「外的要因」に依存した「成長戦略」を掲げる安倍政権が懸念する「外的要因に振り回される市場」

「外的要因で振り回されている」

7日の閣議後会見で甘利明経済再生担当相は、最近の株式及び為替市場動向についてこのような見解を示した。政治家の発言としては致し方ないが、こうした考え方は投資家としては最も危険なものである。

甘利大臣としては、日本政府としては打つべき手をきちっと打って来ており、安倍政権の政策が市場から厳しい評価を受けるはずはないとの思いが強いのだろう。しかし、不都合な反応を全て「外的要因」で片付けていたのでは市場からの信頼は得られない。

「海外経済にも恵まれて、この成長シナリオを実現できれば、一人あたりの国民総所得は、足元の縮小傾向を逆転し、最終的には、年3%を上回る伸びとなります。そして、10年後には、現在の水準から150万円以上増やすことができると考えています」

5日に「成長戦略第3弾スピーチ」で安倍総理が掲げた「所得150万円増加計画」からも明らかなように、アベノミクスの「成長戦略」の根底に流れているのは、アジアやアフリカを中心に「世界の成長を取り込む」ことである。要するにアベノミクスの掲げる「成長戦略」は「外的要因」に依存したものになっており、これが実行されれば、実体経済自体が「外的要因に振り回される」方向に向かっていくのは自然な流れである。「外的要因」に依存した「成長戦略」を取ろうとしている安倍政権が、株式及び為替市場が不都合な動きを見せた時にその原因を「外的要因」求めるのは矛盾したもの。

「外的要因」に振り回された7日の為替市場と株式市場。5月に何のサプライズもなく100円を突破して来た為替市場は、今度は何のサプライズもないなか突如95円台まで上昇した。それを受けた株式市場は一時350円以上下落し、黒田日銀が「異次元緩和」の導入を決めた4月4日の終値である1万2634円を下回った。

「外的要因」によって振り回された7日の市場に歯止めをかけたのが、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運用計画変更という「内部要因」。GPIFの運用計画変更は、一部で安倍総理の「成長戦略第3弾」発表時に言及されることが期待されていたもの。主な変更点は全体の資産に占める国内債券の比率を67%から60%に大幅に下げ、国内株式への配分を11%から12%に高め、外国債券は8%から11%に、外国株式は9%から12%に、それぞれ高めるというもの。

GPIFの運用資産は約120兆円であるから、この資産配分の変更によって、国内株式には約1.2兆円、外貨建て資産には7兆円強の新規需要が生じることになる。

一方、この資産配分の変更によって売却されることになる8兆円を上回る国内債券は、「長期国債の保有残高が年間約50兆円に相当するペースで増加するよう買入れを行う」という黒田日銀の打ち出した「異次元の金融緩和」の2ヶ月分の買入れに相当する規模。これは、「イールドカーブ全体の金利低下を促す」という目的には逆行するものであるが、同時に、毎月発行される国債の70%強を日銀が買入れる格好になっている歪んだ需給構造を改善するものでもある。

「外的要因に振り回された」金融市場は、株価と為替が黒田日銀の「異次元の金融緩和」が打ち出された水準に戻ってしまい、「異次元の金融緩和」に対する「期待」が殆ど消滅した格好になっている。

一方、新発10年国債利回りは、「異次元の金融緩和」が実施された時点の0.555%と比較すると約0.3%高い0.850%となっている。こうした名目金利の上昇に関して有識者の間では、「期待インフレ率の上昇」によるもので、「実質金利(=名目金利ー期待インフレ率)」が上昇しているわけではないので問題ない、という見方が強いようである。

しかし、株式市場が「異次元の金融緩和」に対する市場の「期待」が消滅したことを示唆し始めているなかで、新発10年国債利回り(名目金利)の上昇を、正確に測ることの出来ない「期待インフレ率の上昇を反映したもの」と決め付けていいのだろうか。

異次元の金融緩和後の市場

原因が「外的要因」であろうとなかろうと、アベノミクスの「政策を全て打ち上げ終わった」安倍政権にとっては、金融市場の混乱は忌々しき問題である。金融市場の混乱に対する対策を打ち出すことは、これまでの政策が誤りであった、或いは足りなかったことを認める自己否定になりかねないからである。混乱を放置すれば市場の「期待」を萎ませ、混乱を鎮めるために対策を打てばこれまでの政策的誤りを認めかねないことになる。安倍政権が願っているのは、「外的要因」によって市場の混乱が鎮まることのはずである。
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近藤駿介

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