「景気回復期」の中で、届かなかった実感と、大幅に減少したGDP、大幅に増加した国債発行残高

「政府は2009年4月から始まった日本の景気回復局面が12年4月に終わったと暫定的に認定する検討に入った。正式には8月後半に有識者らの意見を聴いたうえで最終判断する。仮に景気回復のピークである『山』を昨年4月に設定すると、前回の景気回復期間は37カ月と戦後6番目の長さとなる。…(中略)…内閣府は、今回はデータがそろっている『山』だけを暫定的に決める。昨年11月とされる『谷』は、データが集まる今年末から来年にかけて改めて研究会を開いて認定する見通しだ」(10日付日本経済新聞)

戦後確定している景気循環は14回(統計が「後退」から始まっているので「拡張」は13回)で、2009年4月から始まった景気回復局面は、戦後「第15循環」に相当するもの。景気循環の過去平均を見ると、「拡張」は36.2ヵ月、「後退」は15.9ヵ月である。リーマンショック後から始まった「第15循環」の景気回復期間が37か月だったということは、「戦後6番目の長さ」といっても、ほぼ平均並みということ。

問題は、リーマンショック後、「戦後6番目」の長さで景気回復が続いていたという実感を持っている国民がどれほどいるのかというところ。

1997年の消費増税を機に日本はデフレに突入し、安倍政権は「デフレからの脱却」を最大の目標としている。そうしたこともあり、国民の多くは、1997年以降日本経済は「後退」していると感じているはずである。安倍総理が「強い経済を取り戻す」と主張して来ているのも、これまで「弱い経済」であったと認識している証左でもある。

しかし、「景気動向指数研究会」が2012年4月を景気の「山」、2012年11月を景気の「谷」だと認定したとすると、日本経済は、1997年1月から2013年6月までの198ヵ月のうち、実に143ヵ月、72.2%の間、「景気回復期」にあったことにある。ちなみに、2012年4月を景気の「山」、2012年11月を景気の「谷」と認定した場合、景気後退期は7ヵ月ということになり、これは戦後昭和26年6月から10月にかけての4か月に続く、「戦後2番目の短さ」となる。

政府の認定に基づけば、日本は、1997年以降143ヵ月も景気回復期にあった。しかし、その間に日本の名目GDPは、1997年10-12月期の約524兆円から、2013年の4-6月期の約480兆円(予測)まで、金額で約44兆円、率にして▲8.6%も縮小している。さらには、国債の発行残高は、1997年度の約225兆円から、2013年6月末には約830.5兆円と、実に600兆円強増加している。時間的には70%以上好景気であった中で、日本の名目GDPは8%以上も縮小し、国債発行残高が600円超も増加しているということは、「景気動向指数の一致系列DI」をベースに判定される政府の景気判断は当てにならないということである。当てにならない判断に基づいた政策が経済を縮小させ、国債の発行残高を必要以上に膨らませたと言える。

「内閣府が9日発表した7月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は43.6と前月から0.7ポイント低下した。内閣府は『1982年6月から現在までの平均値(42.4)は上回っており、水準としてはまだ高い』とみるが、2カ月連続の悪化を踏まえ基調判断を『改善している』から『改善のテンポが緩やかになっている』に下方修正した」(日経電子版)

2012年11月を「谷」に、景気回復局面に入っていると見られる中で、消費者心理を示す消費者態度指数が2ヶ月連続での低下となった。内閣府は「1982年6月から現在までの平均値(42.4)は上回っており、水準としてはまだ高い」と認識しているようだが、この指数は、一般に50が「良い」「悪い」の一つの目安とされているもの。1982年以降の平均値が42.4だということは、日本の国民はから30年以上も、消費者心理が悪い中での生活を強いられて来たということである。

実際、1997年1月から2013年7月までの199ヵ月で見てみても、景気回復期にあるとされている月数が144ヵ月もあるにも拘わらず、消費者態度指数が「良い」「悪い」の判断目安となる50を超えたのは、2006年2月に50.1を記録した僅か1回である。また、2000年1月から公表されている景気ウォッチャー調査でも、2001年1月から2013年7月までの163ヵ月で、景気判断の目安となる50を超えたのは39回、率にして約24%に留まり、ここに来て50は超えている(7月調査52.3)ものの、4カ月連続で前月比低下を記録している。

「国民に(景気回復の)実感を届ける」と訴えて参院選を大勝した安倍総理には、是非、これまで、景気が回復期にある中でも消費者心理は全く改善されず、国民の景況感は、殆ど「谷」ばかりで「山」が存在しなかったという現実に目を向けて貰いたいものである。景気が回復期にある中で大幅に増加した国債発行を、消費増税で景気を冷やすことで減らすことが出来るのだろうか。

一次的な好転に過ぎない4-6月期の経済指標に基づいた、間違いだらけの政府の景気判断で消費増税を急げば、国民に「景気回復の実感を届ける」という総理の夢は「真夏の世の夢」で終わることになる。
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