FRBテーパリング開始 ~ 開始時期を見誤ったにもかかわらず、織込み済みであった市場

バーナンキFRB議長が日本の流行語大賞を知っていたとしたら、「やるなら今でしょ!」といっていたかもしれません。

FOMCは、2014年1月から現在の月額850億ドル規模で実施している証券購入額を、住宅ローン担保証券(MBS)を月400億ドルから350億ドルに、米国債を月450億ドルから400億ドルへと各50億ドルずつ減らし、月額750億ドルとするテーパリング(tapering:金融緩和規模縮小)を決めました。

2014年の3月以降という見方が強かったなかでFRBが今回テーパリングに踏み切りましたが、市場の反応は予想以上に冷静なものとなりました。NYダウは161,617ドルと、前日比292ドルの大幅上昇、10年国債利回りも4bp程度の上昇の2.88%前後、ドル円は104円台とドル高円安となってきています。こうしてみてみると、テーパリング開始時期が市場予想より早く開始されることになった割には、為替は予想通り、債券市場への悪影響は限定的、株式市場は予想以上に好感した格好になっています。

こうした市場の反応を見る限り、市場は「テーパリングの開始時期を見誤ったにもかかわらず、織り込み済み」であったということです。

市場が「テーパリング開始時期を見誤ったにもかかわらず織り込み済み」となったのは、5月にバーナンキFRB議長がテーパリングの可能性に言及して以降、ドルが「調達通貨」として適さないことが認知されたからです。マスコミ等は、大量の緩和マネーがどこに向かうのか、という「資産サイド」に目を奪われがちですが、実際には、それと同じ位、どの通貨が「調達通貨」となりやすいのか、という「調達サイド」に目を向ける必要があります。

忘れてはならないことは、「金融緩和が終了するかもしれない国の通貨」は「調達通貨」には向かないということです。5月にバーナンキFRB議長がテーパリングの可能性に言及し、9月には実施に踏み切ることが想定されていました。FRBがテーパリングを始める可能性があるということは、ドルが上昇し、金利が上昇する可能性を意識しなくてはならないということです。

こうしたことを意識すれば、「ドル調達、対外投資」という、ドルを調達通貨とするドルキャリートレードは縮小せざるを得なくなります。ドルキャリートレードをしている投資家にとって、「調達通貨」であるドルとドル金利の上昇は、「資産サイド」で為替差損を被るのと同時に、借入増加・負担増を意味しますから、危険で魅力のない取引になってしまいます。

バーナンキFRB議長が5月にテーパリングに言及したことによって、ドルはキャリートレードの「調達通貨」に適さなくなっていました。それが、今回、「テーパリング開始時期を見誤ったにもかかわらず、織り込み済みだった」大きな理由かとお思います。

ドル、ユーロ、円、という世界に主要通貨で比べると、テーパリングの可能性の高いドルは「調達通貨」として不適切になりました。ユーロは、経済状況からみて金利面では利上げの可能性はかなり低いですが、「金融システム維持」に重きを置いているECBのバランスシートは、最高時から30%も縮小して来ており、量的緩和の状況から見ると、「調達通貨」として適切であるかとは言い切れません。

【参考記事】ECB利下げ&雇用統計大幅改善 ~ 変化を見せる欧米、変化の可能性が乏しくなった日本

こうしたなかで、最も「調達通貨」として適しているのが円ということになります。何しろ、日銀総裁が、「2%の物価安定目標」を達成するまで、脇目もふらずに「異次元の金融緩和」を続けるという、「イノシシ緩和」を続けることを宣言していますから、キャリートレードを実施する投資家にとって、円は「調達通貨」として最も都合のいい通貨になっていると言えます。

FRBがテーパリングに踏み切ることを宣言したことでドルに上昇圧力が加わる中、キャリートレードを行う投資家の「調達通貨」が円中心になって行くということは、円に対しては円安圧力がかかるということですから、日本にとっては追い風になりそうです。

バーナンキFRB議長が今回市場の予想より早めにテーパリング開始を宣言した理由は、任期が2014年1月で終了することも影響していると思います。「ヘリコプター・ベン」という異名を持つバーナンキFRB議長にとって、任期中にテーパリングに手を付けられないということは、相次ぐ金融緩和が効果の判断を後任に託すことになってしまいます。自らの任期中にテーパリングに踏み切ることが出来るということは、自らの主張であった「金融緩和の効果」が正しかったことを宣言できるということでもあります。

来月任期満了を迎えるバーナンキFRB議長にとって、今回のテーパリングか意思表明は、自らの「ヘリコプター・ベン」との異名を守れる最後のチャンス、「やるなら今でしょ!」というタイミングでもあったということです。金融市場は、テーパリング開始に備えはして来ましたが、開始時期を考えるうえで、この点を見落としたのかもしれません。


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