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「消費増税7割が容認」? 歪められて伝えられる世論調査と、「格差」を固定しかねない設備投資の「税額控除」

「消費増税に関しては税率引き上げを容認する声が7割を超えた」(26日付日本経済新聞「本社世論調査~消費増税7割が容認」)

「来年四月に消費税率を8%に引き上げる方針に関し、予定通り実施すべきだとの回答は22.5%にとどまった」(26日付東京新聞「消費増税『予定通り2割』 世論調査 現行維持最多29%」)

「消費増税7割が容認」という日本経済新聞の見出しと、「消費増税『予定通り2割』」という東京新聞の見出しを見たら、普通、日本経済新聞の世論調査の方が、消費増税賛成の割合が多かったという印象を受けると思います。

しかし、記事を読むと、

「消費税率を今の5%から2014年4月に8%、15年10月に10%へ引き上げることについて三択で聞いたところ『予定通り引き上げるべきだ』は17%と前回より6ポイント上昇。『引き上げるべきだが、時期や引き上げ幅は柔軟に考えるべきだ』は3ポイント低下の55%、『引き上げるべきではない』は3%下がり24%だった」(日本経済新聞)

「来年四月に消費税率を8%に引き上げる方針に関し、予定通り実施すべきだとの回答は22.5%にとどまった。現行税率5%の維持を求める回答が29.1%で最も多く、次いで『引き上げ時期の先送り』22.7%、『引き上げ幅の縮小』22.0%となった」(東京新聞)

となっており、設問内容が異なるので直接比較は難しいものの、「予定通り引き上げるべきだ」という回答は、東京新聞(共同通信社世論調査)の方が5%も多いという、印象とは異なる結果になっています。

こうした違いが生じたのは、消費増税推進派である日本経済新聞が「引き上げるべきだが、時期や引き上げ幅は柔軟に考えるべきだ」という質問に対する賛成を「消費増税容認」に分類したのに対して、消費増税慎重派である東京新聞は、「予定通り引き上げ」に対する賛成だけを「消費増税容認」としているからです。

しかし、「時期や引き上げ幅は柔軟に考えるべきだ」という主張をする浜田、本田両内閣官房参与が「慎重派」と言われているときに、「時期や引き上げ幅は柔軟に考えるべきだ」という意見を「消費増税容認」に分類するのはかなり無理筋だと言えます。日本経済新聞は、初めから「時期や引き上げ幅は柔軟に考えるべきだ」という意見を「消費増税容認」に分類できるように、質問の頭に「予定通り引き上げるべきだが」という文言を置いたのかもしれません。もし世論調査結果を都合よく演出できるように、質問の段階からそのような小細工をしたのだとしたら、かなり姑息なやり方だといえます。

「政府は企業の設備投資額の一部を法人税から控除できる制度を拡充する検討に入った。生産性の高い設備を導入した大企業は投資額の3%以上、資本金1億円以下の中小企業は7%以上を控除できるようにする案を軸に与党などと調整に入る。減税により企業の新規投資を促す狙いだ」(26日付日本経済新聞「投資の税額控除 拡充」)

政府が企業に対する設備投資の税額控除を検討していることが報じられています。名目GDPベースでの設備投資約63兆円が全て対象になると仮定すると、3%の税額控除によって、約1.9兆円規模の減税ということになります。法人税の25年度予算額は8.7兆円ですから、21.8%に相当する規模になります。

設備投資の税額控除は一つの有力な選択肢かもしれませんが、気になることは「生産性の高い設備」というところです。「生産性が高い設備」ということは、労働投入量を減らすための投資ともいえますから、設備が導入された後は、企業が同じ生産量を維持するのに必要な人を減らすことが出来るということになります。したがって、企業が「生産性の高い設備」の投資に動いている間は景気浮揚効果が期待できますが、設備導入後は雇用に対して下押し圧力が加わることになり、景気浮揚効果は長続きしない可能性があります。

結果的に雇用を抑制する可能性のある「生産性の高い設備」に対して、最大で2013年度の法人税予算額の21.8%に相当する1.9兆円規模の税額控除を実施するというのは、コストパフォーマンスとして疑問が残ります。税額控除の穴埋めは消費増税で行われることになることは明らかですから、雇用に下押し圧力が高まる中で、雇用者が消費増税を負担することになりかねないからです。

また、全国257万社のうち72.3%が欠損法人で法人税を払っていない状況のなかでの「生産性の高い設備」に対する税額控除は、法人税を納めている利益計上法人の生産性をより高め、法人税を払っていない欠損法人との生産性格差を拡大させ、固定化させる可能性も含んだ政策でもあります。収益格差がすでに存在する中での生産性格差の拡大は、安倍総理の目指す「何度でも、その能力を活かしてチャレンジできる社会」の実現に向けてのハードルを上げることにもなりかねません。

設備投資の税額控除が検討されるのは、アベノミクスが企業を通した景気回復を目指しているからです。しかし、企業がアベノミクスから得た恩恵が個人にまで及ぶかは企業の裁量に委ねられており、今のところ「景気回復は『実感していない』が75%、『実感している』は17%」(日本経済新聞)という世論調査結果にも表れているように、個人まで届いていない状況にあります。

設備投資の税額控除も企業活動にインセンティブを与える有力な選択肢かと思いますが、発想を変えて、企業に雇用を増やし、給与を上げるインセンティブを与えることも検討する時期に来ているのではないでしょうか。例えば、正社員を増やした企業に対して、従業員の給与から徴収する源泉徴収の一部を還付するというのも検討の余地があるように思います。

2011年の給与所得からの源泉徴収額は9兆円強と、同年の法人税収入とほぼ同規模になっています。仮にこの5%を還付したとしても4500億円であり、設備投資の税額控除より少額で済む可能性はあります。さらに、欠損法人にも恩恵が行き渡り、雇用の維持や拡大も期待出来るのではないかと思います。企業が人を雇い、賃金を上昇させれば、法人税を払っていなくても税金の還付が受けられるようになれば、企業にとって雇用増や賃金上昇に対するインセンティブになるはずです。雇用増や賃金上昇によって世の中の有効需要が増えれば、企業の売上も増加し、結果的に企業が設備投資に動くという、一般個人が望む好循環に繋がる可能性もあるのではないでしょうか。

アベノミクス効果で世の中の雰囲気が明るくなったにもかかわらず、個人には「景気回復の実感」が及んでいないのは、需要サイドの個人から、供給サイドの企業へと所得を再分配する政策が中心だったことが原因だと言えます。消費増税も設備投資の税額控除もこの延長線上にある政策ですから、この辺で発想を変えて、供給サイドの企業に「源泉徴収税還付」をすることで、需要サイドの個人に「景気回復の実感」を届け、企業と個人の間に「ウィン・ウィンの関係」を作る政策も検討してみる価値はあるように思います。
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コメント

これからも宜しくお願いいたします

近藤駿介 様

ご丁寧なメッセージをいただき、恐縮です。
有難うございます。
これからも宜しくお願いいたします。


それにしても<日経新聞>は、本当に姑息ですね。
その記事を鵜呑みにしている“かしこい”人たちが多いのも、悩ましいところです。

現在の日本の問題は<デフレ>で、<需要不足>。
それを解決する為には、「所得の増加、雇用の改善」が必要なはずです。
需要が不足しているのに、生産性を高めても問題は解決しませんよね。

『企業にとって雇用増や賃金上昇に対するインセンティブ』
近藤様の仰るとおり、私も“ホワイト企業”(多くの人を雇用し、従業員に払う給料が高くて、離職率の低い企業)を、応援・後押しする政策をとるべきだと、思います。

みさか明様
コメントをありがとうございます。仰る通り、需要不足社会で供給サイドを優遇しても、その効果には限界があると思います。企業に雇用を増やす、給料を引上げるインセンティブを与えることを考える時期に来たような気がします。
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近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

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著書

1989年12月29日、日経平均3万8915円~元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実

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