「消費増税で財政に余力が生まれる」?~責任を負わない利害関係者による密室議論の限界

「『法人税率の引き下げは、消費税率を上げることによって広がったスペースを利用してできるのではないか』。甘利経財相によると、13日の会議で民間議員の一人がこう発言した。消費増税で財政に余力が生まれるのを機に、法人税を下げて企業活動を後押しする。企業収益を上げて所得増につなげ、デフレからの脱却を目指す」

国民の目が届かないところで、とんでもない議論がされているようです。「消費増税で財政に余力が生まれる」とはどういうことなのでしょうか。

8月に閣議提出された「中長期の経済財政に関する試算」によって、消費税を予定通り10%まで引き上げたうえで、日本経済が実質2%、名目3%超という非現実的な成長を続けたとしても、2020年度の国・地方の基礎的財政収支は、対GDP比▲2.0%程度となり、黒字化目標を達成出来ないことが明らかにされていますから、「消費増税で財政に余力が生まれる」というのは全くおかしな話しですし、その余力を「法人税を下げて企業活動を後押しする」ために使うというのは、納得がいかないものです。

国の財政を立て直すために、消極的に消費増税を容認している国民の多くも、消費増税によって生じる「財政の余力」は「借金の返済」に使われると信じていて、実質的に一部の大企業に対する補助金のように使われるというのは本意ではないのではないでしょうか。

不思議なことは、このような主旨の発言をした経済財政諮問会議の「民間議員の一人」の名前が明らかにされないことです。「経済財政諮問会議における情報の公開等に係る運営細則」では、「審議の内容等の公表において会議での意見の紹介等を行う際は、原則として、発言者の氏名を伏すものとする」と定められているのです。内閣総理大臣から任命を受け、国民を代表して議論しているとも言える専門委員の発言が、非公表でいいのでしょうか。本来国会の場で正々堂々と議論すべき内容を、諮問会議などというありがたい名称を付けた非公開の場で、何の責任ももたない民間議員達が国民の監視が届かないなかで「消費増税容認、法人税率等引下げ」を勝手に議論し政府にお墨付きを与え、既成事実化していく政策決定プロセス姿には疑問を感じてしまいます。

民間議員も、専門委員として国の政策に直接関与する立場に就くのであれば、自らの発言が公開されるリスクを負うべきだと思えてなりません。そうでないと、自らに都合の良い発言ばかりを無責任に繰り返すことが出来てしまうことになりますから。発言者の氏名公開という覚悟を負えないのであれば、たとえ「経済又は財政に関する政策について優れた識見を有する者」であったとしても、専門委員を引き受けるべきではないのではないでしょうか。本当に「経済又は財政に関する政策について優れた識見を有する者」であれば、反論や批判が起きても、論理的説明が出来るはずなのですから。

消費増税の議論は、何時の間にか「法人実効税率の引下げか、投資減税か」など、「消費増税を前提とした景気対策の議論」にすり替えられて来てしまっています。しかし、本当に「成長と財政再建の両立」を目指すならば、「経済又は財政に関する政策について優れた識見を有する者」が優先的に議論するべきことは、消費増税をしないで税収を確保する手段ではないでしょうか。

現状でも消費税の徴収漏れは年間約4000億円に上っています。さらに、輸出総額から計算すると、年間約3.2兆円規模の税金が輸出企業に対して還付されています。こうした事実に基づいて予断を持たずに議論すれば、「歳入庁の設立」や「インボイス制度の導入」、「輸出企業に対する消費税還付制度の見直し」など、消費増税以外の道が検討課題として上がって来て当然なのではないでしょうか。こうした以前から指摘されて来ているようなことが、一つも議論の遡上に上らないというのは、「経済又は財政に関する政策について優れた識見を有する者」の実態が、利害関係者だからに他なりません。それ故に、議論を密室で行う必要があり、議事録で発言者の氏名を伏せなければならないのでしょう。

「成長の強化と雇用創出が最優先課題である」(外務省「G20サンクトペテルブルク・サミット首脳宣言(骨子)」)

東京オリンピック招致決定のニュースの陰に完全に隠れてしまいましたが、9月6日に閉幕したロシアのサンクトペテルブルクで開かれたG20では、「成長の強化と雇用創出が最優先課題」だとされました。「2010年にカナダのトロントで開かれたG20サミットで合意された財政健全化に向けたコミットメントについて、ドイツなどの国が強化を主張していたが、焦点は成長支援に移ったことで、聞き入れられなかった」(9月7日付ロイター)という報道に基づけば、これまで消費増税推進派によって「国際公約」にでっち上げられて来た「消費増税」は、もはや「国際公約」ではなく、むしろ「国際公約違反」といえる状況になって来ているのです。

もう、密室での利害関係者による利権争いは止め、正々堂々と国民の監視の下で議論をするべきではないでしょうか。
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