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「故意」か、「過失」か、はたまた「素人」なのか~日経が報じる「配当収入増による個人消費刺激期待」

「上場企業が2013年4~9月期に稼いだ利益のうち、株主に『中間配当』として配分する額が5年ぶりに過去最高になる見通しだ。業績回復への手応えがより確かになり、株主配分に前向きな企業が増えている。証券優遇税制が年末で終わるのを前に、配当を増やす動きもある。配当収入で家計が潤い、個人消費への刺激も期待できそうだ」(7日付日本経済新聞 「中間配当5年ぶり最高」)

業績回復によって増配する企業が増えているようです。これはこれで結構なことではあります。しかし、「配当収入で家計が潤い、個人消費への刺激も期待できそうだ」というのは、あまりに政府や財界をヨイショし過ぎで、気持ち悪くなってしまいそうです。

日本経済新聞としては、これまでのアベノミクスの効果で改善して来た企業収益の個人への還元が始まるかのような印象を植え付けることで、消費増税による景気腰折れ懸念が低いということと、企業収益回復を優先する安倍政権の経済対策の正当性をアピールすることを目論んでいるようです。

「3月決算企業の4~9月期の配当総額は(電力などを除き比較可能な2271社)は、前年同期より2割増え約2兆9100億円になりそうだ」

この記事は、このように伝えています。では、中間配当金の総額約2兆9100億円のうち、個人投資家の懐に回って来るのでしょうか。

「2012年度の株式保有比率」によると、単元株ベースでの「個人・その他」の保有比率は26.2%(前年度比▲3.3%)となっています。その他、「外国法人等」は28.0%(同+1.2%)、「金融機関(除く投信、年金)」は24.3%(同+1.2%)、「事業法人等」は23.3%(同+0.8%)となっています。

この統計に基づいて計算すると、「個人・その他」が受取る配当金は凡そ7624億円ということになります。これに対して「外国法人等」には、計算上8148億円の中間配当が支払われることになります。つまり、「海外の成長を取り込む」ことで稼いだ日本企業の収益は、「個人・その他」よりも「外国法人等」に多く渡る状況になって来ています。

そして、「金融機関(除く投信、年金)」は約7071億円、「事業法人等」は約6780億円の配当金を受け取る計算になります。つまり、全体像としてみると、中間配当金の半分弱の約1兆3851億円、「個人・その他」に渡される配当金の倍近い金額が、財界の仲間内で回流するような構図になっているのです。財界は、収益拡大を国内の設備投資や賃金上昇に振り向ける意思は低いですから、大袈裟に言えば、中間配当の半分近くが国内の景気浮揚に貢献しない形で使われるということになります。

さらには、「業績回復への手応えがより確かになり、株主配分に前向きな企業」が増えているということは、「役員賞与金」の増額にも前向きな企業はそれ以上に増えているということです。

「上場企業の中間配当総額は、消費税を1%増税した際の税収(約2.7兆円)に匹敵する。…(中略)…日本でも『個人が配当総額分を消費に回せば、景気を押し上げる好循環につながる』という指摘も出ている」

日本経済新聞のこの記事は、「中間配当総額が消費税を1%増税した際の税収に匹敵する」と報じています。これ自体は事実かもしれませんが、この記事の真の目的が、3%増税分の1%が還元され、マクロ的には消費増幅が2%となるのと等しいかのような印象を与えようとしているところにあることは疑う余地はありません。しかし、これは読者に誤った印象を抱かせるための、とんでもないトリックです。

消費税を1%引上げることによる税収増を、日本経済新聞は約2.7兆円だとしています。この規模と中間配当総額とがほぼ同じだから、マクロ的に消費税が1%軽減されるのと同じ効果があるということを主張したいのでしょうが、騙されてはいけません。

中間配当が増やされることによって増加する国民の所得は、2兆9100億円ではありません。中間配当総額は「前年同期より2割増え約2兆9100億円」になったのですから、昨年の中間配当増額は2兆4300億円だったということになります。従って、今年度の中間配当の増加によって増える国民の所得は2兆9100億円ではなく、4800億円(=2兆9100億円-2兆4300億円)でしかないのです。消費増税の税収規模と比較するのであれば、この4800億円と、消費増税によって増加する約2.7兆円の国民負担とを比較するべきなのです。

計算すると、今回5年ぶりに最高額になる中間配当による消費税軽減効果は、僅か0.18%分という結果になります。実際には4800億円のうち1166億円は「外国法人等」に渡るわけですから、国内投資家に対する消費税軽減効果は、消費税0.13%相当分しかないということです。さらに「個人・その他」が受取る配当増加額は1258億円程度ですから、消費税に換算すると0.05%分の税収に相当する規模にしかなりません。

日本経済新聞は、なぜ、消費税に換算すると僅か0.05%分に相当するに過ぎない個人消費へのプラス効果を、わざわざ「消費税を1%増税した際の税収(約2.7兆円)に匹敵する」という、読者に誤った印象を与える報じ方をしたのでしょうか。もし「故意」だとしたら悪質な表現だと思いますし、「過失」だとしたら文章力か編集能力が欠けていることになります。

それとも、消費税収に換算して僅か0.05%にしかならなくても、日本経済新聞や記事内に登場する専門家は「個人が配当総額分を消費に回せば、景気を押し上げる好循環につながる」というのでしょうか。もしそうだとしたら、「経済の専門家」という看板を下ろさなくてはなりません。

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タイトル:近藤駿介 金融経済探考「天馬行空」
 第1号 :アベノミクス崩壊への槌音

消費増税の影響に関して巷では、GDPがどうなるこうなるという分析ばかりがなされています。しかし、アベノミクスは「円安・株高」という金融現象によって景気回復期待を醸成し、気分的高揚によって消費を拡大させようという政策ですから、金融市場への影響を無視してGDP云々を議論しても片手落ちになると思っています。

マーケット感覚からすると、安倍総理による消費増税決定は最悪の選択だと思っています。それは、今回の消費増税が、アベノミクスの要諦を否定することになったからです。

経済の専門家の間からは日銀の追加緩和期待も出て来ていますが、金融政策が効果を発揮する可能性は極めて低いと思います。小生の個人的評価では史上最低レベルの日銀総裁である黒田日銀総裁は火に油を注ぐような対応しか出来ないのではないかと勝手に想像しています。

小生は、安倍総理が消費増税に踏み切った一つの要因は、安倍総理自身がアベノミクスを理解していなかったところにあると考えています。こうしたマーケット感覚からのまとめていますので、ご興味のある方は、是非ご一読ください。
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近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

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著書

1989年12月29日、日経平均3万8915円~元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実

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