犬が人に噛みついてもニュースにならないが、連合がベアを要求すると一面記事になる

「定昇・賃金カーブ維持相当分(約2%)の確保はもとより、賃上げ1%以上(過年度物価上昇+α)に加えて、格差是正分(配分のゆがみの是正・1%を目安)を積極的に求めるものとする」(連合「2014春季生活闘争 基本構想について」)

25日付の日経の一面で連合が5年ぶりに「2014年の春季労使交渉で全組合員の基本給を一律で1%以上引上げるベースアップ(ベア)も実施を求めると決めた」ことが報じられています。労組がベアを要求するという当然のことが1面を飾るところに日本の労働環境の深刻さが表れているようです。

「賃金水準が低い中小企業の労組には、さらに『格差是正分』として1%程度の上乗せを提案した。同一人物で合計3~4%以上の賃上げ要求となる」(時事通信)ようです。仮に、要求通り「実際の賃金上昇率」が「3~4%以上」となれば、1992年の+3.4%以来の高い賃金上昇率(連合調べ:以下同様)ということになります。ちなみに、前回消費税率が3%から5%に、2%引上げられた時の「実際の賃金上昇率」は、97年+0.3%、98年▲0.3%でした。

しかし、連合の要求通り「定期昇給2%+ベア1%=3%」の賃金上昇が実施されたとしても、国民の生活が楽になるわけではなりません。2014年度の消費者物価上昇率の政府見通しは前年比+3.3%(10月1日開催 経済諮問委員会 配布資料)ですから、消費者物価上昇率が政府見通し通りなら、例え春闘で満額回答が得られたとしても、雇用者の実質賃金は減少(賃金上昇3%<政府物価上昇見通し3.3%)することになります。

連合が「2%の定期昇給+ベア1%=3%の賃金上昇」を掲げるのは、政府と日銀が「消費増税の影響を除いた物価上昇率2%」というフレーズを繰り返すことで国民に植え付けた、「物価上昇率は2%」という錯覚に働きかけているからかもしれません。多くの国民が消費者物価の上昇率を「2%」と思い込んでいれば、「2%」を上回る賃金上昇を要求するで、実質賃金が上昇し、雇用者の生活が楽になるかのような印象を与えられるからです。

しかし、安倍政権と日銀が掲げる「2%の物価安定目標」は、「消費増税の影響を除いた物価上昇率」です。従って、「異次元の金融緩和」が掲げる「誤った目標」が達成されるとしたら、「消費増税の影響を加味した物価上昇率」は「2%」よりずっと高くなるはずです。政府がこっそりと示している「2014年の消費者物価上昇率前年比+3.3%」というのは、「消費増税の影響を加味した物価上昇率」で、「大胆な金融緩和」で謳っている「2%の物価安定目標」よりも1%以上高いのです。

政府は「消費増税の影響を加味した物価上昇率」を「+3.3%」としていますが、この水準でおさまる保証はありません。何しろ政府は「消費税転嫁対策特別措置法」を制定し、「転嫁対策調査官(転嫁Gメン)」まで導入して消費増税分を物価に転嫁しようとしているわけですから、消費増税の影響分だけで消費者物価が3%近く上昇しても不思議ではない状況にあります。つまり、連合が今回5年ぶりに掲げた統一要求「定期昇給2%+ベア1%=3%の賃金上昇」が実現できたとしても、「転嫁Gメン」導入効果が発揮されず、実際の物価上昇率が政府の見通しに届かない状況にならなければ、実質賃金が上がらないのです。

単純比較は出来ませんが、前回消費税率が3%から5%へと、2%引上げられた1997年度の消費者物価指数の対前年度上昇率は、「転嫁Gメン」なしで+2.07%でした。

連合は労働者の代表と言いながら、労働者に大きな負担を強いる消費増税に賛成して来ました。今回の統一要求はその罪滅ぼしなのかもしれませんが、実質的雇用者報酬を引下げる範囲の賃上げしか要求しないのでは、連合のアリバイ作りだという誹りを受けても仕方ありません。連合が統一要求を掲げるという当たり前のことが一面記事になる一方、その要求内容が実質的雇用者報酬を引上げるものではないことが全く報じられないというところに、違和感を覚えずにはいられません。

「連合 ベア1%以上」という記事は、結局は労組の弱体化を印象付けるものでしかありませんでした。


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