オリンピック開催都市決定間近 ~ 安倍総理は「評の漏れ」を抑え「好循環メカニズム」を取り戻せるか

いよいよ2020年オリンピック開催地の決定が明日に迫って来ました。安倍総理もG20を途中退席してブエノスアイレスに乗り込んで来ました。

少し前までは「東京優勢」と報じられておりましたが、ここに来てマドリードの追い上げが急で、かなりの接戦になっているようです。「東京失速」の大きな要因となって来ているのが、言うまでもなく、福島第1原発の汚染水問題です。

もともと、2020年オリンピックの開催地は、候補地である東京、マドリード、イスタンブールがそれぞれに問題を抱えていることから、「消去法」で決定されるといわれていました。そうした中で大規模な反政府デモという内政問題に、シリアの隣国であるという地政学的リスクも加わり、イスタンブールが出遅れ、東京が財政危機を抱えるスペイン・マドリードを一歩リードする形になっていると報道されて来ました。

しかし、ここに来て福島第1原発の汚染水漏れが、「レベル3」(重大な異常事象)に分類される重大事故であることが明らかになり、状況は風雲急を告げているようです。ブエノスアイレスで開かれた東京招致委員会の記者会見での質問も、多くが福島第1原発の汚染水問題に集中することになりました。しかし、福島第一原発の汚染水問題についての質問を繰り返す海外メディアに対して、専門家でない招致委員会は「東京の放射線レベルは世界の他の都市と同じで全く問題ない」と、「東京は安全だ」と繰り返す以外になく、質疑は全くかみ合わっていませんでした。海外メディアの報道を見ていると、噛みあわない質疑は彼らの抱く不安をさらに膨らましてしまったようです。

菅官房長官は、「汚染水問題は、これまで申し上げているように、早期の解決を実現するため、技術や知見を結集して、政府が前面に立って取り組むことを明言している」と述べ、オリンピック招致の大きな障害にはならないという見解を示しています。しかし、「政府が前面に立って取り組む」というのが、470億円の国費を投入するということでは、海外メディアの疑問を晴らすには不十分だといえます。

もし、汚染水漏れ問題が「資金不足」から生じた事故であったのであれば、「国費投入」は有力な解決策になるかもしれません。しかし、「資金」の問題ではなく、「技術」の問題だとしたら、470億円という「国費投入」は必ずしも有効な解決策とはなりません。どんなに「資金」を積んでも、存在しない「技術」は手に入れることは出来ないのですから。

どこから汚染水漏れが生じているのかも未だに特定できていないうえに、汚染水漏れを止める技術も、汚染水を浄化する技術も、地下水の流入を食い止める技術も確立できていない中では、「国費投入」は切り札にはなり得ないのではないでしょうか。

そもそも原発事故発生から約2年半、「国が前面に立って取り組む」ことをせず、東京電力に対応を任せて来たのは、技術的な解決のめどが立たないことから、「国が矢面に立つ」ことを避けてきたからなのではないでしょうか。

筆者は1980代後半まで、建設会社で土木の技術者として都市トンネル(シールドトンネル)工事に従事しておりました。都市トンネル工事は「水」との戦いであるといっても過言ではありません。かなり前のことではありますが、その経験からいえることは、「一度水道(みずみち)が出来てしまうと、水を止めることは出来ない」ということです。それほど「水」は厄介な代物なのです。

放射性物質を完全に浄化できるか否かは、技術的に解決可能な課題かもしれません。また、技術が進歩したことで、通常の地下水であれば、漏れ出て来る水を処理するための選択肢は増えて来ているようです。しかし、技術の進歩を以てしても、地下水が漏れ出すのを防ぐ技術は確立されておりません。技術が進歩した今日でも「汚染水漏れ」と、最も古くからある、最も単純な問題は、解決出来ないとても厄介な問題なのです。

オリンピック開催は7年後ですから、それまでには十分解決出来るという見方もあります。しかし、7年後に日本の原発問題が解決する可能性と、7年後にスペインが経済危機から立ち直っている可能性を比較した場合、原発問題の解決の方が確実だと言える人はほとんどいないのではないでしょうか。

福島第1原発の汚染水問題が深刻さを増すのと時を同じくするように、EUの4-6月期GDPは前期比で増加に転じ(スペインは前期比▲0.1%)、マドリードの最大の弱点であった財政問題が解決の方向に向かう期待が出て来ました。開催地決定を直前に控え、福島第1原発の汚染水問題が悪化する方向に動いたのに対して、景気が底打ちの兆しを見せたことで欧州財政問題の懸念が薄らぐ方向に動いたという「方向感の違い」は、日本にとって大きな逆風となりそうです。

こうした逆風に乗って東京からマドリードに流れ始めたIOC委員の「票の漏れ」を、安倍総理が「前面に立つ」ことで抑え、再び東京招致に向けての「好循環メカニズム」を取り戻すことが出来るのか。半日後に出る結果が楽しみです。
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近藤駿介

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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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