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「不平等条約締結」を迫られるTPP~ 日本には「国益」を主張する権利も守る権利もない秘密交渉

「今月22日に始まった交渉会合は30日に閉幕し、参加12カ国は『一定の進展があった』と認める共同声明を発表した」(31日付日本経済新聞「5ヵ国、関税全廃を提示」)

共同声明が「一定の進展があった」の一言だったのであれば、外務省のHPに何も掲載されないのも仕方ないことなのかもしれません。それにしても、幾ら「国益」が絡んだ交渉だと言っても、民主国家であるはずの12ヶ国が一堂に会した会合の内容が全く明かされず、「一定の進展があった」の一言で片付けられてしまうというのは異様な光景だといえるのではないでしょうか。

TPP交渉においては「国益」という言葉が頻繁に使われていますが、国内で「国益」とは何かという共通認識が定まっていないなかで、秘密裏に交渉が進展するのは恐ろしいことです。最終的には国会の批准が必要なのですから問題はないという見方もあるのかもしれません。しかし、国際会議で閣僚が「消費増税による財政再建」について勝手に発言しただけで「国際公約」にでっち上げられ、「消費増税を見送ると国際的信用が失われる」と消費増税実施の正当性を裏付ける根拠に利用されてしまう日本では、「秘密交渉会合での妥結」は間違いなく「国際的信用を保つ」というお得意のフレーズとともに、TPP批准を正当化する根拠に仕立て上げられるはずです。

秘密裏に会合が進められ、交渉内容が報じられないにもかかわらず、日本経済新聞は「アジアの新興国と米国の鋭い対立が浮き彫りになった。年内の妥結を目指している以上、両者の溝を早急に埋めなければならない。この難局を打開するために、日本は重要な役割を担っている」(31日付社説「TPP交渉の打開へ日本が知恵を出せ」)と主張しています。交渉内容が秘密にされている中で、何で「日本は重要な役割を担っている」と断言できるのか不思議でなりません。何か隠していることがあるのでしょうか。

「年内の妥結を目指している以上、両者の溝を早急に埋めなければならない」と言いますが、限られた情報からすると、「年内の妥結を目指している」のは米国であって、交渉参加国の総意ではないはずです。さらに、今回の会合から正式に交渉参加を許された日本にとっては、交渉妥結までの時間が短いほど「国益」を主張する機会が減るということですから、「アジアの新興国と米国」の間にある「溝を早急に埋めなければならない」という主張は、日本の「国益」は二の次で、米国に恩を売ることが最優先課題であるかのような印象を与えるものです。

「遅れて交渉に参加した日本は、不利な面が多いが、こじれた対立関係と問題点の所在を客観的に把握できる立場にあるとも言える」(日本経済新聞)

日本経済新聞は「遅れて交渉に参加した日本は、不利な面が多いが」と述べるだけで、具体的にどのような点で不利なのかについては一切触れていません。

この点について、31日付東京新聞は「TPP交渉 合意済み事項覆せず ブルネイ会合閉幕 後発不利政府認める」という見出しで、「鶴岡公二首席交渉官は、先行する国で合意していた条文案を覆すことができないことを認めた」と、具体的に報じています。日本経済新聞はこうした事実を知らなかったのでしょうか。それとも、日本に既に合意済み事項を覆す権利がないのだから、正式に交渉参加国となって今になってそのことを報じても意味はないという判断でこうした点に触れなかったのでしょうか。

「昨年から交渉に参加したカナダとメキシコには、厳しい条件を課す念書が極秘に送られたことが分かっている。この中では、合意済みの事項は覆せず、後から参加した国が交渉を不当に遅らせていると判断した場合に先行国が『交渉をいつでも終わらせることができる』、後発国に交渉を打ち切る権利はない、などとしている。日本政府は同様の念書が送られたのかを明らかにしていない」(同 東京新聞)

仮に日本の置かれた立場が「昨年から交渉に参加したカナダとメキシコ」と同じだとしたら、日本が「国益」を主張することで交渉が長引けば、先行国から交渉を打ち切られ、先行国から日本の「国益」を脅かすような主張が出されたら、日本が妥協するまで延々と交渉を迫られることになります。つまり、日本は「国益」を主張することも、「国益」を守ることも出来ない立場に置かれている可能性があるということです。

日本が、本当にこうした恐ろしく不利な立場に置かれているとしたら、TPPは日本にとって「不平等条約」の締結を強いられる場だということになります。「自由貿易がウィン・ウィン」であるかないかという神学論争以前に、日本がこうした恐ろしく不利な立場に置かれているのか否かについて、政府は明らかにするべきなのではないでしょうか。

民主主義を標榜する12ヶ国が秘密裏の交渉を繰り返し、「不平等条約」締結を強いられる可能性が高いにも拘わらず、根拠も示さずに日本に秘密交渉の早期妥結に向けて重要な役割を果たせと無責任に主張する日本経済新聞。TPP交渉とその報道姿勢は、民主主義もマスコミもかなり制度疲労が進んで来ていることを私達に教えてくれているのかもしれません。

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Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

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著書

1989年12月29日、日経平均3万8915円~元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実

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