消費増税で「財政再建と経済成長」の両立は出来ません~「デフレ脱却」が進んでいない現実と、「動かない企業」を改めて確認したGDP

「消費増税実施の決定打に出来るほどは強くなく、消費増税を見送らなければならないほど弱くはない」

注目された4-6月期のGDPは、事前予想の前期比年率+3~4%を大きく下回る、前期比年率+2.6%という微妙な結果となり、消費増税論議に決着を付けるに至らなかった。

4‐6月期の実質GDPは前期比年率で+2.6%にとどまったものの、「実質家計最終消費支出」が前期比+0.8%となり、個人消費を中心に2四半期連続での成長を記録した。このことを受け、消費増税推進派の受け止めは「消費増税へ良い数字」(甘利経財相)というものであり、13日付日本経済新聞は「消費増税 第1関門越す」という見出しを掲げ、「景気の底堅さが明確になり、来年4月の消費増税に向けた関門を1つ越えた」と、気の早い報道を行っている。

しかし、消費増税推進派の日本経済新聞が気の早い報道を行ったのは、発表されたGDPが消費増税慎重派を増殖させかねない内容であったことの裏返しでもある。成長率自体は事前予想を大きく下回り、設備投資も前期比▲0.1%と6四半期連続で減少し、消費増税を実施できる環境が整っているとはとても言い難い状況である。

今回のGDP統計で改めて確認されたことは、「デフレ脱却」が進んでいないことと、企業の動きが鈍いことである。

今回のGDPは、GDPデフレーターが前期比+0.1%と、3四半期ぶりにプラスとなり、名目成長率が実質成長率を下回るという「名実逆転」が解消し、一見「デフレからの脱却」が進んでいるかのように見えるものであった。しかし、GDPデフレーターを前期比でプラスに引上げたのは「財貨・サービスの輸出」と「財貨・サービスの輸入」で、共に2012年10-12月期から3期連続での上昇(輸出;+2.3%、+5.1%、+1.6%、輸入;+3.1%、+7.1%、+1.1%)、前年同期比で見ても大幅上昇(輸出;+0.8%、+7.3%、+8.9%、輸入;+0.4%、+7.8%、+9.4%)となっており、円安が「名実逆転」の主役となった格好。

一方、今回GDPの牽引役となった「民間最終消費支出」のデフレーターは前期比▲0.2%と2期連続のマイナス、前年同期比では▲0.6%と19期連続のマイナスとなっている。その結果、前年同期比のGDPデフレーターは▲0.3%と、2009年10-12月期以降、15期連続でマイナスとなっており、日本経済は依然として「デフレ脱却」とは言えない状況にある。

さらに、「大胆な金融緩和」による「円安・株高」、そして「資産効果による個人消費の増加」によって「実質家計最終消費支出」が2期連続で0.8%増(前期比プラスは3期連続)を記録するなか、「設備投資計画をみる限りは、相当プラス」(黒田日銀総裁)になっているはずの「民間企業設備(実質)」は6期連続のマイナスとなり、なかなか引火して来ない上、「実質雇用者報酬」も前期比+0.4%と、前期の+0.7%から伸びが低下して来てしまっている。アベノミクスの恩恵を最初に受けたはずの企業は、その恩恵を国民に還元して行くことに消極的なままである。

GDP発表に先立って8日に財務省から発表された「平成25年上半期中国際収支」統計を見ると、「対外直接投資」は「本邦企業による海外子会社の増資引受等」により、5兆4286億円の流出超と、前期の4兆9885億円の流出超から率にして8.8%、金額にして4401億円の増加となっている。この2013年上半期に「対外直接投資」として流出した5兆4286億円という規模は、今回発表された実質GDP525兆8983億円の1.03%に相当するもの。せめてこの半分でも国内投資や雇用者報酬に振り向けられたら、国民もアベノミクスの効果を少しは実感できたかもしれない。

こうした事実から想像されることは、「相当プラス」になっている設備投資計画の多くは、「対外直接投資」に向けられているということ。「大胆な金融緩和」によって大幅に増えた企業収益は、国内に還元されずに「対外直接投資」に流出してしまっている。そうだとしたら、アベノミクスの効果が「雇用者報酬」や「民間設備」に波及して行くという、消費増税派の筋書きに大きな期待は寄せられない。

「安倍晋三首相が法人税の実効税率の引き下げを検討するよう関係府省に指示したことが12日、わかった。日本は企業の実際の負担率である実効税率が主要国より高いため、来年4月から消費増税を決めた場合、引き下げ方針をあわせて打ち出し、景気の腰折れ懸念を払拭する狙いだ。成長戦略として海外投資を呼び込む起爆剤にもなるとみており、財政再建と経済成長の両立をめざす」

こうしたなか、安倍総理は、消費増税を実施した場合の景気腰折れを防ぐために、法人税の実効税率引き下げによって「海外投資を呼び込む」ことを目論んでいるようだ。しかし、「民間最終消費支出」が実質ベースで過去最高の314兆5763億円、名目ベースでリーマンショック直前の水準である293兆5196億円を記録する中でも、国内企業は国内市場に見切りをつけ「対外直接投資」に向かい始めている。

こうした状況下で、法人税の実効税率引下げが「海外投資を呼び込む起爆剤」になり得るのだろうか。

本邦企業が「対外直接投資」に向かうのは、日本市場の成長に限界を感じているからに他ならない。消費増税実施によって国内市場のさらなる縮小が確実視され、日本市場で利益を出すことがより困難になるなか、法人税の実効税率引下げという餌に釣られて海外投資が日本に向かうというのは、非現実的なお話しである。

「海外投資を呼び込む」ためには、まずは市場規模を縮小させないこと、つまり、消費増税が実施されないことが前提となり、そのうえで法人税の実効税率引下げが実施される必要がある。消費増税実施によって魚を遠くへ追いやり、魚がいなくなったところに、法人税の実効税率引下げというエサを垂らしても、釣果は期待出来ない。単純に言えば、消費増税による「財政再建と経済成長の両立」は「絵に描いた餅」でしかないということ。

「昨年の安倍政権発足以来、順調に景気は上がってきていると思う。今後も、経済政策に万全を期していきたい」

今回のGDPの発表を受け、安倍総理のコメントも、「順調に景気は上がって来ている」から消費増税実施に踏み切るのか、「経済政策に万全を期する」ために消費増税を先送りするのか、どちらともとれる極めて微妙なものとなった。「デフレ脱却」を最優先課題として掲げて来た安倍総理には、「二兎追うものは一兎も得ず」という格言を思い出して頂き、まずは「デフレ脱却」に全力を注いでもらいたいものである。
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