誤解される資産運用~「株価の予想」に基づいて運用するのではありません

「株価の予想ほど難しいものはありません。専門家や市場関係者と呼ばれている人たち(証券会社のアナリストやストラテジスト、機関投資家のファンドマネジャーなど)の予想も大半が外れています」

22日の日経電子版に、こうした書き出しで始まる、ベテランの経済ジャーナリストの「株式投資入門 株価予想にむなしい現実  大相場育たぬ時代の心得」というコラムが掲載されました。

長年ファンドマネジャーをして来た筆者にとって「専門家や市場関係者と呼ばれている人たち(証券会社のアナリストやストラテジスト、機関投資家のファンドマネジャーなど)の予想も大半が外れています」という指摘は、いろいろな意味で耳が痛いものでした。

それは、こうした指摘が出てくるということは、日本では資産運用業務に対する「誤解」が根強いことの表れだと言えるからです。

端的に言えば、ファンドマネジャーは「株価予想」を的中させることが仕事ではありませんし、「株価予想」に基づいて運用をしている訳でもありません。

それは、株価が上昇するのには「必然性」はありますが、株価自体には「必要性」がないからです。1989年末に日経平均株価が終値としての最高値である38,916円まで上昇したのは、市場内に株価が上昇する「必然性」があったからで、38,916円という株価に「必要性」があったわけではありません。「必然性」があるなかで、最終的にたまたま38,916円という株価が付いたということです(今回は省略しますが、1990年からの株価の急落にも、「株価が割高になり過ぎた」などという曖昧な要因以外の「必然性」が存在します)。

安倍内閣が誕生してから金融市場は「円安・株高」に転じ、5月22日には今年の高値15,627円を記録しましたが、これも市場が上昇する「必然性」はあったものの、15,627円という株価に「必要性」があったわけではありません。重要なことはその「必然性」をどの程度正確に判断出来るかというところです。これが意外に難しいのは、理屈以外に感情的な切り替えも要求されるからです。最悪なのは「結論ありきの分析」をすること。「株価は上昇する」という結論を正当化するための材料を揃えるということをやり出したら、決められた時間何に期待収益を達成することは困難になり、「長期投資が基本」と言い続けなければならない羽目に陥る可能性が高いと言えます。

「必要性」がないものを正しく予想するというのは、所詮無理な話で、たとえ予想が当たったとしてもそれは偶然でしかありません。「相場で勝ち続けることは出来ない」と言われるのも、株価に「必要性」がないために、株価予想に再現性がないからに他なりません。

そもそも、ファンドマネジャーなどに株価を正しく予想する能力が備わっているのであれば、「分散投資」などする必要はありません。リターンが最も高い銘柄に「集中投資」するのが、最もリターンを高くすることになるわけですから。「分散投資」の重要性が必要以上に(本当に必要以上に)叫ばれるのも、運用担当者に株価を正確に予想する能力がないからに他なりません。

重要な点は、資産運用は、正しく株価を予想出来なくても必要な収益を確保出来る可能性があるということです。例えば、単純に日経平均を買うといっても、現物を買う、ETFを買う、先物を買う、コールオプション(買う権利)を買う、プットオプション(売る権利)を売る、など様々な選択肢があり、それぞれに意味合いが少しずつ違います。そうした違いを理解して、運用する資金のリスク特性などを考慮の上、最も適切であると思われる行動をとることで、適正なリスクで目標収益の達成を目指すのがプロのファンドマネジャーの仕事なのです。

しかし、不幸なことに、ファンドマネジャーや専門家は、どこに行っても、本職を全うするのに必ずしも必要ではない「株価予想」を求められる立場にあります。それは、世の中が資産運用業務を、正確な「株価予想」に基づいて行われているという誤解を抱いているからに他なりません。そして小生の知る限り、必要な収益を確保するための経済・金融市場の分析能力や、収益を確保するための術を持たない専門家達の方が、気軽に「株価予想」や「相場観」を披露する傾向にあります。それは、そうした輩の方が、運用は「株価予想」の正確性に基づいてするものだと誤解しているからです。それがまた、資産運用は「株価予想」に基づいて行われているという誤解を生む要因になっているのは悲しいことです。

資産運用は本来特定の人間の相場観に賭けるギャンブルではありません。客観的な分析に基づく論理的思考の延長線上で、期待される収益を確保して行くことを目指すものです。「貯蓄から投資へ」というスローガンのもと「投資大国」を目指すのであれば、運用担当者も投資家も、資産運用に関する考え方を見直す必要があるように思います。

【追記】
「株価予想」はしないものの、投資効率を上昇させるためには時間軸を含めた市場のリズムや株価水準の目処に関する分析は欠かせません。

日経平均株価の125営業日間の上昇率(チャートはこちらから)は、アベノミクスに対する期待で5月22日には80.1%に達しました。日経平均株価が史上最高値まで上昇した1980年代でも125営業日間の上昇率は最高で49.0%でしたし、史上最高値38,916円を記録した1989年末でも17.1%でしたから、この半年間の株価上昇速度は異常で、だれも株価を予想出来なくても仕方なかったと思います。

8月22日現在では、125営業日間の上昇率は18.2%となっています。ちなみに21日時点では17.1%で、史上最高値を記録した1989年12月末と同水準でした。2000年代に入り、日経平均株価は史上最高値の4分の1の水準まで落ち込みましたが、125営業日間の上昇率は、1980年代を上回る水準を記録したことが何回もあります。それだけ値動きが早く、投資タイミングの違いがパフォーマンスに大きな影響を及ぼしているということです。

また、過去の推移を見てみると、日経平均株価の調整は、125営業日間の上昇率が一旦マイナス水準に落ち込まないと終了しないという傾向があります。仮に、今回もこの法則が成立するとしたら、8月中に11,500円付近まで下落するか、9月の中旬辺りで12,500円前後まで下落する必要があるということになります。はたして歴史は繰り返すでしょうか。
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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