「中国版サブプライムローン」を警戒する市場と、「日本版サブプライムローン」の種をまく自民・公明

「アメリカがくしゃみをすると日本は風邪を引く」

数年前までは、日本の経済や金融市場は、このように言われていた。しかし、最近の日本は、歳を取ったせいか、中国がくしゃみをしても、欧州がクシャミをしても、風邪を引くような虚弱体質になり始めている。26日の東京株式市場は、前日のNY株式市場の上昇を受けて反発して始まったものの、上海市場が下落したことを受けて下げに転じ、結局主要国市場のなかで貴重な株価下落を記録。そして、27日は上海市場が堅調に推移したこともあり、一転大幅高となった。上海市場は結局前日比マイナスで終わったが。

経済がグローバル化して来ているので、株式市場が海外要因の影響を受けるのは当然でもあるが、日本経済が風邪をうつされ難い体力を付けておくという自助努力は、グローバル化云々に関わらず重要なこと。

国会が26日に参議院でのドタバタ劇をもって閉幕したことで、国内政治面での新しい動きが少なくなることから、日本の市場は国内要因より海外要因で動きやすい局面に入って来ている。

米国の「出口論」とともに、市場の注目を集め始めているのが、中国の「シャドーバンキング問題」。

「シャドーバンキング」は、表面的な資金調達スキームとしては、日本でも盛んなPFIや官制ファンドと同類のような装いであるが、その中には、地方行政府主導による「MRI」「安愚楽牧場」のような収益の怪しいものも混じっていると言われている。そうしたなか、来月にも到来する償還日に元利金が返済されるのか、万が一の際に、新政権が「シャドーバンキング」をソフトランディングさせるのか、ハードランディングさせるのかが注目されるところ。

中国では90年代後半に不良債権問題が深刻化した際、1998~2006年にかけて中国政府と投資家による合計3.8兆元の資本注入によって乗り切った経験がある。しかし、新政権が「投資偏重経済」からの脱却を目指し、「シャドーバンキング」を「投資偏重経済」を目指した前政権の遺物だとみなしているのであれば、ハードランディングさせる可能性は十分にある。ソフトランディングさせた場合、新政権は「シャドーバンキング問題」が、将来新政権が生み出した問題として非難の対象とされるリスクを背負い込む可能性もあるからだ。

中国の金融は閉鎖的市場であり、中国で「シャドーバンキング問題」が顕在化した場合、世界の金融市場に及ぼす影響を計るのは難しい。もちろん、好影響を及ぼすことはないので、悪影響の度合いの問題。

2008年リーマン・ショックが起きた際、当時投資銀行業界第5位であったベアー・スターンズを公的資金で救う一方、第4位であったリーマン・ブラザーズを史上最大の倒産に追い込んだ米国政策当局。その衝撃は、リーマン・ブラザーズ1社に留まらず、最大の保険会社AIGさらには世界中の国家財政までに及び、世界経済は極めて高いツケを払うことになった。こうした過去の経験を中国政策当局がどのように判断するかによって、世界経済の行方は大きく変わる可能性がある。

これまでも、中南米やアジア、リーマン・ショックなど、世界は何回も金融危機に見舞われて来た。しかし、それらの危機は、米国を中心とした自由主義経済圏の金融システムの中で起きたものであり、米国を中心とした政策協調で対応が可能であった。もし、中国の「シャドーバンキング問題」が顕在化としたら、米国と中国の間で政策協調が出来るのだろうか。先進国では中央銀行は原則政府からの独立性を保っているが、中国人民銀行は完全に中国共産党の一組織である。従って、純粋な金融問題として解決出来るかは未知数で、政治的問題が絡んでくることは間違いないところ。奇しくも、米財務省は26日、ブレイナード財務次官(国際問題担当)が同日から27日までの日程で北京を訪れ、中国の政府高官と会談すると発表した。中国経済の成長に「賭けている」日本にとって、中国の「シャドーバンキング問題」から目を離せない。

「自民、公明両党は26日、2014年4月の消費増税時に導入する住宅購入者向けの給付制度の内容で合意したと発表した。住宅ローンの利用者なら年収制限を設けたうえで最大30万円の現金を支給する。現金で住宅を買う場合も50歳以上などの条件付きで給付する。年収が低いほど支援を手厚くし、消費増税後の住宅市場の落ち込みを防ぐ」(27日付日本経済新聞「年収低いほど手厚く」)

「中国版サブプライムローン」とも呼ばれる「シャドーバンキング問題」が懸念される中、自民・公明両党は、参院選挙を控えての人気取りのためか、日本国内にサブプライムローン問題を植え付けるかのような政策を打ち出した。

日本では、サブプライムローン問題は、証券化商品を利用した「金融問題」であるという捉え方が強いが、これは誤った認識である。問題の本質は、それまで収入面で住宅購入が難しいと見なされていた人達に、住宅購入のためのローンを提供し、結果的に住宅ローン返済に行き詰る人達を一定の確率以上発生させてしまったことである。

ここで住宅購入のためのローンを提供することを可能としたのが、証券化商品である。商品化商品の発達により、低所得者層への住宅ローン提供が(確率上)可能になり、それが数年後に住宅ローン返済不能者を作り出す原因になったのである。サブプライムローン問題から学ぶべきことは、証券化という「金融技術」は、低所得者に対する住宅ローンの提供を可能にする技術だったが、低所得者の住宅ローン返済能力を向上させる「金融技術」ではなかったということである。

自民・公明両党の案は、「金融技術」を使っていないという点では極めてローテクである。しかし、現金を支給しようが「金融技術」を使おうが、住宅ローン利用者の返済能力が向上するわけではない。「消費増税後の住宅市場の落ち込み」を防ぎたいのであれば、消費増税などやらなければいいだけのことである。消費増税によって経済の落ち込みがあるということは、マクロ経済的にみれば、住宅ローン利用者の返済能力も低下する可能性があるということである。こうした中で、一時金を餌に国民に住宅ローンを組ませるという考え方が、政治的に正しいものなのだろうか。

日本の住宅ローンは、米国のようにノンリコースローン(非遡及型ローン)ではない。従って、将来住宅ローンの返済に行き詰った際には、自宅を失うばかりでなく、自宅の売却代金で埋め合わせることの出来ないローンが残った場合には、残ったローンまで支払う義務を負うのである。自宅を失った上に借金が残る。「何度でもチャレンジできる社会を創り上げる」という目標を掲げる政権であっても、国民をこうした危険に晒すような経済政策を選挙目当てで打ち出すのは言語道断である。
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