アブラハム社とともに行政処分勧告を受けた2社も「業務停止命令」を受けるかが要注目

金融庁はアブラハム・プライベートバンク(株)に6ヵ月以内の業務停止命令を出す方向で最終調整に入ったことが、日本経済新聞の電子版で報じられています。「6ヵ月以内」と記されているだけですので、実際にどのくらいの期間になるかは不明ですが、業務停止命令という重い処分を検討しているところに金融庁の本気度が表れているのかもしれません。

マスコミでは、証券取引等監視委員会(以下SESC)がアブラハム社に対する行政処分勧告を出したことが大々的に報じられています。しかし、SESCが、同じ3日付で、IFA JAPAN(株)とK2 Investment(株)に対しても、行政処分勧告を行っていることは、ほとんど報じられておりません。

注目されるのは、両社が行政処分勧告を受けた理由が、アブラハム社と同様「無登録で海外ファンドの募集又は私募の取扱いを行っている状況」という点です。つまり、アブラハム社と残りの2社との行政処分を比較することで、金融庁が今後どのような行為を違法行為として厳しく取り締まって行こうとしているのかが見えて来る可能性があるということです。

アブラハム社は「無登録で海外ファンドの募集又は私募の取扱いを行っている状況」の他に、「誇大広告」と「損失補填的行為・利益供与行為」という2つの違法行為も行政処分勧告の対象となっていますから、他の2社よりも処分が重くなることは確実です。

違法行為とされた「無登録で海外ファンドの募集又は私募の取扱いを行っている状況」においての相違点は、アブラハム社が、海外ファンドの発行者、または海外ファンドの運用会社から受け取る報酬の受領窓口として、取締役が自ら株主となる海外子会社を設立していたのに対して、他の2社は海外子会社は利用していなかった点です。

仮に、アブラハム社以外の2社の行政処分が「業務改善命令」等一段軽い処分に留まる一方、アブラハム社に「業務停止命令」という重い処分が科せられたとしたら、金融庁は「誇大広告」や「損失補填的行為・利益供与」、さらには「無登録で海外ファンドの募集又は私募の取扱いを行っている状況」の中でも、海外運用会社等からの報酬の受け取りを目的とした海外子会社を利用するスキームの違法性、悪質性を重要視しているということになります。

反対に、アブラハム社以外の2社の行政処分も「業務停止命令」という重いものになった場合、金融庁はこれまで実質見逃して来た「無登録で海外ファンドの募集又は私募の取扱いを行っている状況」自体を完全に違法行為とみなしたということになります。

世間の関心は、いろいろな面で注目を集めて来たアブラハム社に対してどのような行政処分が下されるか、という点に集まっているようですが、資産運用業界にとっては、アブラハム社以外の2社に対して「業務停止命令」が出されるのか方が重要となるはずです。もし、アブラハム社以外の2社が「業務停止命令」が出されるようであれば、投資顧問会社は「第一種金融商品取引業者」あるいは「第二種金融商品取引業者海」登録をせずに、海外ファンドを投資対象として顧問契約を獲得して行くことが事実上出来なくなるからです。

昨日も触れましたが、これまで、投資顧問会社による外国投信の「勧誘行為」は、外国投信を直接販売することを目的とするものではなく、投資顧問契約締結を目的に行われていること(外国投信の購入は、結果的には投資顧問契約に基づく業務の一環として行われているという建前があること)により、金融庁は容認していると考えられて来ました。

投資顧問会社が投資顧問契約を獲得しようとする際に、顧客から「投資対象」について説明を求められないことはありません。大手の投資顧問会社や信託銀行であれば、「先進国の株式」とか、「新興国の債券」といった大まかな説明で通用しますが、独立系のブティック型投資顧問会社は大手との差別化出来なければ契約を獲得が難しいですから、より具体的な説明が求められるのは自然の流れです。

そして、こうした過程で、「例えば、このような優秀なファンド」という形で具体的な商品を挙げることは普通に行われているのです。つまり、「海外投信を直接販売することを目的」としているのではなく、「投資顧問契約締結を目的」にするために具体的な商品名を挙げざるを得ない状況にあるのです。「資金使途」が不明確な段階で「増税」という形で資金を集められるのは、「信用力の高い永田町・霞が関」位です。

こうした現実の中で、金融庁が「無登録で海外ファンドの募集又は私募の取扱いを行っている状況」を違法行為と明確にすることは、独立系ブティック型投資顧問会社を排除して行くという意向を持っているということです。

独立系の投資顧問会社、特に「投資助言代理業」登録をする業者は、2006年の規制緩和によって現在の登録制に移行してから、「投資助言・代理業」を中心に大幅に増加しました。
 「投資運用会員数」      2005年3月時点121 ⇒2013年6月時点243
「投資助言・代理会員数」  2005年3月時点 86 ⇒2013年6月時点505
    (日本投資顧問業協会 「統計資料」より)

規制緩和の結果として「投資助言・代理行」を中心に投資顧問業者が増加したことにより、AIJやMRIインターナショナル事件などの、規制緩和の影の部分である不祥事等も散見されるようになりました。しかし、この影の部分を取り除くために、規制を設けることは、「規制緩和による成長戦略」を掲げる安倍政権には採り得ない選択肢です。しかし、「金融商品取引法の厳格な適用」をすれば、これまで目こぼしをして来た「無登録で海外ファンドの募集又は私募の取扱いを行っている」業者、つまり、将来金融市場に悪影響を及ぼしかねない業者を排除することが出来るのです。

今回SESCが金融庁に対して行ったアブラハム社及び2社に対する行政処分の勧告によって、金融庁が、アブラハム社以外の2社に対しても業務停止などの厳しい処分が下るとしたら、それは、今後「無登録で海外ファンドの募集又は私募の取扱いを行っている状況」は認めないという意思を明確に示すことで、将来の危険分子に退場を迫るという意思の表れだと見なすべきだと思います。

金融庁が、こうした「無登録で海外ファンドの募集又は私募の取扱いを行っている」業者に退場を迫る方向へ方針転換するには、厚生年金基金が実質的に廃止されることになったことで、年金市場の混乱を招く可能性が低くなった現状は、いいタイミングだといえます。加えて、悪徳投資顧問会社のカモでもあった厚生年金基金が廃止される方向になったことによって、奴らのターゲットは厚生年季金から個人に移って来ていますから、金融庁は個人投資家がこれ以上カモになる前に、その芽を摘み始めるタイミングとしてもいいタイミングだといえる状況にあるのです。(参考 「何故日本の投資家はかくも簡単に騙されてしまうのか」

アブラハム社以外の2社に対しても「業務停止命令」が出されるのか否か。非常に注目されるところです。

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コメント

業務改善命令といっても、営業停止と金融機関免許を取るように勧告されるに間違いありません

いずれも業者にとっては致命的ですので、客のロストを含めて廃業せざるを得ないでしょう。
その点メイヤーの事例を参考にしても、日本人相手ではもはやビジネスは成り立ちません

他の2社のうち1社は勧告発表後も、オフショアファンドの募集勧誘を続けています
ここまできますと反社会的な業者であり、業界全体が社会悪ということになります

日本人相手にへんなものを売る商売はやめてほしいです

Re: タイトルなし

おもうこと様
コメントをありがとうございます。仰る通りで、廃業への道を辿ることになりそうですね。零細投資顧問会社にとって処分の重さよりも、行政処分を受けたという事実が致命傷になりやすいですから。
一部の心無い「カネの亡者」達が問題を起こすことで業界に対する信頼が失墜し、真面目に運用されている運用業者が足を引っ張られる状況を何とか改善したいものです。

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近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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