高齢者向け金融商品販売監督強化 ~ 何故「年齢制限」が設けられるのか

「金融庁は高齢者向け金融商品販売の監督を強化する。仕組みが複雑な商品の販売に一定の制限をかける業界の自主規制規則を守るように金融機関に求める。高齢者向けで広がっている販売トラブルを減らす考え」(2日付日本経済新聞「高齢者向け、監督強化」)

金融庁は高齢者向け金融商品販売の監督を強化するようです。具体的には12月16日から適用される「75歳以上の高齢者に仕組みの複雑な金融商品を販売する際、支店の課長など役職者が事前に承認するよう義務付ける」という日本証券業協会の自主規制を踏まえた社内ルールの整備を各社に促すというものです。

まあ、如何にも日本らしい対策という感じでしょうか。

興味深いのは、何故「75歳以上」という年齢制限を設けたのかという点です。年齢制限を設けたのは日本証券業協会ですが、金融庁は「高齢者への勧誘」に関して特に留意を促した理由として、「高齢顧客は、過去の投資経験が十分であったとしても、身体的な衰えに加え、短期的に投資判断能力が変化する場合もある」としています。しかし、「身体的な衰えに加え、短期的に投資判断能力が変化する場合もある」ことが理由なのであれば、「仕組が単純な金融商品」に対する投資判断能力も低下しているはずなのですから「仕組の複雑な金融商品」に限定するというのはおかしな判断ではないでしょうか。

また、経済のグローバル化や金融工学の発達に伴い「仕組の複雑な金融商品」は増え続けています。つまり、「過去の投資経験」では判断することが難しい商品が増えているわけですから、「過去の投資経験」と「適切な投資判断」が必ずしも一致する保証はないのです。この点に関しては、「高齢者」と「販売業者」の間にも、ほとんど差はないのです。

「仕組の複雑な金融商品」の販売の適正化が目的ならば、年齢制限など設けることはナンセンスとなってしまいます。中途半端な年齢制限を設けたことで、「74歳以下」ならば投資家が理解し切れない金融商品を販売しても問題ないということになってしまいかねないからです。

金融商品の販売における「適合性の原則*」が年齢に関係なく存在していることが大前提なのでしょうが、そうであれば「適合性の原則」の監督強化に努めればいいわけで、「75歳以上」などという年齢制限など設ける必要はありません。

※適合性の原則 : 顧客の知識、経験、財産の状況、金融商品取引契約を締結する目的に照らして、不適当な勧誘を行ってはならないという規制

こうした年齢制限が設けられるのは、「仕組の複雑な金融商品」を説明できる販売員がほとんどいないという「悲しい現実」があるからです。それは「仕組の複雑な金融商品」を理解するためには、デリバティブの知識や法律の知識が不可欠だからです。「相場」は誰にでも簡単に語れますが、デリバティブや法律関係のことは「知識」がなければ適正な説明は出来ません。「仕組の複雑な金融商品」の説明はまともに出来る販売員はいない、だから年齢制限を設けて如何にも適正な販売業務を行っているという体裁を整えなければならないというのが現実のような気がします。

「貯蓄から投資へ」というスローガンのもとに、「投資教育」という名称で「相場教育」を繰り返している日本。日本社会にはびこる、このような「投資=相場」という固定観念から変えて行かない限り、「仕組の複雑な金融商品」の販売に纏わる問題が無くなることは期待できそうにありません。


【参考】 何故日本の投資家はかくも簡単に騙されてしまうのか (近藤駿介 著  Kindle版、A5冊子版)

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