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出口のない「安全かお金か」論争に終止符を~「原発分離」という「大胆なレジームチェンジ」を検討すべし

「安全よりもお金を優先したのではないか」

5日に東京電力の廣瀬社長と会談した新潟県泉田知事は、東電が地元の事前了解を取り付ける前に国に安全審査の申請をしたことについて、強く批判した。関西、北海道など4電力会社は、8日に原子力発電所の新規制基準が施行されことを受け、5原発10基について新基準に基づく安全審査を申請したが、地元の理解を得られなかった東電は柏崎刈羽原子力発電所の安全審査請求を見送った。

「安全かお金か」…。一般の企業であれば、「安全」は企業が存続するための必要条件なので、議論を重ねれば、それなりの着地点が見えて来る可能性が高い。しかし、社会インフラを提供する電力会社、しかも特殊な事情を抱える東電となると、話しは変わって来る。

日本経済新聞は9日付の「原発の安全審査は厳格かつ効率的に」という社説のなかで、「周辺住民の避難方法などを定めた実効性ある防災計画の作成が、地元の理解を得て運転を再開するには不可欠である。電力会社だけに任せず、政府が前に出て調整にあたるべき仕事だ」と主張している。

「政府が前に出て調整にあたる」のは結構だが、政府が地元と東電の間に立って「調整」にあたらなければならない現状のスキームに無理があるといえる。「政府が前に出て調整にあたる」仕組みになっていないことが、「安全かお金か」という問題を解決不能にしている大きな原因の一つである。

東電は、原子力損害賠償支援機構(以下「機構」)が50%以上の議決権を握っているが、一応、民間企業である。そして、機構は、政府からの保証を受けることで金融機関から資金を借入れ、東電の資金援助に回している。ようするに、政府の資金援助でようやく2兆円超の賠償金を支払えている状況にある。東電の2013年3月期の当期純損失は6,852億円、これに対して長期借入金は約3兆5000億円であり、「お金」を無視した経営がとても出来ない状況にある。

「安全」を優先すれば、借入金の返済が滞り、最悪の場合は金融機関が融資を引き揚げ、東電が企業として存続出来ない可能性も出てくる。万が一東電が倒産するようなことがあれば、法的には被災者に対する賠償金支払いよりも、金融機関に対する借入金返済が優先されるはずなので、賠償金支払い自体が止まってしまうリスクがある。

泉田知事が「地元との約束」といっている、東電と地元が取り交わしている「安全協定」は、法的拘束力は持たないものであるので、法的に言えば、「安全」よりも「お金」が優先されることになる。

こうした「安全かお金か」という解決不能の議論に陥ってしまうのは、東京電力が原発とその他の発電と、両方を持っているからである。原発事故以降、「規制緩和」という旗印のもとに「発送電分離」が叫ばれてきたが、「発送電分離」は「安全かお金か」の議論の解決策にはならない。

「安全かお金か」という議論が出来るようにするためには、電力会社から原発を切り話し、原発事業は国が直営するという「原発分離」が必要不可欠である。

電力会社から原発を切り離すことが出来れば、電力会社は政府保証などなくても資金調達が可能になり、「お金」を重視した経営を行うことが出来るようになるし、原発を国が直営すれば、地元も政府に「安全」を優先に事業を進めることを要求することが可能になる。

「実効性のある防災計画」を「政府が前面に出て調整」することで、「安全かお金か」という議論に決着がつくのであればいいが、それはかなり難しいものである。「金融」という観点から想像されることは、国が中途半端な形で参加している現在の東電の賠償スキームを維持しようとする限り、「安全かお金か」という議論に出口はないということである。

「規制緩和」というスローガンのもとで「発送電分離」という理念を叫ぶのもいいが、「安全かお金か」という差し迫った現実の問題に解決の道筋をつけるためには、「原発分離」くらいの「大胆なレジームチェンジ」が必要である。
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近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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1989年12月29日、日経平均3万8915円~元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実

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