国会改革 ~ 首相、国会議員、有権者。それぞれの立場からの「国会軽視」

「自民党の石破茂幹事長は10月21日の衆院予算委員会で、国会運営のあり方に疑問を投げかけた。例示したのは民間有識者が調べた主要国の比較データだ。日本の首相の2011年の国会出席日数は127日。時期がやや異なるものの、同じく議院内閣制の英国は38日、ドイツは11日。石破氏が『今日も全閣僚がご出席だ。答弁が1回もないけれどもずーっと座っている』 と言及すると閣僚席は笑いに包まれた」(3日付日本経済新聞 「風見鶏 国会軽視という呪縛」)

与党は、首相の委員会出席を減らす代わりに党首討論を充実し、閣僚の不在時は副大臣の答弁を認めることを柱とした「国会改革」を求めています。

首相の国会出席日数が「国会軽視、国会重視」を測るのに適切な指標であるかに関してはいろいろな意見があろうかと思いますが、「一国の首相、閣僚は国家運営に専念できる体制をしっかり作らないといけない」(菅義偉官房長官)という考え方はご尤もなことで、多くの国民が賛成することではないかと思います。

気に掛かるのは、「国会軽視、国会重視」という問題が、「行政府の長である首相からみて」という視点で論じられ過ぎている点です。本来求められる「国会改革」とは、首相の国会出席日数を減らして外交等に充てる時間を増やすことだけではなく、国会審議の質を上げて行くことも重要なポイントのはずです。

「立法府には行政をチェックする重要な役割があり、審議を効率化すればよいというわけではない」(日本経済新聞)

国会及び国会議員が「行政に対するチェック機能」を発揮するためには、行政府と同等の知識と情報を身に付けることが必要不可欠です。国会議員一人一人の能力が低ければ、「行政に対するチェック機能」も、本来の「立法機能」も発揮することなど期待できません。

「首相動静」は、先日小池百合子自民党広報本部長が「国民の知る権利の範囲を超えている」と発言視したように、新聞で詳細に知ることができます。一方、「国会議員の動静」は、議員個人のFacebook などを通してでないと知ることは出来ません。議員のFacebookから伝わって来る、この連休中の「国会議員の動静」は、「今日から三連休! 各地で開催されているイベントは大盛会!!」「今日は地域運動会が各地で開催されています」「懐かしのパン食い競争」等々、地元のイベントを駆け回っている姿です。

国政に携わるためには選挙で当選しなくてはなりませんから、各議員にとって地元活動が極めて重要なものであることは十分理解出来ます。しかし、各議員達は一体いつ、どの位「行政に対するチェック機能」や「立法機能」を果たすために必要な情報収集・分析に時間を割けているのでしょうか。もし、こうした国会議員としての本来の責務に時間を割けていないとしたら、それは国会議員として「国会軽視」だという誹りを受けても仕方がないかもしれません。

首相が国会出席に縛られて外交等の重要事項に割く時間が乏しいという指摘は繰り返しなされていますが、国会議員が「行政に対するチェック機能」や「立法機能」を果たすために必要な情報収集・分析に十分な時間を振り向けられていない現実にはついてはほとんど指摘もされていないのが現実です。

先日、教育再生会議は、大学受験の選抜基準を「知識偏重から意欲や適性も含めた多面的な人物評価」に変更して行く「大胆な大学入試改革」を提言しました。個人的にはこの提言は全く的外れなものだと思っていますが、「政策立案能力よりも地元活動に対する意欲」によって多くの国会議員が選ばれていく今の日本の国政選挙は、今回の教育再生会議の提言を先取りするような形になっているように思えてなりません。そして、その選抜方法の結果、「グローバルで活躍できる政治家」も「イノベーションを起こせる政治家」も排出出来ていないことは周知の事実です。

【参考記事】 教育再生会議が提言する、誤った「大胆な大学入試改革」~ 「偏差値エリート」が考える「イノベーションを起こせる人材育成」 

そろそろ有権者達も、国会議員の選抜基準を「地元回りする意欲」よりも「政策立案能力」に切り替えて行く必要があるように思います。有権者が「政策立案能力」よりも「地元回りをする意欲」を重視した投票行動をすることは、間接的な「国会軽視」だといえるものだと思います。

首相が国会出席に縛られることなく国益のために外交活動等に時間を割けるようにするだけでなく、国会議員が政策立案能力を高めるために必要な情報収集・分析する時間を確保するために地元回りに時間を割かなくても済むような「国会改革」を議論するべきであるように思います。小選挙区制という制度が、国会議員に国会と地元の往復を迫り、「政策立案能力」向上に必要な時間を奪っているのだとしたら、それは国会議員の「行政に対するチェック機能」を弱めて行く「現代版参勤交代」のようなものですから、選挙制度から再検討する必要があるのかもしれません。

日経の記事では「10月23日、参院予算委員会の7時間に及ぶ審議を終えた閣僚は、付けた歩数計が120歩しか進んでないと嘆いた」というエピソードが紹介されています。一方、連休という、政策立案能力を上げるための貴重な時間を地元活動に振り向けた国会議員達。彼らの歩数計はどの位を指したのでしょうか。彼らの歩数計の示す数字と彼らの政策立案能力が反比例していないことを願うばかりです。

【参考記事】国会改革 ~「首相や閣僚が政府の仕事に専念できるようにする」だけでは「政府と国会の議論の質」は上昇しない


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