1ドル100円突破~「サプライズがない」というサプライズ

1ドル100円突破。

多くの人達がその可能性を高く感じていた「1ドル100円突破」は、意外なタイミングで訪れた。先週末に発表された4月の米国雇用統計の「異次元の上方修正」を受けても突破できなかった1ドル100円の壁。この壁を超すために、どのようなサプライズが必要なのかを市場が思案しているなかで、ほとんどサプライズがなかったにもかかわらず、ドル円はスルスルと100円を突破した。10日のNY市場では101円90銭台まで円安ドル高が進行。週明けには一時102円台まで円安ドル高が進んだところに、「サプライズがない中でドル円が100円を突破した」というサプライズの大きさが表れている。

1ドル100円突破を受けた株式市場は大幅高。10日に日経平均株価は14,607円と、5年4か月ぶりの高値を記録し、13日には一時14,849円と15,000円に手が届く水準まで上昇した。その一方で、新発10年国債利回りは13日に一時0.800%まで金利が上昇。東証債券先物取引では、10日に黒田日銀が「異次元の金融緩和」を打ち上げた直後以来、1か月ぶりにサーキットブレーカー(一時売買停止措置)が発動され、13日も2営業日連続でサーキットブレーカーが発動される波乱の展開となった。

こうした、金利上昇の影響もあり、REIT市場も売り優勢の展開となった。こちらも10日には日銀が「異次元の金融緩和」の導入を決定した4月4日以来、約1カ月ぶりに1,500の節目を下回り、13日には4%以上急落し、1,426.63となった。

4月4日以降、日銀が買入れたETFは979億円、J-REITは125億円となっている。その買入れペースは、ETFは年間約1兆円、J-REITは年間約300億円に相当するペースで増加するよう買入れを行うとした「異次元金融緩和」で掲げた買入れペースと比較すると、J-REITはかなりハイピッチで買入れが実施されているといえる。それにもかかわらずREIT市場は下落し始めた。

G7で黒田日銀総裁は、「日銀の政策は為替をターゲットにしているわけではない」と満面の笑みで繰り返していたが、ターゲットとしていないと断言する為替市場で予想以上のペースで円安が進み、景気を下支えするためにとして掲げた「長期金利の低下」というターゲットは今のところ大きく外してしまっている。一般大衆受けする「円安・株高」は予想以上に進んで来ているが、ターゲットとした長期金利は、低下するどころか上昇し、住宅ローン金利や長期プライムレートも上昇して来てしまっている。「黒田バズーカ」は、誤爆によって高い評価を得ているという皮肉な現象になっている。

円安に対する不満が出るとの懸念も囁かれていたG7。直前にバーナンキ米FRB議長の欠席が発表された時点で、軽い会議になることが確実視されていた今回のG7では、予想通り円安に関しては特に批判的意見も出ず、日本の財政・金融政策は国内問題を目的とすることを確認し、公式な共同声明もなく閉幕となった。

G7では、「円安加速で日本に関心が高まり、日本の政策を巡る議論を活発に交わした」(12日付日本経済新聞)と報じられている。

日本の政策に関心が高まっているのは、「今回のG7会合では、緊縮策を緩和する必要性についても議論が集中した」こととも関連がある。日米欧各国は、リーマンショック直後に大規模な財政出動を実施したにも関わらず、景気低迷から脱し切れていないこともあり、景気対策は金融政策に頼る「片肺飛行」を余儀なくされてきた。Bloombergの報道によると、「バンク・オブ・アメリカ(BOA)の集計によると、世界の中央銀行は2007年6月以降に511回の利下げを発表している」そうだ。

こうした環境下、GDPの200%を上回る公的債務残高を抱える日本が、金融緩和で「通貨安・株高」を演出し、「機動的な財政出動」によって「失われた20年」からの脱出を試み始めた。日本の「金融緩和と積極財政」という実験が成功すれば、これまで主役だった「金融緩和と緊縮財政」という政策ミックスに一石を投じることになり、ドイツなどが南欧諸国に求めている「緊縮財政」に対する世論にも大きな影響を及ぼすことになることは想像に難くない。

実際には、日本で「金融緩和と積極財政」が効果を発揮したとしても、それはユーロ圏でも同様の効果を発揮するとは限らない。日本はGDPの200%を上回る公的債務残高を抱えているが、その9割以上を日本国内で調達出来ている。しかし、南欧諸国は自国内で「積極財政」に必要な資金を調達出来る状況にはない。ソブリン危機によって低下して来ているものの、南欧諸国の「国債海外保有比率」(内閣府「平成24年度 年次経済財政報告」内資料2011年時点)は軒並み40%以上となっている。自国内で「積極財政」に必要な資金を調達できる日本と、出来ない南欧諸国。この差は少なくとも調達金利に大きな格差を生じさせるものである。

しかし、「金融緩和と緊縮財政」という政策ミックスの効果が一向に現れない中で、「緊縮財政か積極財政下」という面でアベノミクスが世界の注目を集める実験になることは間違いない。しかし、「円安・株高」が維持されるために必要なのは、「誤爆する黒田バズーカ」ではなく、市場で「強い米国」という認識が持続することである。
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

入会キャンペーン 実施中!

メルマガのお知らせ

著書

アラフォー独身崖っぷちOL投資について勉強する

Anotherstage LLC

金融に関する知見を通して皆様の新しいステージ作りを応援

FC2ブログランキング

クリックをお願いします。

FC2カウンター

近藤駿介 facebook

Recommend

お子様から大人まで
町田市成瀬駅徒歩6分のピアノ教室

全記事表示リンク

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

QRコード

QR