転換期を迎えた「アベノミクス相場」~日銀と市場の蜜月関係の終焉

アベノミクス相場に陰りが見え始めて来た。注目された週明け27日の株式市場は、日本経済新聞に掲載された「週明け市場、波乱含み 株式は先物主導で下げも」という指摘通りの展開となり、前週末比469円80銭(3.22%)安の1万4142円65銭と、下げ幅、下落率ともに今年2番目の大きさとなり、約1カ月ぶりの安値をつけた。

「デリバティブ市場の不穏さを示しているのが相場変動の大きさを予想する『日経平均ボラティリティー・インデックス』。株価が急落した23日に43.74で引けた後、24日も40近くで高止まりし、従来の20台と比べ異例の高水準となっている。同指数の数値の高さは、それだけ今後の値動きが荒くなるとの見方が多いことを表す」

日本経済新聞が報じている通り、先週末の株価急落を受けて日経平均のヒストリカル・ボラティリティー(21営業日)は36.8%まで急上昇して来ている。特徴的なことは、日経平均のヒストリカル・ボラティリティーは、NYダウの7.8%、英FT100の10.4%、独DAX12.1%と比較すると際立って高く、日経平均だけが飛び抜けて上昇していること。

ヒストリカルVlt

国内では、先週末からの日本株調整の一因をFRBによるQE3の早期縮小観測に求める見方もあるが、こうしたヒストリカル・ボラティリティーの動きの違いをみると、株価急落の原因を海外要因に求めるのはやや無理がある。FRBの「出口論」が原因であるならば、欧米主要市場のボラティリティーももっと上昇して然るべきだからである。

ヒストリカル・ボラティリティーは統計上の「変動率」を示したものであるが、同時に「相場で苦しんでいる投資家の多さ」を示したものでもある。つまり、日経平均株価のヒストリカル・ボラティリティーが急上昇して来ているということは、「裏にはまった投資家」が急激に増えたことを示唆したものでもある。そして、経験則からいうと、日経平均で30%を上回るようなボラティリティーの急上昇は、相場の局面変化を告げるシグナルである場合が多い。

こうしたボラティリティーが高い局面で投資家が気を付けることは、損益確定以外では「相場を追わない」ことと、これまでの延長線上で考えないことである。相場が上昇に転じたからといって上値を買いに行き、相場が下落したからといって下値を売りに行く行動は、股裂きに会いに行くようなものになってしまう。さらには、こうした局面で専門家達が繰り返す「株価の上昇基調に変化はない」というコメントを鵜呑みにしないことである。急上昇したボラティリティーが通常の水準に向けて低下に転じるまで、投資家には考える時間が与えられている。

株価急落の影響もあったのか、この週末に実施された各社の世論調査で安倍政権の支持率は、依然として高水準にあるものの、政権誕生後初めて明らかに下落した。企業中心の景気回復を図るアベノミクスにとって「円安・株高」は国民に対する「麻酔薬」のようなものであった。こうした中での「円安・株高」の一服は、国民に対する麻酔効果が切れ、痛みを感じさせかねないものであって、アベノミクスにとっては厄介なもの。

各社の世論調査で、過半から大半を占めていることが明らかになった「アベノミクスによる景気回復を実感できていない」国民が安倍政権の経済政策に期待を抱いていたのは、「円安・株高」が、「もしかしたら恩恵が自分のところまで回って来る」という淡い期待をもたらして来たからである。「円安・株高」期待が萎むとしたら、過半から大半を占めている「アベノミクスによる景気回復を実感できていない」国民が、これまで通り安倍政権の経済政策に期待を寄せ続ける保証はない。

「長期金利が跳ねることは十分防止できると思っています」

22日の記者会見でこのように述べ、長期金利のコントロールに自信を見せた黒田日銀総裁。その願いが通じたのか、翌日に新発10年国債利回りが一時1%を付けた後は、株価の急落もあり、27日は0.83%まで低下して来た。買入れ国債の期間長期化によって長期金利の低下を促そうとして来た黒田日銀が招いた長期金利の上昇が、短期資金の大量供給と株価の下落によって抑制されるという姿は、黒田日銀が金融市場のコントロールに失敗したことを示したもの。黒田日銀と金融市場の蜜月関係は終了に近付いている。

「(株式など金融市場や金融機関に)現時点では、過度な期待の強気化を示す動きはみられていない」

株価が急落後の26日の講演でこのように語った黒田日銀総裁。自身の信認低下によって、金融市場で「過度な期待の強気化」どころか、「通常の期待」すら萎みかけていることは全く想定していないようだ。市場からの信認を失いつつある黒田日銀総裁の存在は、今後のアベノミクスのアキレス腱になって行きそうだ。
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