普通の国中国~自ら輝くことの出来る「太陽」ではなく、先進国の輝きがあって輝ける「月」である

「中国景気の減速が鮮明になった。15日発表の4~6月期の実質国内総生産(GDP)の伸び率は前年同期比7.5%と、2四半期連続で伸びが鈍った。外需の伸び悩みで輸出が落ち込み、企業の生産活動が停滞。中国景気の足踏みが世界経済に影響を及ぼすのは必至だ」(16日付日本経済新聞)

世界経済の牽引役を期待されてきた中国経済に陰りが見え始めて来た。中国政府は「適度な成長率の鈍化は構造調整にとって有利だ」との見解を示しているが、中国経済の減速が中国社会の「構造調整」によるものと決め付けるのは早計である。なぜなら、世界経済の「構造変化」によるものである可能性を秘めているからだ。

日本を始め先進国は、先進国に先駆けて世界で最も早く、改定も必要としない正確なGDPを発表する中国に、大きな期待をして来た。それは、中国が13.54億人という、日本(1.27億人)の10倍以上、米国(3.14億人)の4倍以上の規模の人口を抱え、先進国では失われた生産、消費両面で「規模の経済」を追求できる国であったことと、リーマンショック後に4兆元(約62兆円)と、先進国1国の国家予算に相当する大規模な景気対策を打出した国だったからである。

しかし、3月に発足した習近平新指導部が、大量の不良資産を生み出しかねない投資に依存した成長からの脱却を目指すなかでの「外需の伸び悩みで輸出が落ち込み、企業の生産活動が停滞」は、中国が自国だけでは成長できない普通の国であることを示したものでもある。

中国を中心とした新興国の経済成長は、先進国からの生産移転が原動力であった。しかし、生産移転による雇用の拡大を続けるためには、先進国の経済が堅調である必要がある。雇用機会の減少と収入の低下、高齢化に見舞われた先進国は、これまで蓄えて来た貯蓄というストックがあるので、フロー収入の減少が急激な景気悪化を招くことはないが、フロー収入の低下は、お金の流通速度の低下を通して景気を減速させる要因となる。

先進国がストックに頼ることで景気が減速すれば、先進国に「もの」を輸出して成長してきた新興国のフロー収入は低下することになる。先進国と異なり、まだストックが積み上がってない新興国では、フロー収入の減少はそのまま景気減速に結びつく。そして、ストックが薄い分だけ、経済全体の耐力は低い。さらに、労働コストの低減を目的とした先進国からの生産移転は、より労働コストの低い新興国に向かっていき、ストックを蓄積する時間を与えてくれない可能性がある。

結局のところ、ストックの厚い先進国がフロー収入を確保出来なければ、世界経済は発展しない構図になっている。買手である先進国の経済が落ち込んでしまっては、売手が幾ら頑張っても高度成長を続けることは出来ない。経済の規模を決めるのは、売手の生産能力ではなく、買手の有効需要だからだ。

リーマンショック後、一時もて囃された、中国を筆頭とした新興国が先進国の経済状況に関係なく成長を続けるという「デカップリング論」は、「夢物語」に過ぎなかったことが明白になった。世界経済にとって、新興国は自ら輝くことの出来る「太陽」ではなく、先進国の輝きがあって輝ける「月」だったということ。

2013年度の世界の株式市場の動きは、こうした状況を如実に表している。

「中国商務省は17日、今年1~6月の対中直接投資の実行額が前年同期比4.9%増の619億8400万ドル(約6兆1700億円)だったと発表した。1~6月の対中投資額がプラスになるのは2年ぶりだが、伸び率が2桁に達したかつての勢いは戻っていない。中国では景気の減速懸念が根強い。人件費の上昇や人民元高も受けて対中戦略を見直す動きが続いている」

17日、15日のGDPに続いて、中国商務省から、世界の対中直接投資が2年ぶりに前年同期比プラスとなったことが発表された。僅か半月ほどで上半期のこうした統計が出せるところが中国の凄いところ。

「サービス業が12.4%増加。米欧勢が得意とする広告・映画関連や医療サービスの投資が増えた。一方、製造業は2.1%減少した」

対中直接投資の中身は、製造業からサービス業に徐々にシフトして来ている。これは、13億人の中国国民を「安い労働力」として見ているのではなく、「数をさばける市場」として見ていることの証である。しかし、社会全体としてはストックの薄い中国経済で、フロー収入が減少するとしたら、「数をさばける市場」としての魅力を維持出来るのだろうか。

中国を中心としたアジアの成長を取り込むことで成長を取り戻すことを目指す日本。しかし、アジアを成長させるためには、日本経済が堅調であることも重要な要素になることを忘れてはいけない。

【参考記事】
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