乱発されることによって、多くの投資家に、まるでそれがオールマイティーであるかのような妄想を抱かしてしまのは、デリバティブ取引と同様である。「分かりにくい政策」に、「2倍、2倍」という分かりやすいフレーズを付けたことが、黒田日銀が市場に「期待」を植え付けることに成功した要因である。

やり方はともかくも、市場に「期待」を植え付けたという点では、「結果が全て」。しかし、緩和策の効果に関して、日銀総裁が「十分持続力はある」というのはまだしも、市場関係者の抱く「黒田相場 年内続く」という「期待」は、余りにも楽観的過ぎるのではないか。そこからは、米国に3か月遅れて新年度入りした日本の市場関係者にとって、「黒田相場」が年内続いて貰わないと困るという本音が見えて来ているようだ。
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近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

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著書

1989年12月29日、日経平均3万8915円~元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実

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