笑ってごまかせない日銀 ~ やはり金融市場は米国を中心に回っていく

「各国は財政・金融政策を国内の目的を達成するためにだけ用いると再確認した」

日銀の「異次元の金融緩和」が先のG7で容認されたこともあり、世界は「暗黙の自国通貨安誘導」を目指した金融緩和競争の様相を呈して来ている。世界的な金融緩和競争は副産物として世界的な株高を生み出している。日本株も、日替わりで訪れる円安とNY株高という追い風を受けて、日経平均株価は15,300円台と、2007年12月27日以来およそ5年5カ月ぶりの高値を記録、2010年5月6日以来約3年ぶりにNYダウの終値を上回る「日経・米ダウ逆転(Crossing)」を達成した。

株式市場が絶好調で推移するなか、今週の注目点は、日銀の金融政策決定会合とバーナンキFRB議長の証言。

日銀金融政策決定会合では政策変更はあり得ないが、黒田総裁が債券市場の乱高下と金利上昇に関してどのような認識を持ち、対策を打ち出してくるかが注目点。実体経済の回復に先行して市場の期待インフレを煽るという「異次元の金融緩和」を実施している黒田日銀。「異次元の金融緩和」が効果を発揮するためには、日銀が実体経済回復に先行して恣意的に作り出している市場での期待インフレ上昇に伴う金利の上昇を、実体経済が回復するまで抑え込まなければならない。長期国債を大量に購入することで金利の上昇を抑え込むという日銀の思惑通りに市場が反応していないなか、黒田日銀が実体経済に対して景気抑制効果のある金利上昇を食い止める方策を持ち合わせているかが注目されるところ。

おそらく、黒田日銀の対応は、国債市場の混乱は一時的なものであり、市場との対話を通して解決して行くというような曖昧な内容になるのだろう。こうした抽象論で市場の混乱が収まるかは保証の限りではない。

通常の金融政策と「手順前後」させ、インフレ率2%という目標を掲げることで世の中にインフレを起こそうとする「異次元の金融緩和」。円安・株高という副産物のおかげで、世の中のムードは明るくはなって来ているが、実体経済に資金が回っていくかは定かではない。「手順前後」の金融政策は、金融機関の貸出金利設定も難しくしている。将来本当に2%というインフレが起きるのであれば、当然金融機関はそのリスクプレミアムを貸出し金利に上乗せしなくてはならない。将来2%のインフレが起きるリスクを貸出金利に反映させれば、企業の金利負担は今の景気状況から過大なものになり、金融引締めと同等の効果を生むもの。一方、将来2%のインフレが起こそうという政策が採られているなかで、低利で貸出しを実行することは、将来のインフレリスクを金融機関が負うということになる。国債市場が不安定な動きを見せているのも、こうした「手順前後」の金融政策に対する金利設定が難しいことの表れ。黒田日銀はこうした現実を汲み取って上手く市場と対話出来るのだろうか。これまでのように笑ってはごまかせない。

一方のバーナンキFRB議長の証言。議長に近いサンフランシスコ連銀ウィリアムス総裁がQE3の「出口論」に関する発言をしたこともあり、バーナンキ議長の証言が俄然注目されて来ているが、市場を驚かせるような発言はしないことが想定される。

ただ、世界が日銀の「異次元の金融緩和」に呼応する形で金融緩和競争に向かったことで、FRBが「出口論」を模索しやすくなった可能性は考えておく必要がある。FRBが「大胆な金融緩和」から「通常の金融緩和」に舵を切る際の株式市場への影響等、世界経済に及ぼす影響を緩和する可能性があるからである。あとは「出口論」がこれまで実体経済に大きな影響を及ぼしてこなかったドル高に対する影響をFRBがどの程度見積もるか。ドル高には、資源インフレの抑制効果や米国国債市場の安定効果もある。

「投資銀行」を中心に民間がバランスシートを膨らませ過ぎてしまったことによって発生したリーマンショック。そのリーマンショックによる金融システムの崩壊と急激な景気悪化を防ぐためにバランスシートの拡大を余儀なくされた「政府」。そして「政府」がバランスシートを膨らませ過ぎたことによって生じたソブリン危機等によってバランスシートを異次元まで拡大する必要に迫られた「中央銀行」。

「投資銀行」、「政府」、「中央銀行」とバランスシートを膨らませて来た今日、「政府」、「中央銀行」が膨らませて来たバランスシートを縮小させるために、「政府」「中央銀行」に代わって膨らますことの出来る主体は見当たらない。これまで世界で突出してバランスシートを膨らませて来たFRBが、金融経済に及ぼす影響を最小限にとどめようとした場合、各国の中央銀行のバランスシートの拡大に合わせて漸次縮小させていくことは十分に考えられることである。そう考えると、FRBの「出口論」が市場の想定よりも前倒しで現実のものになる可能性は十分に考えられること。

新興国を中心に、ECBやオーストラリアなど世界中が利下げに動いて来たことは、金利面からの円安圧力を弱める出来事である。その中でのFRBによる「出口論」は、少なくとも対ドルでの円安圧力は維持するものである。「出口論」が視界に入って来た米国と、「入口」でもたついている日本。この両国の立ち位置の違いは、短期的に解消されるものではない。

財政収支の改善が進み、2013会計年度(12年10月~13年9月)の財政赤字は6420億ドル(約66兆円)と、最悪だった09年度の半分以下に縮小する見通しの米国。金融市場は、この先暫く「米国が相対的に最も強い国家」という前提で展開することになりそうだ。
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近藤駿介

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