「選挙難民」が作り出した「自民党1強時代」~そして「企業重視」の時代が続く

選挙区間の「1票の格差」が最大4.77倍と、最高裁が「違憲状態」とした5.0倍をわずかに下回る状況下で実施された参院選挙。投票率が52.61%と過去3番目の低水準となるなか、自民党が今の選挙制度の下で最も多い獲得議席に並ぶ64議席を得て圧勝という結果となり、国会は「自民党1強時代」に突入した。

過去3番目の低投票率の選挙で「自民党1強時代」を招いた陰の功労者となってしまったのは、日本維新の会。自民、民主とは異なる第3極の柱になることを期待されながら、橋下共同代表自らが敗因としてあげた「トップへの信頼がなかった」ことによって、「その他大勢」の党に陥落してしまった。橋下共同代表以外はほとんど既成政党からの編入者である日本維新の会だけに、橋下代表に対する信頼の低下は致命的であった。

日本維新の会を除く「その他大勢」の党は、元を糺せば自民、民主という既成政党のクラス替えによって誕生した政党であり、所詮「自民でも、民主でもない第3極」の受け皿とはなり得ないもの。既成政党出身者でない橋下共同代表の存在自体が、既成政党政治からの脱却のシンボルであり、有権者が自民でも民主でもない第3極に対する夢を託そうとした大きな要因であったと考えると、今回の低投票率は、託すべき第3極が存在しなくなったことの表れでもある。

橋下共同代表は、今後、自民党に対抗しうる野党勢力の結集を模索しているようだが、信頼を失った橋下共同代表と既成政党出身者によるクラス替えでは、国民が期待する新しい第2極の誕生は難しいと言わざるを得ない。国民の多くは、既成政党出身者のクラス替えによる政界再編成には辟易している。

自民でも民主でもない新しい政治体制を望む有権者の多くが投票先を失い「選挙難民」と化し、投票率の低下によって自民党が圧勝するという構図は、日本の民主主義にとって大きな問題である。国内では民意の取りこぼしを少なくするために「死票」を少なくする選挙制度についての議論はされているが、投票先を失った「選挙難民」の「潜在的死票」の最小化についての議論はなされていない。今回から導入された「ネット選挙」も、「選挙難民」救済には殆ど効果を発揮しなかった。

「選挙難民」を救う一つの方法として考えられるのは、「該当者なし」という投票を認めることである。当選者を、「該当者なし」の投票数を上回った候補者に限定することにすれば、「選挙難民」を減らすことで、選挙結果により多くの民意が反映させることが出来るし、国会で遅々として進まない議員の定数削減法案に依らずに、民意を反映する形で国会議員の数を減らすことが出来る。さらには、安易なタレント候補などを排除することも可能である。選挙結果に民意をより強く反映させるためには、「該当者なし」という投票を認めることで、棄権する以外にない「選挙難民」に選択肢を与えてその数を減らすなど、「異次元の選挙改革」を検討すべき時期に来ているのではないだろうか。

自民党が圧勝したことで、安倍総理は悲願のねじれ解消を達成し、「決められる政治」に必要な環境を得た。今回の自民党圧勝を受けて、安倍総理は「どっしりと腰を据えた政策を力強く前に進める」と、長期政権への強い意欲を示した。

マスコミは、自民党圧勝を受けて、「成長持続へ改革急げ」「首相は逃げずに経済改革断行を」(共に23日付日本経済新聞)といったように、「改革」を進めるべきだという主張を繰り返している。しかし、「安定政権=改革実行可能」と単純に期待出来るものなのだろうか。

自民党圧勝は、裏を返せば、「多くの業界団体の勝利」でもある。要するに、多くの業界団体が今回の自民党圧勝劇の立役者。自民党勝利に貢献したものと、そうでないものが区別しやすい状況であるならばともかく、貢献度に違いがあるにせよ、全員が功労者となると、改革を進めようとすればするほど内部から反発が強まる状況になりかねない。

確かなことは、安倍政権の「企業主導の景気回復」という姿勢が、より強まるということ。日本経済新聞のいう「首相は逃げずに」という主張の聞こえはいいが、実態は消費増税などで増加する国民負担に対する国民の不満を「痛みを伴う改革」という尤もらしい御旗を掲げて無視しろということ。安倍総理はこの先の目標を「全国津々浦々まで実感できる強い経済を取り戻すこと」と述べているが、残念ながら全国津々浦々まで伝わるのは、消費増税、電気代上昇、ガソリン等燃料価格の上昇といった国民負担の方が景気回復の実感より先であることは確実である。これに伴って国民からの不満や、支持率の低下があったとしても、3年間は選挙がないことが政権の見方をするということ。

「衆参のねじれ解消で『決められる政治』の環境が整ったのを受け、約9割が法人税減税を求めたほか、規制緩和の推進に期待する声も目立った」

23日付日本経済新聞は、「経営者『法人税減税を』9割」という見出しで、「参院選緊急アンケート」を実施した結果、企業経営者の9割が法人税減税を求めていることを報じている。日本の法人の7割が法人税を納めていない状況で、「経営者の9割が法人税減税を求めた」というのは、実施したアンケートのサンプルが偏っていることの証左。実態は「日本経済新聞の広告主を中心とした大企業の経営者は…」といったところなのだろう。

「企業主導の景気回復」を目指す安倍政権と、法人税減税を求める自民党圧勝劇の功労者である大企業、そして広告主である大企業と結託して法人税減税と消費増税を煽るマスコミという「3本の輩」。今回の参院選で投票を見送った多くの「選挙難民」や、アベノミクスが「全国津々浦々まで実感できる強い経済を取り戻す」という淡い期待を抱いて自民党に投票した消極的自民党支持者にとって、この「3本の輩」の存在は、この先3年ほどを試練の期間にする要因になるかもしれない。

衆議院で6割を超える議席を持つ自民党が、参議院でも連立を組む公明党とともに過半数を確保したことで、国会的には1990年以前の安定的状況に戻ったと言える。まさに「Japan is back!」。

「Japan is back!(日本は戻った)」 と訴えている安倍総理には、暫く国政選挙がないからといって、政治的安定を背景に、多くの業界団体や一部の大企業を過度に優遇し、「Japan is turning back!(日本は元に戻った)」という状況だけは起こさないようにお願いしたいものである。
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