食い違う社会 ~ 政府・日銀が国民に提示する経済と現実経済のギャップ

「銀行の貸出金利低下が進んでいる。平均金利は2007年末の直近ピーク2%前後から足元では0.7ポイント低下し、1%未満の金利での貸出金が全体の4割を超えた。貸出金残高は増えているが、収益性は悪化している。海外で収益を確保するメガバンクに対し、地銀は5年後に利益が半減するという試算もある」(14日付日本経済新聞 「貸出金利 低下一段と」)

「2%の物価安定目標」を目指して続けられている日銀の「異次元の金融緩和」によって、インフレ期待が醸成されていると繰り返し報じられるなか、銀行の貸出金利が一段と低下して来ていることが報じられています。

教科書的に言えば、「名目金利=実質金利+期待インフレ率+リスクプレミアム」あるいは「名目金利=期待成長率+期待インフレ率+リスクプレミアム」と分解されます。貸出金利が一段と低下しているということは、「実質金利≒期待成長率」「期待インフレ率」「リスクプレミアム」のどれか、あるいは全てが低下しているということになります。

「実質金利≒期待成長率」と「期待インフレ率」が低下しているとしたら、政府や日銀が「円安・株高」と「消費者物価指数の上昇」を拠り所に繰り返している「景気回復期待」「期待インフレ率上昇」とは、整合性の取れない動きとなります。

また、「リスクプレミアム」が低下しているのだとしたら、それは「1%未満の金利での貸出金が全体の4割を超えた」という報道にあるように、貸出先が貸し倒れリスクの低い企業に集中していることを示唆したものです。これは、換言すれば信用、担保能力で劣る中小企業向け貸出しは伸びていない、お金が回ってないということです。

「大胆な金融緩和」「異次元の金融緩和」によって金融市場は円安・株高に振れましたが、銀行の行動は、黒田日銀総裁が主張する「インフレ予想が高まり、『先行き物価が上がっていく』との認識が定着すれば、実質金利の低下やポートフォリオ・リバランスといったチャネルに伴う景気刺激効果も強化されます」(2013年12月25日黒田日銀総裁講演)という期待に反した動きになっているともいえます。

安倍総理は年頭所感で「景気回復の実感を、中小企業・小規模事業者の皆さんをはじめ、全国津々浦々にまで、必ずやお届けしてまいります」と訴えましたが、20%を上回る円安と50%を上回る株高でも「リスクプレミアムの低下」に歯止めを掛けられなかった現実を考えると、その達成にはかなりの困難が伴うことが想像されます。

アベノミクスによる景気回復期待の拠り所となっている「円安・株高」も、年明け以降不安定な動きになって来ています。政府・日銀が繰り返す景気回復期待を高める社会と、統計から見えて来る現実の社会との間のギャップが明らかになるなかでも、金融市場は市場関係者の期待どおり「円安・株高」に向けて突き進むことが出来るのでしょうか。一部の方にはお話ししましたが、個人的には2014年は波乱の年になる可能性が高いと考えています。

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近藤駿介

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