米国株式市場最高値更新~「量的緩和規模縮小」と「政策金利引き上げ」を区別し始めた市場

「米国で超低金利政策が長期間続くとの見方が根強く、相場を押し上げる原動力になるとの期待から買いが優勢になった」(23日日経電信版「米国株、続伸 ダウ54ドル高で最高値 S&P指数は1800を突破」)

NYダウが「金融緩和継続期待」を原動力に、連日で過去最高値を更新しました。また、今来月は、投資銀行やファンドの決算期ですから、こうした時期的な影響も、株価最高値更新に貢献しているのかもしれません。

注目されるのは、「金融緩和規模縮小」観測が再び強まる中で、株価が最高値更新をして来たことです。20日に公表されたFOMC議事録(10月29、30日開催)で「労働市場の状況改善に関する委員会の見通しと整合性がある経済データになり、よって数カ月内の購入ペース減速が正当化されると、おおむね予想した」(20日Bloomberg 「FOMC議事録:『数カ月内』に緩和縮小の可能性」)と、「月額850億ドルで実施している債券購入の規模を『数カ月内』に縮小する可能性があるとの認識」(同)が示されたことを受け、一時的に下落する局面もありましたが、週末にかけて強含み、連日過去最高値を更新して週内の取引を終えました。

5月にバーナンキFRB議長が「金融緩和規模縮小」を示唆して以降、「金融緩和規模」は金融市場の最大の関心事になって来ました。しかし、ここに来て、「金融緩和規模縮小」に対する市場の反応が、若干変化し始めています。

当初は、雇用を中心に景気の強さを示す統計が発表されると「金融緩和規模縮小」観測が強まり、長期金利上昇、株価下落という反応を示して来ました。しかし、FOMC議事録で「緩和縮小の可能性」が示された中で株価が連日で最高値更新をするなど、ここに来て市場は「金融緩和規模縮小」を冷静に受け止めるようになって来ているようです。

市場が「金融緩和規模縮小」を冷静に受け止めるようになったのは、「量的緩和規模縮小」と「政策金利引き上げ」とを明確に区別し始めたとからだと思われます。これまでも、バーナンキFRB議長は「量的緩和規模縮小」は金融引締めではないこと、政策金利の引上げは当分先であることを示唆し続けて来ましたが、なかなか市場は額面通り受け取ってくれませんでした。ここに来て、バーナンキFRB議長の努力がようやく実を結び始めたようです。

市場が「量的緩和規模縮小」と「政策金利引き上げ」とを区別して捉えるようになったことは、米国のイールドカーブに表れています。「量的緩和規模縮小」がかなりの確率で見込まれていた9月のFOMCを控えた9月5日には、米国の10年国債利回りは一時3%を付けるところまで上昇しました。そして、FOMCで「金融緩和規模縮小」が先送りされたことで10年国債利回りは2.5%台まで低下した後、20日に発表された10月のFOMC議事録で早期の「量的緩和規模縮小」が示されたこと等を受け、再び2.8%付近まで上昇して来ました。

「量的緩和規模縮小」観測が強まった9月5日と、11月20日の米国債のイールドカーブを比較してみると、10年国債の利回りは9月5日時点より0.18%低い水準であるのに対して、3年国債の利回りは0.40%、5年国債利回りは0.46%低い水準に留まっています。つまり、直近のイールドカーブは、9月5日時点と比較すると、3年までが平坦で、それより長い期間では立っている形になっているのです。これは、市場がFRBが「政策金利引き上げ」に踏み切る時期は、9月5日時点より先だと考え始めていることの証左であるといえるものです。
(⇒ 「米国イールドカーブ」のチャートはこちらから

そしてそれは、市場が「量的緩和規模縮小」と「政策金利引き上げ」を明確に分け、「量的緩和規模縮小」は金融引締めに相当しないと認識し始めているということです。

5月にバーナンキFRB議長が「金融緩和規模縮小」を示唆して以降、FRBと市場間のコミュニケーションにズレが生じて来ていましたが、ここに来てかなり修復されてきたことが、米国株式市場の好調の原動力になっているような気がします。

一方、FRBと市場とのコミュニケーションが修復されて来たということは、FRBが「金融緩和規模縮小」に踏み切りやすくなったことでもあります。市場が「量的緩和規模縮小」を金融引締めだと受け取りかねない状況下ではFRBは「金融緩和規模縮小」には踏み切り難いですが、市場が「金融緩和規模縮小」と「政策金利引き上げ」を区別するようになれば、FRBは「金融緩和規模縮小」に踏み切りやすくなって来ます。

9月のFOMCでは、「明確な証拠」が得られるまで待つという理由でFRBは「金融緩和規模縮小」を先送りしました。その後、10月の雇用統計が予想以上に強かったという明白な理由が出て来ましたから、2014年1月で任期が切れるバーナンキFRB議長としては、自分の任期中に「金融緩和規模縮小」に踏み出しておきたいと考えていても不思議はありません。10月の強い雇用統計を受けても「金融緩和規模縮小」に踏み切らなかったとなると、それ以上の材料が要求されることになってしまいます。こうしたリスクを冒してまで「金融緩和規模縮小」を先送りするでしょうか。

また、後任のイエレン現FRB副議長に「金融緩和規模縮小」に踏み切るかの判断を委ねるということは、場合によっては、イエレン次期FRB議長が市場からバーナンキ体制との継続性という余計な説明を要求される事態になりかねません。

10月の雇用統計は、政府機能一時停止の影響も含まれていますから、FRBとしては10月単月の結果で動きにくいという事情もあったと思います。仮に12月6日に発表される11月の雇用統計が強い内容になるとしたら、12月のFOMCで「金融緩和規模縮小」は十分にあり得ると考えておくべきかもしれません。
因みに、12月6日は、2014年ブラジルワールドカップ1次リーグの組合わせ抽選会の日でもあります。


⦅ お知らせ ⦆
「近藤駿介 Official Site/ Market Data」 にて下記のチャートを公開しておりますので、ご活用ください。

 1. 2013年度主要国株式市場騰落率
 2. MSCI WORLD Country Index Performance & Ranking
 3. 日経平均株価と主要国ボラティリティ(21営業日)
 4. 日経平均株価とNT倍率


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ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験を持つと同時に、評論家としても活動して来ました。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚をお伝えしていきたいと思います。

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