FC2ブログ

新指数「JPX日経インデックス400」誕生 ~「古い思考によって生み出された新しい指数」の未来

「日本経済新聞社と、日本取引所グループ、東京証券取引所は6日、共同で新しい株価指数『JPX日経インデックス400』を開発したと発表した。資本の有効活用を示す自己資本利益率(ROE)などを使って投資魅力の高い400銘柄を選定する。株式市場のけん引役となるような企業で構成し、国内外の投資家が活用する株式運用の指標になることをめざす」(7日付日本経済新聞 「新株価指数 来年1月から」)

日本経済新聞と東京証券取引所が「JPX日経インデックス400」という新しい株価指数を発表しました。ポイントは「ROEなどを使って投資魅力の高い400銘柄を選定」したところです。これによって「国内外の投資家が活用する株式運用の指標になることをめざす」としていますが、正直「前途多難」といえそうです。

「パッシブ運用のベンチマーク
各運用機関は、パッシブ運用のベンチマークについて、東証1部上場全銘柄を対象とするTOPIX を忠実にトラックしている場合が多いが、その対象先の中には、十分な収益性等が認められない先も含まれることから、インデックスからの乖離を許容したり、より効率的な運用が可能となる指数(例えば、東証が検討中のROE も考慮した新たな株価指数等)を利用したりするなどの改善策について検討すべきではないか」(2013年9月 公的・準公的資金の運用・リスク管理等の高度化等に関する有識者会議 「中間論点整理」)

公的年金の運用に関する有識者会議で、「ROEも考慮した可惜な株価指数等」への投資が議論されており、ある意味「JPX日経インデックス400」の登場は出来レースですから、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は新指数に連動した運用を開始することになるのだと思います。しかし、その他の投資家が、新指数をベンチマーク(指標)に使う可能性はかなり低そうです。

【参考記事】 高ROE銘柄への投資が「経営の緊張感を与える」?~現実を知らない有識者達の思考の限界

有識者会議は、ROEを考慮した新指数をベンチマークにすれば「より効率的な運用が可能になる」と考えているようです。確かに、東証が発表した資料によると、2006年8月末を基準とした場合、新指数「JPX日経400」の「対TOPIX累積超過リターン」は、2013年8月末までの7年間で6%強になっているようです。

新株価指数「JPX日経400」

過去7年間での「6%強の超過収益」が「効率的運用」を表すと言えるのかは定かではありません。ただ、日経平均株価の「対TOPIX累積超過リターン」は、同期間で「+15.28%(分配金含まず)」ですから、「効率的運用」という観点からは、日経平均株価が、新指数「JPX日経400」を上回っていたことは確かなようです。ちなみに、同期間のTOPIXのボラティリティ(リスク)は25.0%、日経平均株価は27.2%ですから、1リスク当りのリターンという点からは、日経平均株価がTOPIXを上回っていたといえる状況です。

新指数「JPX日経400」の発表に際して残念だったことは、新指数の時系列データが公表されていないことです。時系列データを公表しないというのは、新指数「JPX日経400」の分析をして貰いたくないということなのかもしれません。公表された資料「過年度遡求グラフ等」のなかで、「JPX日経400」とTOPIXのリターンの比較表が載せてありますが、新指数「JPX日経400」の実力を見え難くする意図があったのか、月次リターンを年換算するという、通常パフォーマンス比較には使用しない手の込んだ計算結果を採用しています。

市場は基本的に「予想・見込み」で動きますから、どんな理論的にまっとうな指標を基準にしても、所詮「結果・後追い」に基づくスクリーニングになりますから、シミュレーション結果が期待通りになるとは限らないのは当然のことです。東証が公表した資料からは、それでも、ROEを基準とした投資の「効率性」が高いことを示さなければならないという、苦しさが透けて見えるようです。

極論してしまうと、パッシブ運用であるなら、ベンチマークを何にしてもそれほど大きな違いはありません。例えば、2006年8月末から2013年8月末までの期間、TOPIと日経平均株価の相関係数は97.06%であり、ほとんど「同じような動き」をしています。また、海外の投資家が日本株運用のベンチマークに使用するMSCI JAPNとTOPIXの相関係数は99.70%です。つまり、どの指数をベンチマークにしても、結果は大同小異になる運命にあるのです。

日経平均株価は225銘柄の単純平均株価に基づいた株価指数であるのに対して、TOPIXは上場1757銘柄の時価総額ベースの株価指数であり、銘柄数も算出方法も全く異なります。それでも、両指数の相関係数は97.06%と、極めて高いものになっているのです。新指数「JPX日経400」の時系列データが公表されていませんから、TOPIXとの相関係数を計算することは出来ませんが、同じ時価総額ベースの指数ですから、日経平均株価と同等かそれ以上である可能性は高いと思います。

現実としては、有識者達が望む「投資効率」を求めるのであれば、インデックス運用のベンチマークをTOPIXから日経平均株価に変更すればよかっただけということになります。ROEという美しい指標に基づいて投資すると「投資効率が上がる」いう有識者達の夢物語にお付き合いする形で、東証も日本経済新聞社も多大な労力と、コストを掛けたものだと感心するばかりです。

相関係数が95%以上もあるような株価指数を幾つも揃える意味は何処にあるのでしょうか。日本に足りないのは「投資効率の高い株価指数」ではありません。ROEなどの指標に基づいて投資すれば「投資効率が上がる」という「非現実的な古い思考」が蔓延っていることこそが問題なのです。「古い思考によって生み出された新しい指数」の未来は「前途多難」としか言いようがありません。

<東証発表資料>
東証 JPX日経インデックス400
東証 過年度遡求グラフ等

スポンサーサイト



コメント

非公開コメント

近藤駿介

プロフィール

Author:近藤駿介
ブログをご覧いただきありがとうございます。
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

近藤駿介 実践!マーケット・エコノミー道場

入会キャンペーン 実施中!

著書

1989年12月29日、日経平均3万8915円~元野村投信のファンドマネージャーが明かすバブル崩壊の真実

近藤駿介 Official Site

各種お知らせ等はこちらから

FC2ブログランキング

クリックをお願いします。

FC2カウンター

近藤駿介 facebook

Recommend

お子様から大人まで
町田市成瀬駅徒歩6分のピアノ教室

全記事表示リンク

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

検索フォーム

QRコード

QR