アルゼンチン・ショックが引き起こしたのは「リスクオフ」ではなく、投資家の「覚醒」である

週明けの東京株式市場は、想像通りの大幅下落となりました。日経平均株価は先週末比385円下落しましたが、売買代金が2兆8502億円に膨らむ中、日銀が僅か128億円のETF買入れを「効果的に」行った成果なのか、辛うじて15,000円台を維持して取引を終えました。そして、株価が大幅に下落した影響か、「安な資産とされる円」の上昇は限定的なものでした。

先週23日のアルゼンチン・ショックに端を発した新興国通貨、株式市場の下落について、マスコミは「リスクオフの動き」という説明を加えています。そのうえで、背景には米FRBによるテーパリング(金融緩和規模縮小)があるとして、今週28、29日両日に行われるFOMCの決定が注目されると報じています。

「リスクオフの動き」というコメントも、「今週のFOMCが注目」という報道も、今回の新興国を中心とした金融市場の混乱を「金融現象」として捉えたものです。しかし、個人的には、今回の金融市場の混乱の原因を「金融現象」として捉えることには、疑問を感じています。

2012年末を基準に、先週末時点における世界の株価指数の騰落率をみると、先進国23ヶ国を対象としたMSCI Worldが23%強上昇(US$ベース:配当含まず)したのに対して、新興国21ヶ国を対象としたMSCI Emerging Marketsは5%強下落(同)しています。こうした市場動向から言えることは、市場は昨年から「リスクオフ」を進めて来ており、ここに来て突然「リスクオフ」に動き出したわけではないということです。

さらに、先日指摘した通り、アルゼンチンは2002年にデフォルトして以降、国際金融市場からの資金調達は出来ない状況にあり、1兆円弱の規模であるアルゼンチンの債務問題が、金融市場で負の連鎖を引き起こすかのような説明の説得力が高いとは思えません。

今回のアルゼンチン・ショックは、「リスクオフの動き」のきっかけを作ったのではなく、世界の投資家を「覚醒」させるきっかけだったと捉えるべきかもしれません。

既に死語になりつつありますが、リーマンショック後には、先進国経済が停滞しても、中国やインド、ロシアなどの新興国が高成長を維持して世界経済を牽引していくという「デカップリング論」が幅を利かせた時期がありました。こうした流れを金融面から支えたのがFRBの3回に及ぶQE(大規模量的緩和)でした。

しかし、昨年から先進国の経済が回復傾向を強めるのと同時に、新興国ではインフレや政情不安など様々な課題が表面化して来ました。先進国投資で20%以上の収益が挙げられるのであれば、リスクをとってまで新興国に投資する必要性は薄れて来るのは当然のことで、こうした流れが「リスクオフの動き」といわれる「金融現象」を引き起す原因になったと思われます。

今回のアルゼンチン・ショックは、こうした「リスクオフの動き」のなかで起きたものだと見るべきで、それは、投資収益が相対的に低下したということではなく、新興国の経済成長自体が虚構の経済指標等によって創られた「張子の虎」であったことを多くの投資家に認識させるものになったように思われます。

アルゼンチン・ショックに端を発した新興国市場を中心とした金融市場の混乱は、「金融現象」ではなく、投資家の「覚醒」によってもたらされたものだ捉えると、今週のFOMCの影響は、市場関係者がいうほど大きなものではない可能性が高いことになります。

市場関係者の中には、今回のアルゼンチン・ショックによる金融市場の混乱に配慮して、FRBがテーパリングのペースを緩めることに期待する声もあるようです。しかし、個人的にはFRBが今回の市場の混乱に配慮する可能性は極めて低いと考えています。

それは、今回の市場の混乱は、2002年以降国際金融市場から資金調達が出来ていないアルゼンチン政府による経済指標の捏造が原因で起きたもので、金融面で負の連鎖を引き起こす可能性が低いことに加え、仮にテーパリングのペースを緩めるなどをした場合、FRBがQEによって供給した資金が金融市場の混乱をもたらす原因になったことを認める格好になってしまうからです。バーナンキFRB議長任期最後のFOMCで、金融市場と金融政策を関連付けないとする中央銀行の掟を破って晩節を汚すようなことはしないと思われます。

世界の投資資金が、次の「張子の虎」探しを始めるとしたら、今月末に中誠信託が中国工商銀行を通じて販売した理財商品30億元の償還を控えている中国のシャドーバンキング問題は格好の標的になるかもしれません。経済に与える規模の大きさよりも、世界第2位の経済大国がシャドーバンキングという歪んだ資金調達方法に嵩上げされた「張子の虎」であったことが問題視される可能性があるからです。

「輸出額は前年比9.5%増の69兆7877億円で3年ぶりに増えた。ただ円安による押し上げ効果が大きく、輸出数量指数は1.5%減だった」(27日付日経電子版「13年貿易赤字、過去最大の11兆4745億円」)

27日、2013年の日本の貿易赤字が比較可能な1979年以降で最大となったことが財務省から発表されました。そのこと自体はある程度想像されたことですから驚きはありませんが、問題は「為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=96円91銭で、前年比21.8%の円安だった」(同)にもかかわらず、「輸出数量指数は1.5%減だった」ことです。

輸出数量が伸びなかったことについては「海外生産の拡大で円安になっても輸出に弾みがつきにくい」(同)という解説が加えられています。それは解説としては正しいのだと思いますが、問題は円安でも輸出数量が伸びずに貿易赤字が膨らみ続けている日本の現状が、世界の投資家の目にどう映るかです。

「アベノミクスは張子の虎」だとレッテルを貼られることになれば、アベノミクスの唯一ともいっていい成果である「円安・株高」にも大きな影響を及ぼすことになると考えておかなければなりません。そしてこれは「金融現象」ではありませんから、「日銀の追加緩和」で抑えられるものではありません。

「アベノミクスは張子の虎だった」ことがばれた場合の対策として、「アベノミクス第4の矢」として、消費増税撤回など「大胆な政策転換」を準備しておいた方が賢明かもしれません。

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