「円安・株高・債券安」~能力が問われ始めた黒田日銀

円102円突破、NY株式市場史上最高値更新を追い風に、日経平均株価は15,000円の大台を軽く突破して来た。野田前総理大臣が昨年11月14日の党首会談で「自爆解散表明」をしてからほぼ半年。日経平均株価は8,664円(2012/11/13終値)から15,096円まで、価格にして6,431円、率にして74.2%の上昇となった。約半年での上昇率74.2%は、1980年代後半のバブルの時代でも見られなかった、「異次元の速度での上昇」(添付したチャートは、約半年に相当する125営業日の騰落率であるため、数字は一致しない)。

日経平均上昇率

一方、新発10年物国債の利回りは15日、一時前日比0.075%高い0.920%まで上昇(価格は下落)。2012年4月以来、1年1カ月ぶりの高水準となった。利回り上昇が目立つのが5年物国債で、同0.06%高い0.455%まで一時上昇。約2年ぶりの高水準を付けた。

「債券を売って株に買い替える人が増える流れが一番大きい」

麻生財務大臣は、「株高・金利上昇」について、このように述べた。この発言を裏付けるように、投資信託協会が15日に発表した投信概況では、4月の投資信託への純資金流入額が、内外株を投資対象とするファンドを中心に1兆3569億円となり、5年10カ月ぶりの多さとなったことが示された。投資信託の純資金流入額が1兆円を超えるのは3か月連続。

一方、国債売りを主導したのは国内銀行と言われている。銀行にとっては、BIS基準におけるリスクウエィトが株式と国債とでは全く異なるため、株式は国債の代替資産とはなり難い。従って、国全体として「債券から株式へ」という流れがあるものの、その流れを銀行が主体的に作っている可能性は高くない。銀行が国債を売ったのだとしたら、顧客が定期預金などから株式投信への乗り換えが進んでいるか、銀行がリスク管理上(VaR)やむなく国債を売却しているかのどちらかである。

15日の金融市場では、新発10年国債利回りが一時0.92%まで上昇。その後日銀が0.1%で期間1年の固定金利オペ(公開市場操作)で2兆円の資金供給を通知したことで市場は沈静化、金利もほぼ前日と変わらない水準まで低下した。

「イールドカーブ全体の金利低下を促す観点から、長期国債の保有残高が年間約50兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う」

長期金利を中心に金利低下を促すことを目的とした、黒田日銀による「異次元の金融緩和」による大規模な資金供給が中長期金利の上昇を誘発し、日銀が中長期金利上昇を鎮静化のために短期市場への大規模な資金供給に追い込まれたというのは、皮肉な構図である。

5年債を中心に銀行からの売りが出たという報道と、「債券の平均残存期間をみると、大手行では2年半程度となっているが、地域銀行で4年程度、信用金庫では5年近くまで上昇している」(日本銀行 2013年4月「金融システムレポート」)という事実からすると、国債売却の主体は都銀ではなく地銀、信用金庫である可能性が高い。地銀、信用金庫の顧客の間で、「貯蓄から投資へ」という動きが出ているのだろうか。

国債金利の上昇によって、「国の利払い費が増え、財政再建に影響が出る」という指摘も出て来ている。しかし、これは財政再建派のプロパガンダである可能性が高い。

13年度の予算では、利払い費の計算に使う「想定金利」を1.8%に設定しており、10年国債の利回りが0.9%近辺まで上昇して来たと言っても、まだまだ「想定金利」を大きく下回る水準にある。金利が低位である方が、利払い費用が少なくて済むことは間違いないが、足元の新発10年国債の利回りの上昇が、直ぐに「予算案で想定された利払い費用」を上回ることにはならない。政府にとっては「想定内の出来事」なのだから「財政再建に悪影響」と騒ぎ立てるのはやり過ぎである。

問題は、金利上昇を伴わない「円安・株高」を目指した黒田日銀にとって、足下の「円安、株高、債券安」という状況が、コントローラブルなものなのかということである。低下を促すはずの長期金利が上昇している状況を、どのようにしてコントロールして行くつもりなのか、その方策を持っているのか。黒田日銀の実務能力が問われる次回の金融政策決定会合は、5月21日(火)・22日(水)の予定である。黒田日銀総裁が「円安・株高」を演出したことで得意満面でいられる時間は余り長くない。
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