元本を取り崩しているのは誰か?~ 「毎月分配型投信」の分配金に対する「お決まりの誤解」

「分配金を毎月支払う投信のうち、今年に入って額を引き上げた投信は前年の3倍強に達した」(12日付日本経済新聞「投信『配当』引上げ急増」)

「毎月分配型投信」で分配金の引上げが続いていることが報じられています。円安・株高を受けて、運用成績が上がり、それが投資家に還元されているのですから、喜ばしいことです。

黒田日銀は4月から「異次元の金融緩和」と称し、マネタリーベース(≒資金供給量)を大幅に増やす政策を採用し、8月のマネタリーベースは172兆4437億円と、3月比で37兆7024億円増えて来ています。しかし、増加したマネタリーベースの98.0%に相当する36兆9580億円が、日銀の当座預金に還流して来ており、「異次元の金融緩和」でばら撒かれたお金のほとんどは金融システム内に滞留し、娑婆には出回って来ていない格好になっています。ばら撒いた資金が娑婆に流れて行かないのですから、「異次元の金融緩和」は、「安定的物価上昇目標」や「景気回復」には直接的な効果を発揮していないと言える状況にあります(この点については只今プレゼント実施中の拙著「『大胆な金融緩和』を錆びつかせる 誤射だらけの『異次元の金融緩和』」の中で分かりやすく解説していますので、是非お読みください)。

「異次元の金融緩和」によってばら撒かれた資金がほとんど娑婆に出てこないのに対して、円安・株高を受けた運用成績の向上による収益分配は、金融システム外にいる投資家に直接資金を供給することになりますから、有効需要を増やし、「安定的物価上昇目標」や「景気回復」に貢献することになります。

「ただ、多額の分配金を支払う投信の中には、元本の一部を取り崩しているケースもある」(同)

この記事は、「毎月分配型投信」に対する「お決まりの誤解に基づく警告」で締め括られています。長い間運用業務に携わって来た筆者は、運用会社・運用担当者の運用能力にかかわらず、投資信託の会計制度を利用することで毎月決められた分配金を出すことを可能にした「毎月分配型投信」という商品に対して、以前から懐疑的な見解は持っています。しかし、「毎月分配型投信」を可能にしている投資信託の会計制度を勉強もせずに、「元本の一部を取り崩しているケースもある」という批判的なコメントを繰り返すことに対しても、強い疑念を抱いています。

3日付の〝「詭弁」によって生まれ、「誤解」によって批判を浴びる「毎月分配型投資信託」 ~「認知されども理解はされていない」人気商品” という長文記事の中で説明しておりますので、詳細はそちらを見て頂くとして繰り返しはしません。ただ、確認しておきたいことは、投資信託がファンドの「元本」を取り崩して「タコ配」を行っているのではなく、投資家の投資元本(=購入時の基準価額)の水準によっては、投資家が受け取る分配金の一部が、投資家が投資した元本の「一部取り崩し」になってしまうことがあるということです。

「元本の一部取り崩し」という批判は、基準価額が下がっているのに分配金を出すのはおかしい、という考え方に基づいたものだと思います。しかし、それは世の中の一般的な会計制度を無視した批判だともいえるものです。

たとえば、赤字決算企業が配当金を出すことは、普通に行われています。ある調査によると、2012年3月期まで11期連続で配当を実施した1622社のうち、58%にあたる937社が、当期損益(単独決算)が赤字の期でも配当を実施したことがあるということが報告されています。あのトヨタでも、2009年3月期には連結決算が4370億円の赤字に転落しましたが、減額したものの年100円の配当を実施しているのです。つまり、一時的に決算が赤字であっても、会計上の配当原資があれば、配当を実施することは一般的に行われているもので、「毎月分配型投信」だけが特別な怪しい制度によって「タコ足配当」をしているわけではないのです。そしてこの「配当原資/分配原資」は、基本過去の利益の積立ですから、「元本の一部取り崩し」という批判は必ずしも正しいものではありません。

もし、収益が出ていないのに分配金を出すのがおかしいという思想を持っているならば、赤字決算企業が配当金を出すことに対しても批判を浴びせるべきではないでしょうか。少なくとも937社に対して批判を加える機会があったのですから。それをせずに、「毎月分配型投信」の分配金だけを批判の対象にするというのは、筋が通らないような気がします。

日本を代表する経済紙なのであれば、「元本の一部を取り崩しているケースもある」と、誤解を招くような書き方をするのではなく、きちんと投信の会計制度を理解した上で、投資家の個別元本(=購入時の基準価額)の水準によっては、分配金の一部、あるいは全部が、「投資家が投資した元本の一部」から支払われる場合がある、と正確に書くべきだと思います。

日本を代表する経済紙の「投資リテラシー」が低いことも、日本が長年掲げる「貯蓄から投資へ」という動きを阻む大きな理由になっているように思えてなりません。


☆★☆★ 「拙著書籍版プレゼント」14日締切です! ☆★☆★

「これでも消費増税やりますか? ~ 予断を持って議論することなかれ」
「大胆な金融緩和」を錆びつかせる 誤射だらけの「異次元の金融緩和」


の手作り感満載の書籍版(A5、自己製本)を各5名様にプレゼントさせて頂きます。
この機会にお読み頂ければ幸いです。
ご応募の締め切りは9月14日(土)です。ご応募お待ちしております!
詳しくは「近藤駿介 Official Site」をご覧ください。

これでも消費増税やりますか
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

トラックバック

近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

入会キャンペーン 実施中!

メルマガのお知らせ

著書

アラフォー独身崖っぷちOL投資について勉強する

Anotherstage LLC

金融に関する知見を通して皆様の新しいステージ作りを応援

FC2ブログランキング

クリックをお願いします。

FC2カウンター

近藤駿介 facebook

Recommend

お子様から大人まで
町田市成瀬駅徒歩6分のピアノ教室

全記事表示リンク

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

QRコード

QR