ECB利下げ&雇用統計大幅改善 ~ 変化を見せる欧米、変化の可能性が乏しくなった日本

先週の金融市場は、欧米でのサプライズに揺れた格好となりました。

ECBは7日の理事会で、予想外に政策金利を0.25%引下げ、0.25%にしたのに続き、翌8日に発表された米国10月雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月比20万4000人増となり、市場の事前予想12万5000人を大きく上回りました。非農業部門雇用者数は8、9月分も上方修正され、僅か2週間ほど前の10月22日に発表された9月の雇用統計で平均14万3000人だった過去3カ月間の雇用の伸びは、平均20万2000人弱と大幅に改善、雇用状況の景色が一変してしまった感じになりました。

政府機能の一時閉鎖の影響はマイナスに作用する出来事ですから、弱い経済指標は実体経済をより悪く見せている可能性がありますが、強い指標は実体経済が市場予想よりかなり強い可能性を秘めているということになります。市場予想より強い可能性があるということは、それだけ米国の金融緩和規模縮小(Tapering)が始まる可能性が高まったということになります。

こうしたことを受けて週末の米国10年債利回りは0.145%上昇の2.751%となりました。一方米国株式市場はTapering前倒し観測の高まりにもかかわらず167ドル高の15,761.78ドルと、またも史上最高値更新となりました。

今後注目されるのは、FRBが市場予想を大きく上回った雇用統計が、政府機能一時閉鎖の影響によってどのくらい歪められていると判断するかということです。

予想外に強かった雇用統計の陰に隠れた格好になってしまいましたが、米商務省が8日に発表したFRBがインフレ指標として重要視している9月の個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比わずか0.9%の伸びにとどまり、8月の同1.1%上昇からさらに減速するとともに、FRBが目標とする2%を大きく下回りました。

雇用と物価の両方に対する責務を負っているFRBにとって、予想以上に強かった雇用と、期待外れだった物価という組み合わせは悩ましい組合せだったといえそうです。

しかし、個人的にはFRBはTaperingを前倒しする可能性が高いのではないかと考えています。それは、
  1. 5月にバーナンキFRB議長がTaperingに言及して以降、バーナンキFRB議長は「Taperingは金融引締めを意味しない」というメッセージを市場に発して来たこと
  2. バーナンキFRB議長の後任にイエレン現FRB副議長がほぼ決定したこと
  3. バーナンキFRB議長が9月にTaperingを見送った理由として挙げた「経済がわれわれの一般的な見通しに一致しているか確認できる証拠を得るため、もう少し待つ」の「確認できる証拠」の一つが得られたこと
  4. FRBが市場で購入している債券の加重平均残存年数が10年を超えて来ていることに加え、FRBに積み上げられた準備預金残高は必要準備預金残高の20倍近くに達して来ており、金融緩和の継続もFRBにとってリスクになりつつあること
  5. 選挙結果に、共和党ティーパーティーに対する風当たりが強いことが示され、共和党内での穏健派の発言力が高まり、財政が人質にとられる可能性が低下したこと
などからです。

 【参考記事】 FRBは何故緩和縮小を先送りしたのか ~ バーナンキFRB議長が発したオバマ大統領に対する警告

雇用統計が予想以上の好転を見せたなか、物価が低水準に留まっていることを理由にTaperingを見送るということは、「Taperingは金融引締めである」ことをFRBが暗に認めてしまうことになりまねません。「Taperingが金融引締めを意味しない」のであれば、物価に悪影響を及ぼすことはないと主張できるはずです。

米国の雇用統計の前日には、ECBが予想外に0.25%の利下げを実施しました。これによりECBの政策金利は0.25%と、ついに「0金利」一歩手前となりました。

ユーロ圏の消費者物価指数(CPI)が前年同月比で+0.7%と、こちらも予想外の低水準になって来ていましたから、ECBが利下げに動くことは想定の範囲だったといえます。しかし、10月31日にCPIが発表されたばかりで、まだ国別のデータも発表されていない投資家に分析する時間を与えないような段階での利下げは、タイミング的に大きなサプライズだったといえます。

ドラギECB総裁は「今回の政策決定は為替相場と関係がない」と、最近のユーロ高と利下げは関係がないことを強調していましたが、中央銀行が金融市場の動向と金融政策を結び付けるような発言をしないのは常識ですから、こうした発言を額面通り受け取る投資家は多くないはずです。

ECBが利下げに動いたことで、日米欧の中央銀行が金融緩和で足並みを強める格好になりました。しかし、直近の日米欧の金融緩和は、その手法が若干異なっていることを忘れてはなりません。先日「近藤駿介Official Site」で参考資料を公開しましたが、ECBと、FRB、日銀との一つの大きな差は、FRBと日銀がマネタリーベース(=ベースマネー)を増加させ続けている中で、ECBのベースマネーは2012年7月をピークに足下で30%も減少して来ていることです。

FRBと日銀がマネタリーベースを増やし続ける中、ECBが供給するベースマネーが2012年7月のピーク比で30%減少して来たことで、13年の7月から、ユーロが最も資金供給量が少ない通貨「レアマネー」になって来ています。直近のユーロ高も、ユーロが「レアマネー」に転じ、上昇しやすい状況になっていたことも要因だったと思われます。ちなみに、2013年6月まで「レアマネー」の座にあったのは「円」でした。円は2008年7月から2013年6月まで5年間「レアマネー」の座を維持し続け、その間に対ドルで108.13円から98.83円まで、対ユーロでは168.20円から128.92円まで円高になりました。

しかし、ここに来てECBも日米と同様に「0金利」に限りなく近づきました。金利が限界的な水準まで引き下げられたということは、状況によってはECBもFRBや日銀と同様にベースマネーを拡大する必要に迫られる可能性が出て来たということです。

FRBのTapering開始、ECBの金融緩和が金利引き下げから量的緩和にシフトするという、政策的変更の可能性が出て来るなかで、日本はバカの一つ覚えのように「異次元の金融緩和」と「意味不明の成長戦略」を唱え続けています。欧米で金融政策の変化の可能性が高まる中で、変化の可能性のない日本。日本の金融市場が欧米の政策によって動くという状況が強まるのかもしれません。

アベノミクス相場が始まってからほぼ1年が経過しました。為替市場では円安が進み、日本株も大きく反転しました。しかし、ここに来て状況は少しずつ変化して来ています。先週末時点でMSCI Japan(US$ベース)の2013年度の上昇率は+7.7%となっており、NYDJの+8.1%、MSCI KOKUSAI(日本を除く先進国)の+11.6%に後れをとって来ています。アベノミクスという政策的大転換によって「世界で最も魅力的な株式市場」であった日本の株式市場ですが、この先の変化という面では欧米に劣って来ており、米ドルで運用する投資家にとって、日本の株式市場地位は低下しつつあるといえるのかもしれません。
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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