「外的要因」頼りになる「アベノミクス」~コントロール出来ない市場と、「期待」に働きかけられない財界

「期待」が「不信」に変わりつつある。

先週5日、「成長戦略第3弾」発表を受け今年3番目の下落を記録し、週明け10日には米国の雇用統計の発表を受け今年最大で2008年10月30日以来およそ4年8カ月ぶりの上げ幅を記録した東京株式市場。11日は日銀が金融政策決定会合で「量的・質的金融緩和」の継続だけを決め、共通担保方式の資金供給オペの期間延長に関する決定や提案がなされなかったとの発表を受け、後場から再び軟調な展開となった。

安倍政権は「外的要因で振り回されている」という見方を示しているが、直近の金融市場の動きは、「内部要因で下落し、外的要因で上昇する」格好となっている。

「期待に働きかける」ことで経済を活性化しようとするアベノミクス。しかし、半年が過ぎ、「期待に働きかける」戦略は金融市場に通じなくなって来ている。3本の矢を打ち終わる前後からの金融市場の混乱は、市場が、政府と日銀が経済をコントロール不能状態に陥りつつあることを感じて来ていることの証左である。

金融市場が政府と日銀が市場をコントロールする術を持っていないことを感じ始めている中で、黒田日銀は「現状の金融政策の維持」だけを決定することで、市場のコントロールを放棄するかのような姿勢を示した。反対に安倍総理は、「成長戦略第3弾」発表直後にも関わらず、「秋には第2弾を打ち出したい。その中で思い切った設備投資減税を決定したい」と「設備投資減税」に言及。狼狽ぶりを見せた。

「政策の逐次投入はしない」と大見得を切った「異次元の金融緩和」が引き起こした長期金利の乱高下に対して、短期資金の供給という「これまでと同次元の金融緩和」で対応するしかなかった黒田日銀。さらに共通担保方式の資金供給オペの期間延長という、「異次元の金融緩和」を否定するような政策には踏み込めなかったようである。

黒田日銀が追加策に踏み込まなかったのは、長期金利が乱高下し、住宅ローン金利が上昇しても、長期金利の水準自体の上昇は止まっていることに加え、「早川日銀時代の遺産」の効果が表れて来たこと。11日、昨年12月、早川日銀時代に導入を決めた「貸出増加を支援するための資金供給」にもとづいた、期間3年間の低利による資金供給の総額が3兆円弱に及ぶ規模になったことが発表された。

この制度を利用して、三井住友銀行は今月から1,000億円を上限に、住宅ローンの3年固定型金利を現在の1.5%(最優遇金利)から、0.6%に引き下げることを決定し、大手メガバンクも追随する動きを見せている。つまり、「早川日銀時代の遺産」によって、「異次元の金融緩和」による長期金利の上昇と乱高下の悪影響が最小限に食い止められるという、黒田日銀にとっては皮肉な結果になっている。

政権発足後半年経った今でも60%を超える高い支持率を誇っていることからも明らかなように、「大胆な金融緩和」による「円安・株高」によって、アベノミクスは「国民の期待」に強く働き掛けることには成功して来た。しかし、金融市場が「乱気流」に巻き込まれたことで、「大胆な金融緩和」で醸成された「期待」を「成長戦略」に繋げていくという安倍総理の思惑は崩れ始めている。

安倍総理は「投資減税」に言及することで、市場及び国民の「期待」を繋ぎ止めようと試みている。しかし、麻生副総理兼財務大臣が7日の閣議後に「法人税は払っていない会社が7割いる。法人税を払っていない会社には下げてもらって意味はない」と「投資減税」に否定的な見解を示した直後であることを考えると、「投資減税」の話しは政権内で十分に議論されたものではなく、総理の焦燥感を表わしたとも言えるもの。

そもそも、「成長戦略第3弾」発表直後の追加策の言及は、これまでの「成長戦略」が不十分であったことを自ら認める危険なものでもある。

「投資減税だけでは設備投資は動かない。成長戦略が工程表に沿って着実に実現することが必要だ」「実体経済が成長戦略に乗ってくれば、必ずそれに対する需要がでて、設備投資が実現する」

経団連の米倉会長は10日に記者会見でこのように述べ、安倍総理の言及する「投資減税」の効果に否定的な発言をしている。これまでの「大胆な金融緩和」による「円安・株高」で最も恩恵を受けたのは大企業だったはずである。アベノミクス最大の成果である「大胆な金融緩和」による「円安・株高」は、最もその恩恵を受けたはずの大企業のトップである経団連会長の「期待に働きかける」ことは出来なかったようである。

企業業績の回復を通して国民への恩恵をもたらそうとするアベノミクス。「大胆な金融緩和」によっても日本の大企業の「期待に働きかける」ことの出来ないとしたら、景気回復「期待」は完全な絵に描いた餅になる。市場をコントロールするのに必要な「信頼」も、大企業経営者の「期待に働きかける」ことも出来なくなっているのだとしたら、アベノミクスも現実に合わせた修正が必要な時期に来たということである。
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近藤駿介

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