「金融緩和縮小」の空騒ぎ~FRBは「金融緩和縮小」を示唆し続ける?

「日米の金融緩和は理解するが、出口戦略をどうするつもりなのか」

世界経済を巡るG8サミットの初日の討議で各国首脳がアベノミクスに賛意を示すなかで、あえてこうした異議を唱えた独メルケル首相。G8がアベノミクスは日本経済の成長を下支えするとの認識を示す一方で、「信頼できる中期的な財政計画を定める必要がある」と指摘するなか、財政規律派の権化ともいえるメルケル首相が持ち出したのが「財政再建」ではなく「金融緩和の出口論」であったことは興味深いこと。

ユーロはこれまで直接的には通貨の増発を伴わない、ESM(欧州安定メカニズム)という「基金」を通じて国債買い入れを行って来たが、2012年9月にECBが期間3年以下の国債を無制限で買入れ措置(OMT)を決定。日米と同様に、中央銀行による通貨増発を伴う方式へと大きく方針転換をして来ている。

これを受けて、ドイツ憲法裁判所は6月11日から2日間、ECBが決定したOMTをめぐり、「ドイツ基本法に関わる点を中心に、ECBが本来保有していない権能を引き受けたかどうか」を見極める口頭弁論を実施しており、ECBの無制限での国債買入れが懸案事項になっている。

ECBがOMTを利用した国債買入れをまだ実行していない段階で日米の金融緩和の「出口論」を懸念するドイツ。投資銀行がレバレッジを掛けバランスシートを膨らまし過ぎた後始末のためにバランスシートの拡大を余儀なくされた国家財政。それに伴う財政危機に対応してバランスシートを膨らまして来ている中央銀行。中央銀行の拡大したバランスシートを、今度は誰がバランスシートを膨らませて引き継ぐのか。今のところその引き取り手が見当たらないところが世界経済が不透明感を見せている一つの原因であり、ドイツが懸念するのも尤もなところ。

そうしたなか、G8以上に世界中が注目しているのが18、19日両日に渡って開催されるFOMCでの「出口論」の行方。FRBの「金融緩和縮小論」が根強い中、バーナンキFRB議長が「金融緩和縮小」に言及するのか、金融市場は神経質、かつ方向感のない展開になっている。

個人的には、バーナンキFRB議長は、今回に限らず折につけ「金融緩和縮小」を示唆し続けることになると考えている。

それは、
  • 「金融緩和縮小」が政策金利引き上げや保有国債等の売却という行動を意味しないこと
  • 「金融緩和縮小」を示唆することで市場のガス抜きが出来ること
  • 市場に期待を膨らませ過ぎてしまうと「出口戦略」がより難しくなること
  • 米国景気の回復が確認される局面まで引き延ばしてしまうと、近い将来市場金利が上昇する中で保有債券の売却を強いられかねず、それが金利の急上昇と景気の腰折れを招きかねない
等からである。

任期が2014年1月末で切れるバーナンキFRB議長にとって、日欧及び世界の多くの中央銀行が金融緩和に向かう局面で、米国が明確な景気回復を示す前に、「金融緩和の縮小」には手を付けておきたいはずである。あとは、どれだけ市場に悪い影響を及ぼすことなく認知させるかという「対話能力」の問題である。この能力に関するFRB議長への信頼は、日銀総裁をはるかに上回っていることは明白である。

日本の有識者や専門家達は、FRBの「出口論」が市場を動かす全ての原因のように取り扱っているが、金融市場は「金融緩和縮小」自体は、徐々に織り込み始めている。17日のNYダウ終値は5月28日の高値15,409$から僅か1.5%しか下落していないし、NY株式市場のウエイトが高いMECI World Indexも、5月21日の高値1,520からの下落率は2.9%に留まっており、日本の専門家が騒ぐほど、「金融緩和縮小論」が世界の株式市場に悪影響を及ぼしていないというのが実態である。

FRBの動向とは関係なく金融緩和の入口段階からズッコケ気味の日本。日本の金融市場の動揺を全て「FRBの出口論」という「外的要因」に押付けて来た有識者や専門家達は、そろそろ「FRB出口論」以外の言い訳を準備しておく必要がありそうだ。
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近藤駿介

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