「異次元の金融緩和」とは「別次元」の理由で起き始めている「悪い物価上昇」

「総務省が28日発表した5月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は値動きが激しい生鮮食品を除くベースで100.0となり、前年同月に比べて横ばいだった。前月と比べて0.4ポイント改善し、12年10月以来、7カ月ぶりに物価が下がらなかった」(28日日経電子版「5月の消費者物価、横ばい 7カ月ぶりマイナス脱却」)

全国消費者物価(CPI)が7か月ぶりに前年同月比マイナスを回避した。同時に発表された東京都区部の6月中間速報値も、生鮮食品を除くベースで前年同月比0.2%の上昇。前月に比べ0.1ポイント上がり、2カ月連続の物価上昇となった。こうした動きを受けて、総務省は物価の動きについて「一部に変化が出てきている」としている。

しかし、消費者物価を押し上げた要因は、「電気代」の上昇。5月は「電気代」が前年同月に比べて8.8%も上がり、指数全体を0.3ポイント押し上げた。「電気代」は、4月比でも4.3%上昇している。もし仮に、「電気代」が前年同月比変わらずだったとしたら、生鮮食品を除くCPIは、前年同月比で0.29%の下落、「電気代」が前月4月から変わらなかったとしたら、同じくCPIは前年同月比で0.15%下落していたとことになる。まさに「電気代」効果。

一方、CPIの足を引っ張った主役は、前年同月比で▲9.6%を記録した「テレビ(指数に対するウエイトは97/10000)」を中心とした「教養娯楽用耐久財(同171/10000)」の▲7.1%と、「家庭用耐久財(同121/10000)」の▲7.6%など。

こうしてみると、購入頻度の低いテレビなど耐久財の価格下落がCPIを押し下げ、生活に不可欠な「電気代」がCPIを押し上げる構図になっている。つまり、消費者の生活実感は、CPIの動向に先行して厳しくなって来ている可能性が高い。

5月のCPI統計では、「生鮮食品を除く食料(同213/10000)」は前年同月比▲0.4%となっているが、小売りの現場では、価格据え置きで内容量を減らす「隠れ値上げ」も進んでおり、こうした消費者の実質負担増が正しくCPIに反映されているかは定かではない。

「2%の物価安定目標」を目指して「異次元の金融緩和」を実施している黒田日銀。CPIは下げ止まりの気配を見せているが、「電気代」を中心とした物価上昇は、「異次元の金融緩和」の成果ではなく、原発事故に伴う燃料の輸入価格上昇という、全く「別次元」の問題。

消費者にとって不幸なことは、「異次元の金融緩和」による効果が、これから出てくる可能性が高いということ。

「日本経済新聞社が食品・日用品の主要80品目の6月の販売価格を調べたところ、半数の40品目が5月より上昇した。原料高や円高修正の影響を受け、小麦や大豆を原料にした加工食品の値上がりが目立つ。スーパー各社が特売を減らしていることが要因だが、今後は店頭価格を引き上げる動きも出てきそうだ」(27日 日経電子版「食品・日用品、6月は半数値上げ 日経POS調査」)

計算上、他の項目が不変だとしたら、6月に「電気代」と「食料(同2525/10000)」がともに前年同月比で7%程度上昇、あるいは、「電気代」が今月と変らず「食料」が5月比8%程度上昇すれば、「2%の物価安定目標」は達成出来ることになる。

将来の「電気代」の上昇に「期待」して、国民が「電気」を蓄えておくことが出来るのであればいいが、蓄えることも備えることも出来ない、毎日利用せざるを得ない「電気代」や「食料」が物価上昇の主役となるような「安定的物価上昇」を放置し、盲目的に「2%の物価安定目標」の実現を目指すこととが、「国益」に適う政策なのだろうか。「異次元の金融緩和」も、点検すべき時期に来ている。
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

入会キャンペーン 実施中!

メルマガのお知らせ

著書

アラフォー独身崖っぷちOL投資について勉強する

Anotherstage LLC

金融に関する知見を通して皆様の新しいステージ作りを応援

FC2ブログランキング

クリックをお願いします。

FC2カウンター

近藤駿介 facebook

Recommend

お子様から大人まで
町田市成瀬駅徒歩6分のピアノ教室

全記事表示リンク

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

QRコード

QR