みずほ銀行反社会的勢力融資 ~ 何故、自行取引という認識が希薄になったのか

みずほ銀行が、キャプティブローンを通して反社会的勢力に資金提供をしてしまったことに気付きながら2年以上も放置してしまった問題。第三者委員会報告書は、「本キャプティブローンが自行の貸付債権であるという意識が希薄であった」ことを第一の要因として挙げています。

一般の方からすると、銀行が自行の融資に対して「自行の貸付債権であるという認識が希薄であった」ということは、考え難いと感じるのではないでしょうか。しかし、金融業界の人間には、意外と陥り易い穴であったような気がします。誤解してはいけないことは、第三者委員会の報告書が指摘する「自行債権という認識が希薄になった」というのは、「顧客に対する自行債権認識」であるということです。

当り前のことですが、融資は、貸付先の信用力に基づいて行われます。信用力というのは、返済能力ということでもあります。今回のオリコのキャプティブローンにおいてのポイントの一つは、オリコは顧客の連帯保証人の立場になっているところです。つまり、顧客の返済が滞った際には、オリコが連帯保証人としてローン残金をみずほ銀行に支払う契約になっていたのです。つまり、みずほ銀行からみると、実際に車や家電製品を買う顧客の返済能力が低くても、オリコが保証契約を履行する能力さえ保っていれば、融資が焦げ付くことはない仕組みになっていたとのです。

契約上は、みずほ銀行と顧客との間に「金銭消費貸借契約」が成立することになっていますが、実際に顧客とみずほ銀行の間で契約書を交わすわけではありません。また、みずほ銀行の融資金は顧客でなくオリコに一括して支払われる形になっていますから、資金の流れの面でも、顧客に対する貸付でなく、オリコに対する貸付と同じになっています。貸付金はオリコに支払い、回収はオリコの信用力に依存している。これは、外見上オリコに対する融資と全く同じです。

融資においては、融資金が回収できるかが一番の問題ですから、キャプティブローンの仕組みを考えた人間も、これを許可した経営陣も、貸付金がオリコの信用力によって担保されている「仕組」になっていることが最大の関心事になったのだと思います。「債権の焦げ付きを出さない」ことを最優先する習慣が身についた人種にとっては、債権が保全されることが確認できてしまえば、そこから先はそれほど重要なこととして認識され難いのです。

キャプティブローンのような「仕組融資」の場合は、「仕組上」債権が保全されているかの確認が最重要項目になります。キャプティブローンを通した反社会勢力への資金供給は、債権がオリコの信用によってカバーされるという「仕組」の次に来る問題ですから、チエックが甘くなってしまったのだと思います。

つまり、「仕組融資」であったがゆえに、みずほ銀行にとって融資がオリコの信用でカバーされていることが最優先される確認事項になってしまい、その先が盲点になったという訳です。そして、融資金の流れがオリコに対する融資と同じであったがために、みずほ銀行にとって、キャプティブローンは顧客に対する貸付でなく、オリコ向け融資であるといった錯覚が強まったのだと思われます。要するに、契約上の顧客に対する「自行債権認識」を持つ必要があったにもかかわらず、それがオリコに対する「自行債権」であるかのような錯覚が高まりやすかったがゆえに、顧客に対する「自行債権認識」が希薄になってしまったということだと思われます。

ところで、三菱東京UFJ銀行や三井住友銀行という他のメガバンクが手を出していない、仕組上「信販会社の信用力で保全されたキャプティブローン」に、何故、みずほ銀行だけが、過度に傾注してしまったのでしょうか。

そこに、合併による内部の主導権争いが他のメガバンク以上に激しく、会社全体が「焦げ付きを出さずに残高を増やす」ことを迫られていたという、みずほグループの特殊性が表れているような気がします。それは、他の2つのメガバンクは、合併、統合時から「勝ち組」と「負け組」が明確になっていたのに対して、みずほグループは勢力が拮抗していたがために勢力争いが激しかったということです。

最後に付け加えると、オリコとのキャプティブローンを始めたのは、みずほグループの中で「負け組」になりつつある銀行でした。これもみずほ銀行がキャプティブローンを自行取引という認識を希薄にした理由の一つになったのかもしれません。
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近藤駿介

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Author:近藤駿介
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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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