国債消化の「国内頼み」~国家破綻を引起す「調達先の多様化」

昨日1日付日本経済新聞の1面を飾った「日本国債 国内保有95%超に」という記事には久しぶりに驚ろかされた。

記事は「国債消化の『国内頼み』が一段と進んでいる」という書き出しで始まり、「国内投資家による日本国債の保有比率は今年3月末で95.4%。1年間で1.8%上昇し、2006年3月末以来の高水準になった」という事実を紹介。そして、「その背景には、国内のカネ余りがある。(中略)銀行の貸出は低調だ」という国内要因と、「欧米では国内投資家の国債保有率は50~70%程度で、残りは海外投資家が持つ」という海外との国債保有状況の違いを指摘、最終的に「短期的な売買を繰り返す海外投資家に長期金利が左右される恐れは少なくなる」という利点に触れつつも、「95%を国内消化に頼る状況はバランスが悪く、将来的に銀行や保険会社が国債購入を手控えれば、安定消化に影響が出かねない」と国債消化の「国内頼み」にさも問題があり、海外からも調達して調達先の分散を進めるべきかのような結びとなっている。

国債消化の「国内頼み」の何処に問題があるのだと言うのだろうか。現状のGDPの約1.8倍の財政赤字を抱える世界最大の財政赤字国である日本が、財政危機が国際問題になっているこの時期に国際的に自立出来ているのは、「国内頼み」で国債消化が出来ているからだ。「海外頼み」で国債を消化して来た欧州の複数国では、財政再建の為に緊縮財政を強いられ年金は削減(勿論過剰なものであったが)、付加価値税(日本の消費税)の引き上げを迫られ、国民生活は大打撃を受けている。さらには各国が国家予算を監視し合うなど、国家の独立性まで損なわれ、まさに菅首相のいう「例えば国際通貨基金(IMF)のような機関に、はしの上げ下ろしまでコントロールされる」状態になっている。日本経済新聞はこうした欧州各国の状況と今の日本の状況を比較した上で「国債消化の分散化」を計るべきだと主張しているのだろうか。もしそうだとしたら恐ろしいことだ。日本は財政赤字の95%を国内で調達して来たからこそ、世界からの干渉を受けずにやって来られていることを忘れてはならない。

今の日本財政赤字を家庭に例えると、お父ちゃん(国)が無駄遣いをして、お母ちゃん(国民)からお金を借りているという構図だ。お父ちゃんだけを見ると借金があり問題かもしれないが、家庭全体でみると借金はなく、健全な状態を保てている。
しかし、お母ちゃんが自力でお父ちゃんに貸せるのは、家庭が蓄えて来た資産(個人金融資産)が限界なので、お父ちゃんは飲みに行く回数を減らすとか、パチンコ等の遊興費を控えるなど、無駄遣いをしないように努力する(無駄な財政支出のカット等)ことが必要になって来るわけだ。
要は、お父ちゃんが借金をしていること自体に問題があるのではなく、何処からお金を借りているかがより重要なのだ。もしお父ちゃんが無駄遣いを止めず、家計の貯蓄で足りなくなってしまったら、サラ金からお金を借りなければいけなくなってしまう。こうなったら状況は一変する。お父ちゃんのみならず家族全体がサラ金の取り立てに苦しめられることになり、場合によっては身包み剥がされる可能性もあることは周知の通りだ。この場合、サラ金に借りたお金が10万円であるか、1000万円であるかは大して大きな問題ではない。サラ金からお金を借りているという事実が問題を引き起こすからだ。

日本経済新聞の今回の指摘は、お父ちゃんがお母ちゃんだけから借りているのは問題だ。お母ちゃんのご機嫌を損ねてお金を貸してくれなくなったらお父ちゃんは自由に使えるお金が足りなくなってしまう。だから、今のうちからサラ金からもお金を借りられる様にしておけ、と勧めているのと同じである。日本を代表する新聞が、この様な家庭崩壊(国家崩壊)を招く危険性を高める行為を勧めるというのは俄かには信じ難い。

国内で調達出来る資金には限界がある。それ故に、政府は将来的にも財政赤字を国内だけで調達出来る範囲にコントロールする努力をしなくてはならないのだ。企業経営というミクロの分野では「調達先の多様化」はリスクマネジメントとして必要不可欠のものだ。しかし、国家というマクロ分野では、海外投資家からの資金調達を図る「調達先の多様化」を目指してはならないのだ。それは国家として自殺行為に他ならないのだから。日本は今年になって欧州で顕在化した財政危機を、他山の石としなくてはならない。


↓の評価ボタンを押してランキングをチェック!
素晴らしい すごい とても良い 良い
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

入会キャンペーン 実施中!

メルマガのお知らせ

著書

アラフォー独身崖っぷちOL投資について勉強する

Anotherstage LLC

金融に関する知見を通して皆様の新しいステージ作りを応援

FC2ブログランキング

クリックをお願いします。

FC2カウンター

近藤駿介 facebook

Recommend

お子様から大人まで
町田市成瀬駅徒歩6分のピアノ教室

全記事表示リンク

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

QRコード

QR