「異次元の金融緩和」の中で進行する「インフレと資産インフレの異次元の関係」

NYダウが終値で初めて15,000ドルを突破し、ドイツDAXが史上最高値を更新。それを受けた8日の日経平均株価は14,285円と連日で年初来高値を更新、2008年6月18日の14,452円以来、約4年11カ月ぶりの高値水準となった。為替が100円に届きそうで届かない状況の中で、日経平均株価はNYの史上最高値更新を受け、GW開けから2段ロケットのような上昇を見せた。

世界的な株価上昇を後押ししたのは、世界的な金融緩和の流れと先週金曜日に発表された米国4月の雇用統計。

この1か月間だけで、トルコ(4/17)、インド(5/3)、ECB(5/3)、豪州(5/7)と、主要国が軒並み利下げに踏み切った。利下げ可能な国が利下げに踏み切り、既に0金利状態となっている日米両国が大規模な量的緩和を続ける。2013年の世界は、まれにみる超金融緩和状態、「異次元の金融緩和状況」となっている。

そうした「異次元の金融緩和状況」の中、市場を驚かせたのは先週末3日に発表された米国4月の雇用統計。非農業部門就業者数が事前予想の14万人増を上回る16万5000人増となり、失業率も前月比0.1%低下し、2008年5月以来の低水準となる7.5%へと低下した。GDPをはじめ、米国景気の減速を懸念させる統計が続いていただけに、好調な雇用統計は市場を驚かせるに十分なものとなった。

しかし、本当に市場を驚かせたのは、4月の統計内容よりも、2月、3月分の統計の上方修正。2月の非農業部門就業者数は26万8000万人増から33万2000人増へ6万4000人上方修正され2010年5月以来の大幅増加となり、3月は8万8000人増から13万8000人増へと5万人上方修正された。2ヶ月合計で11万4000人の上方修正は、「異次元の上方修正」。最も懸念された米国の雇用情勢は、想定以上の堅調さを見せている。

「異次元の金融緩和状況」の中で、世界的な株価上昇が続き、米国の雇用情勢も回復傾向を見せている一方、インフレの兆候は見られていない。むしろ、日米欧ともに超金融緩和によるインフレよりも、デフレへの警戒を強めなくてはならない状況になっている。

FRBがインフレ指標としていることで注目される米国のPCE価格指数。先月29日に発表された3月のPCEは前年比1.0%上昇と2月の1.3%から鈍化し、3年半ぶりの低水準となった。FRBのインフレ目標2.0%を大きく下回る水準。

また、その翌日30日に発表されたユーロ圏のCPIは前年同月比1.2%上昇と、2010年2月以来の低水準となり、こちらもECBのインフレ目標2%をかなり下回った。

日本でも総務省が先月26日に発表した3月の全国の消費者物価指数は、生鮮食品を除く総合が前年同月比0.5%の下落となった。下落は5カ月連続。また、全国CPIの先行指標となる4月の東京都区部の消費者物価指数は0.3%の下落。黒田日銀が掲げる「2%の物価安定目標」は遥か彼方と言える状況。

今のところ、世界的に株価上昇に伴う資産効果は、経済全体には及んでいない。特に日本に比較して株式の保有比率の高い米国で株価上昇に伴う資産効果が余り表れていない事実は、株価上昇に伴う資産効果による消費回復を目指すアベノミクスにとっては懸念材料。世界的に「格差社会」が広がり、「持つ者」と「持たざる者」との間の壁が高くなり過ぎてしまったことが、資産効果の表れにくい社会を作ってしまっているのかもしれない。

主要国が一斉に金融緩和に動く中、唯一インフレ抑制を優先して1年9カ月ぶりに利上げに踏み切ったのがブラジル(4/17)。2012年の成長率が0.9%にとどまる中、3月のインフレ率は6.59%と政府目標の4.5%を上回り、先月の利上げで政策金利は7.5%となった。こうした世界でも異質の経済状況になっているブラジルが、今年になって世界の主要市場で数少ない下落を記録しているのも仕方のないこと。

しかし、実体経済のインフレに苦しんでいる国の資産価格が低迷し、資産インフレが見られている国では実体経済のデフレ懸念が高まって来ているという、政策当局の目標とかけ離れた世界の経済・金融市場の構図は何とも皮肉なものである。人間はインフレをコントロールする術を失って来ているのだろうか。

インフレと資産価格の関係は、これまでの常識が通用しない「異次元の関係」になり始めて来ている。その中で日米独という先進国の株式市場が高値更新、新高値を記録するということは、カントリーアロケーション面でリスクをとらなくても、投資家が目標収益を確保できる可能性があるということ。現在の状況を鑑みると、経済がこれまでの経験、常識が通用しなくなる経済下での「リスクオン」は、カントリーアロケーション面での先進国中心という「リスクオフ」状況を招く可能性が高い。2013年度は「デカップリング」という言葉を死語にする年になるのかもしれない。
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