「賞味期限」の切れたアベノミクスと、総理と中央銀行総裁が発する「軽すぎる言葉」

今頃総理は、「Buy My Abenomics」と豪語しなかったことに胸をなでおろしているかもしれません。

日本時間23日未明に、安倍総理が日本の総理として初めてダボス会議で基調演説を行いました。日本経済新聞は「法人税や岩盤規制の改革に取り組む姿勢を訴え、シュワブ会長は『具体的な考え方や提案があった』と評価した」(23日付日本経済新聞夕刊 「首相、ダボスで講演」)と、「日本に来たのは、黄昏ではなかった。新しい、夜明けでした。 昨年終盤、大改革を、いくつか決定しました。できるはずがない―。そういう固定観念を、打ち破りました」(首相官邸HP「世界経済フォーラム年次会議冒頭演説」より)と、アベノミクスの成果を訴えた安倍総理の基調演説が高く評価されたと報じています。

しかし、皮肉なことに、「アベノミクスの成果」を訴えて世界から高く評価された基調演説を行った安倍総理を待ち受けていたのは、日本株の大幅下落でした。

世界の投資家は今回の安倍総理の基調演説を本当に高く評価したのでしょうか。個人的には今回の基調講演は、投資家にとって物足りない内容だったように感じています。

「電力市場を、完全に自由化します」「医療を、産業として育てます」「40年以上続いてきた、コメの減反を廃止します」「春先には、国家戦略特区が動き出します」…。安倍政権が誕生してから1年以上経ったいまでも、安倍総理が「アベノミクスの成果」として主張している政策のほとんどは「未来形」か、国内では実際の効果や実現性に疑問符が付けられているもののオンパレードです。

安倍総理は「日本に来たのは、黄昏ではなかった。新しい、夜明けでした」と、「アベノミクスの成果」を高らかに宣言しました。しかし、安倍総理が成長戦略の実績がほとんどゼロであるにも関らず、「アベノミクスの成果」を強く強調することで、かえって「円安・株高」以外の成果のないアベノミクスは「円安がもたらした虚構に過ぎない」という印象を与えてしまったような気がします。

「アベノミクスの成果」を強調する基調講演を行った安倍総理に対する海外の反応が、「アベノミクスの成果」よりも「靖国問題」と「中韓関係」であったところにも、世界の関心が「アベノミクス」よりも「安倍外交」に向いて来ていることを示唆するものかもしれません。日本で報道されている以上に、いつまでも「円安・株高」に頼る「アベノミクスの経済政策」は、多くの投資家にとって「賞味期限切れの政策」になって来ているように思います。

今回の基調演説もそうですが、安倍総理の演説はウケ狙いと思われる単語やフレーズを使用し過ぎるせいか、演説全体が軽薄なものになってしまっているように思えてなりません。

「向こう2年間、そこでは、いかなる既得権益といえども、私の『ドリル』から、無傷ではいられません」(首相官邸HP「世界経済フォーラム年次会議冒頭演説」より)

安倍総理はアベノミクスの既得権益を打ち破る姿勢を「ドリル」だと称し、「いかなる既得権益といえども、私の『ドリル』から、無傷ではいられません」などと強調しています。しかし、安倍総理の持つ「ドリル」は、「議員定数削減」や「一票の格差」といった国会に存在する「岩盤規制」には向かわず、「雇用流動化」など抵抗力のない国民に向けられているのが実態ですから、国民にとっては「わらえない冗談」でしかありません。

「大胆な金融政策という、第一の矢、機動的な財政政策という、第二の矢、そして民間投資を喚起し続ける、終わりのない第三の矢」(首相官邸HP「世界経済フォーラム年次会議冒頭演説」より)

安倍総理は、成長戦略の重要性を訴えたかったのだとは思いますが、「終わりのない第三の矢」という表現は、「第三の矢(成長戦略)には効果がない」と言っているようなもので、投資家の成長戦略に対する期待を萎ませるものですから、もっと適切な表現をすべきであったと思います。

「軽薄な言葉」とともに気になったのは「各国メディアとの会合では『外国企業が仕事をしやすい国にするため既得権益の岩盤を打ち破る』と訴えた」(23日付日本経済新聞「法人税改革、国際公約に」)というところです。安倍政権が「岩盤規制」を打ち破るのは、日本を「外国企業が仕事しやすい国」にするためなのでしょうか。「日本の企業や日本国民が仕事しやすい国」を目指さずして「あらゆる人が、社会で活躍し、その『可能性』を発揮できるチャンスを創る」(官邸HP「第百八十六回国会における安倍内閣総理大臣施政方針演説」より)ことが可能なのでしょうか。表現は適切ではないかもしれませんが、「外国企業が仕事をしやすい国にする」ため、「雇用流動化」などを推し進めるというのは、日本国民を外国企業の奴隷に差し出そうとしているような印象を受けてしまいます。

安倍総理は 「Buy My Abenomics」 などと発言しなくてよかったと胸をなでおろしているかもしれませんが、「マーケットの状況については常に注視していますが、全体の動きについて何か特別な懸念を持っているかと言われれば、持っていません」(日銀HP「総裁記者会見要旨」より)と能天気な発言をしたばかりの中央銀行総裁は、今頃己の軽い発言を恥じているかもしれません。

「『マーケットはマーケットに聞け』というくらいで、マーケットはマーケットで色々動くと思いますが、実体経済の動きと物価の動きを十分注視して、適切な金融政策を運営していくことに尽きると思います」(同)

強気一辺倒で始まった2014年の金融市場は、予想以上に不安定な展開になっています。「円安がもたらした虚構に過ぎない」可能性の高いアベノミクスにとって「円高」が最大のリスクですが、23日のNY市場では、地球の裏側のアルゼンチン中央銀行がペソ買い介入を放棄。ペソが一時18%も急落し、新興国の通貨危機が叫び始められました。

金融市場に不穏な動きが見られ始めた中、「マーケットの状況については常に注視していますが、全体の動きについて何か特別な懸念を持っているかと言われれば、持っていません」という能天気な中央銀行総裁に「適切な金融政策を運営」を委ねなければならない日本は、いつまで「日本に来たのは、黄昏ではなかった。新しい、夜明けでした」(首相官邸HP「世界経済フォーラム年次会議冒頭演説」より)と言っていられるのでしょうか。

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