「誰もが納得する悪材料」がない中で起きた株価急落

「ご指摘のように、足許で少し長期金利が上がっており、それを反映して住宅ローン金利等にも影響が出ていることはその通りだと思います。ただ、これが、今の時点で、実体経済に大きな影響を及ぼすとはみていません」

22日の記者会見で黒田日銀総裁が示した、「足許の長期金利の上昇が『今の時点で』実体経済に大きな影響を及ぼすことはない」との見解は、翌日の金融市場に「直ちに」大きな影響を及ぼした。

「長期金利が跳ねることは十分防止できる」と自信を見せた新発10年国債利回りは、23日午前中に1年2ヶ月ぶりに1%台に上昇。日銀は長期金利上昇抑制のために、急遽、合計2兆8000億円の資金供給オペに踏み切った。長期金利を低下させ、イールドカーブをフラットニング化させる目的で実施している残存期間の長い国債を買い入れる「異次元の金融緩和」が長期金利の上昇を招き、それを抑制するために日銀が「短期資金の供給」に追い込まれるというのは、まさに「異次元」の話し。

「異次元の金融緩和」が長期金利の低下をもたらさないこと、黒田日銀が長期金利を抑制する術を持ち合わせていないことをさらけ出したことを反映したのか、朝方16,000円目前まで上昇していた日経平均株価は昼前から下落に転じ、大引けにかけてはストップロスの売りを巻き込む形で急落。大引けは前日比1,143円安の1万4483円98銭と、下落幅は2000年4月以来、13年1カ月ぶりの歴代11位、下落率は歴代10位の大幅安となった。

僅か6営業日で14,000円台を突破し、15,000円台も6営業日で突破しかねない超高速で5年5か月ぶりの高値を記録して来た日経平均株価。「スピード違反」といわれるペースで上げて来た9日分の上昇幅を、13年ぶりのスピードで僅か半日で吐き出す格好となってしまった。マーケットの常であるが、下落するときのスピードは、「スピード違反」といわれる上昇スピードと比較しても、比較にならないくらい早い。

報道を見ていると、専門家達は、日経平均株価が急落に転じた原因として、中国のPMIが50を割り込んだことをあげているようである。しかし、これは、たまたまPMIの発表が、株価が下落に転じるタイミングと重なったことから来るこじつけでしかない。根本的な原因は、「黒田日銀の能力に対する不信」にあると考えるべきである。

22日の記者会見で、黒田日銀総裁は、繰り返し足元の長期金利の上昇に関する見解と対応策について質問を受けたが、殆ど説得力のある回答は示すことはなかった。

例えば、「将来の期待に働きかける」ことを目的として「異次元の金融緩和」を実施している日銀総裁による、「足許の長期金利の上昇が、『今の時点で』、実体経済に大きな影響を及ぼさない」という説明は、市場をバカにしたようなもの。長期金利の低下が「将来の期待に働きかける」ことになるのであれば、長期金利の上昇も「将来の期待(失望)に働きかける」はずである。それにも拘らず平然と「今の時点で」と、時間軸を無視した回答をした日銀総裁。こうした日銀総裁による無責任な答弁が、「直ちに」金融市場の失望を招いたと考えるべきである。

「これまでの上昇ピッチが速かっただけに調整幅も大きくなる可能性もあるが、日本経済の回復やデフレ脱却期待がはく落したわけではなく、市場心理が落ち着きを取り戻せば金融相場による株高が再開するとの見方も依然根強い」

23日の株価急落に対する市場の評価は、「今の時点で実体経済に大きな影響を及ぼすものではない」という理由で、「一時的なスピード調整」というのが主流を占めているようである。確かに株価の上昇ピッチが速すぎたことは確かだが、今回のポイントは、「誰もが納得する悪材料」がない中で株価急落が起きたこと。論理的ではないが、経験則から言えることは、「誰もが納得する悪材料」が存在しない中での下げは、甘く見ない方が賢明である、ということ。

株価のスピードは時間で解決できる問題であるが、その時間の経過は黒田日銀に対する信認を低下させかねないものでもある。日銀総裁の「根拠なきコメント」をエネルギーにして株価が上昇する局面は終わった可能性が高い。日本経済に対する「将来の期待」を生んで来たのは、「長期金利の低下」ではなく、紛れもなく「株高」である。この先、もし「株高を伴わない長期金利低下局面」が訪れるとしたら、その中で黒田日銀総裁が主張するように、「長期金利の低下」が世の中の「将来の期待に働きかける」ことが出来るだろうか。
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