バーナンンキの関心は、新興国の株安・通貨安より、キャリートレードで米国に還流する緩和マネー

「議長は米緩和縮小で不安が広がる新興市場に配慮している」

12日付日本経済新聞の「米出口戦略 新興国を翻弄 FRB議長揺れる発言」という記事の中で、某専門家のこのような見解が紹介されている。先月QE3縮小の時期にまで言及していたバーナンキFRB議長が、10日の講演で一転、当面QE3継続を示唆した理由について、新興国への配慮した可能性を指摘するもの。

こうした指摘が上がるのは19日からG20を控えていること影響していると思われるが、本当にバーナンキFRB議長は新興国からの緩和マネーの流出を懸念しているだろうか。個人的にはその可能性はあまり高くないと考えている。

その1つ目の理由は、QE3規模縮小による新興国からの資金流出が、直ちに金融システムを揺るがすものにならないからである。この点において、欧米の投資銀行がバランスシートを膨らませて証券化商品に投資し、その結果自己資本を大きく毀損したリーマン・ショックとは異なっている。10日の講演後の質疑応答で、「インフレと雇用に関するわれわれの目標達成を困難にするほど金融の状況がひっ迫した場合、われわれがそれに対処する必要が出てくる」と述べたのも、現時点ではリーマン・ショックの時のように「金融の状況がひっ迫」する状況にないと判断していることを示唆したもの。

2つ目は、新興国の株安、通貨安は、QE3の規模縮小というFRBの金融政策とは関係ない、その国の制度自体に問題がある点である。中国には「シャドー・バンキング」という正式ではない金融機関が、ブラジルには社会経済開発銀行(BNDES)という政府が100%出資する正式な銀行が、中央銀行とは別に資金を供給するシステムが存在する。

ブラジル中央銀行は、4月以降3回連続で利上げを実施しインフレを抑え込もうとしているが、BNDESは2013年第1四半期に名目融資総額を前年同期比52%増と大幅に増やしており、中央銀行の利上げの効果が浸透しにくい体制になっている。こうした歪んだ金融制度を持つ新興国の株安、通貨安に配慮してFRBが出口論を考えるとは考え難い。GDP成長率が0.9%(2012年通年)で政策金利が8.5%という異常な状況にある国が株安、通貨安に陥るのは当然で、FRBの金融政策で救えるものではない。

QE3の規模縮小は、ドルを「調達通貨」としたキャリートレードの巻き戻しを生むことは間違いない。しかし、それによって金融システムに重大な影響を及ぼしたり、金融の状況をひっ迫したりしない限り、FRBが新興国の株安、通貨安を理由にQE3の規模縮小を先送りする可能性は低いと思われる。

バーナンキFRB議長の優先事項は、「物・サービス価格」と「不動産価格」のバランスのはずである。ドルを「調達通貨」としたキャリートレードの巻き戻しが進むということは、投資資金が米国に戻るということでもある。米国内に戻る投機資金がどこに向かうのか。バーナンキFRB議長にとってはこちらの方が気になるはずである。

2013年の主要国の株式市場のパフォーマンスは、日本と米国を中心とした先進国と新興国の間歴然たる差が出ている。もともと「順張り」傾向が強い米国の投資家が、史上最高値を更新した株式市場が目の前にあるなか、「逆張り」で新興国に資金が出て行く可能性は高くない。
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