何故みずほ銀行はオリコに代位弁済を求めたのか

「想定内」のことではありましたが、13日に衆議院財務金融委員会で行われた「金融機関における反社会的勢力との取引問題」に関する集中審議は、既に公表されている「第三者委員会報告書」と「業務改善計画」を確認するだけの、みずほ銀行佐藤頭取に対する「公開謝罪要求」の場となりました。

「今の段階について申し上げれば、230件については全て代位弁済を終えておりますけども、私ども自身といたしましては、オリコにその分が残っているという認識がございます」

13日に衆議院財務金融委員会で、みずほ銀行の佐藤頭取はこのように発言しました。
佐藤頭取の反社認定先債権の解消に関する発言要旨は、
  1. オリコとの提携ローン(キャプティブローン)に含まれていた、みずほ銀行の基準によって反社認定先とされていた230件の融資に関しては、オリコが代位弁済(顧客の連帯保証人であるオリコが残金をみずほ銀行に返済)した
  2. これによって、オリコとのキャプティブローンにかかわるみずほ銀行の反社会的勢力に対する資金提供はなくなった
  3. 反社認定先への債権はみずほ銀行からオリコに移っただけなので、みずほグループ内に残っていることは認識している
  4. オリコに移された反社認定先債権の回収、解消には、みずほ銀行がモニタリングするなど、グループを挙げて取り組む
といったところでした。

みずほ銀行がオリコに代位弁済をさせたことは、「業務改善計画」に記載されているものですから、「反社認定先債権がみずほグループ内に残っていることは認識している」「反社認定先債権の回収、解消にはみずほ銀行がモニタリングをしていく」といったこと以外に目新しいものはありませんでした。

質問に立った議員達は全員「第三者委員会報告書」と「業務改善計画」に目を通しているはずですが、「何故、みずほ銀行はオリコに代位弁済をさせたのか」という点について、委員会では全く質問が出ませんでした。

みずほ銀行としては、オリコに代位弁済させることで、「キャプティブローンにおいて判明している反社会的勢力との取引は全て解消」という状況を整えることを優先したのだと思いますが、これによって問題解決が困難になった可能性があることについてはほとんど追及がありませんでした。

代位弁済によって、「反社会的勢力との取引」は全てオリコに移されることになりますから、この先の資金回収・取引遮断は一義的にオリコが行っていくことになります。

みずほ銀行がオリコに代位弁済をさせて、回収業務をオリコにやらせるという選択をした一つの理由として考えられるのは、顧客とオリコとのローン契約にはいわゆる「暴排条項」が入っているのに対して、顧客とみずほ銀行との金銭消費貸借契約には「暴排条項」が入っていなかったことです。

「暴排条項」が入っているオリコに債権を移せば、顧客が反社会的勢力であることを理由に契約解除することが出来ますから、その方が資金回収を早く出来るはずだという理屈です。しかし、オリコが返済遅延などを起こしていない顧客に、「暴排条項」に基づいて契約解除を申し入れるということは、オリコが顧客を反社会的勢力であると認定していることを顧客に明示することになります。

顧客がキャプティブローンの仕組みを理解しているかは甚だ疑問ですが、顧客がオリコと締結しているローン契約上、オリコは顧客とみずほ銀行との金銭消費貸借契約における顧客の実質的代理人兼連帯保証人という立場です。したがって、オリコが「暴排条項」で解除できる契約は「代理人・連帯保証人」であり、返済を請求できるのは、みずほ銀行との契約に従ってオリコが保証債務を履行し、求償権(返済を求める権利)を得た場合に限ることになります。つまり、オリコが「暴排条項」に基づいて契約解除を申し入れるということは、みずほ銀行が顧客を反社会的勢力と認定したことを顧客に通知することに他なりません。

「反社認定先についてオリコに対して代位弁済を求めることも考えられた。もっとも、平成18 年に実施された論点整理において、代位弁済を行う場合にはその旨債務者に対して通知がなされる結果みずほBK が当該債務者を反社と認定していることが債務者に知れるところとなり、その対応が難しくなると整理しており、かかる整理を受けて、渉外室としても代位弁済の方法については難しいと理解していたことのほか、オリコがみずほグループの関連会社である以上、代位弁済を求めて関連会社に反社認定先の取引を移したところで、みずほグループにとって問題の本質的な解決にはつながらないとの考えから、特にその可能性を追求することはなかった」

みずほ銀行の「第三者委員会報告書」にはこのように記載されています。つまり、これまでみずほ銀行は、「みずほBK が当該債務者を反社と認定していることが債務者に知れるところとなり、その対応が難しくなる」、「代位弁済を求めて関連会社に反社認定先の取引を移したところで、みずほグループにとって問題の本質的な解決にはつながらない」という理由でオリコに対して代位弁済を求めて来なかったわけです。

そのみずほ銀行は、業務改善命令を受けて、「みずほグループにとって問題の本質的な解決にはつながらない」うえに、「「みずほBK が当該債務者を反社と認定していることが債務者に知れるところとなり、その対応が難しくなる」と認識している代位弁済をオリコに求めたのか、この点に対する質問も、回答もありませんでした。

もし、みずほ銀行が「債務者を反社認定していることが債務者に知れるところになる」ことを気にしないのであれば、預金保険機構に「特定回収困難債権」として「債権譲渡」する方法も選択肢としてあったはずです(「特定回収困難債権」の回収は、整理回収機構が当該債権を買取って行う)。この制度は預金業務を行う銀行しか利用できませんから、反社認定先債権がみずほ銀行からオリコに移ってしまった時点でこの制度を利用出来なくなってしまいました。

みずほ銀行は、オリコに代位弁済を求めても「みずほ銀行が債務者を反社認定していることが債務者に知れるところになる」ことを認識していたのですから、反社認定先債権を預金保険機構に「特定回収困難債権」として売却し、その売却損をオリコに保証させるという選択肢もあったはずです。そうすれば、「反社認定先債権をみずほグループから切り離す」ことが出来たうえに、キャプティブローンを通して反社会的勢力に流れた資金回収を早期に実施出来たかもしれません。

こうした選択肢を検討しなかったのか、比較検討したうえでオリコに代位弁済を求めたのか、今後の財務金融委員会で是非明らかにして頂きたいと思っています。

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近藤駿介

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Author:近藤駿介
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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