トルコ中銀大幅利上げ ~ 経済成長に対して金利が高過ぎる状況に追い込まれた「フラジャイル5」

「トルコ中央銀行は28日開いた緊急の金融政策委員会で、通貨防衛と物価上昇の抑制を目的に政策金利の大幅な引き上げを決めたと発表した。短期金利の上限となる翌日物貸出金利を4.25%上げ、12%とする」(29日日経電子版 「トルコ中銀、大幅利上げ決定 翌日物金利12%に」)

トルコ中銀は、先週のアルゼンチン・ショックによって加速した資金流出と通貨安を食い止めるため、4.25%という大幅な政策金利の引上げを決めました。金融市場は、こうしたトルコ中銀の強い覚悟に敬意を表する形でトルコリラは対円で4%ほど上昇し、日経平均株価も400円を超える反発となりました。

今年に入り「フラジャイル5(fragile 5)」と称される「経済構造が脆弱で下げやすい5通貨」(日経新聞)のうち、ブラジル、インド、そしてトルコの3か国が利上げを実施することになり、残りのインドネシアと南アフリカ2カ国も利上げに追い込まれる可能性が高いと考えられています。

さて、インド準備銀行とトルコ中銀が相次いで通貨防衛のための利上げに動いたことで、短期的には一旦は新興国通貨売りに歯止めが掛かった形になっています。しかし、利上げによって「フラジャイル5」各国通貨が下げ止まったことと、「フラジャイル5」各国の経済に対する信認が回復したということとは、次元の違う問題だと認識しておく必要があります。

日本経済新聞でも「各国中銀が物価抑制を優先して利上げに動くと、新興国景気の減速が一段と強まるリスクがある」(29日付 「新興国、利上げで防戦」)と指摘されている通り、通貨防衛を目的とした利上げは、新興国の景気に下押し圧力となることは必至です。

先進国(日米欧)と、「フラジャイル5」との「GDPと政策金利」の関係を比較して見てみると、「フラジャイル5」各国の政策金利が直近のGDP成長率を大きく上回る水準にある(下図チャートの直線よりかなり上方に位置している)のに対して、日米の政策金利は足下のGDP成長力を下回る水準にある(下図チャートの直線より下側に位置している)という、大きな違いがあることがわかります。

GDPと政策金利


GDPと政策金利の関係から言うと、日米の金融政策が「超緩和的」であるのに対して、「フラジャイル5」各国の金融政策は「超引締め的」であるということです。先進国経済が回復を見せ始め、新興国の経済成長が緩慢になって来たことで、経済成長率という点での新興国の相対的優位性は薄れて来ています。

経済成長面での新興国の相対的優位性が薄れて来る中、景気が回復傾向を見せ始める中で「超緩和的」な金融政策を採る先進国と、景気減速傾向を見せる中で「超引締め的」な金融政策を採る「フラジャイル5」各国と、どちらに投資資金は流れるでしょうか。

「フラジャイル5」各国と、日米の政策金利の「金利差」は拡大して来ていますから、為替が安定すれば、「金利差」を求める資金が短期的に「フラジャイル5」各国に流れることは十分に考えられることです。しかし、大きな「金利差」を生んでいる高い政策金利は、中長期的な経済成長の足枷になるものですから、「フラジャイル5」各国に流れ込んむ「金利差」を求める資金は、中長期の投資には向かわないと考えた方が賢明です。

だとすると、今回のアルゼンチン・ショックは、株式投資という点において、景気が回復傾向を見せ始める中で「超緩和的」な金融政策を採る先進国の方が、景気減速傾向を見せる中で「超引締め的」な金融政策を採る「フラジャイル5」各国に投資するよりもリスクが低く効率的な投資先であり続ける可能性をより高めた出来事だったと言えそうです。

ここに来て俄かに脚光を浴び始めた「フラジャイル5」。日本経済新聞は29日付の紙面で「米連邦準備理事会(FRB)の量的緩和縮小に伴って下落が進みやすい新興国通貨の総称。米モルガン・スタンレーが名付けた。ブラジルレアル、インドルピー、インドネシアルピア、トルコリラ、南アフリカランドの5通貨を指す。市場では世界経済の混乱要因として意識されている。高いインフレ率や経常収支の赤字で、成長資金を国外に頼る脆弱なマクロ経済構造を抱えている点で共通している」という解説を加えています。

興味深いことは、「フラジャイル5」に、この10年強の間、新興国の中で21世紀最も経済成長が期待される国の代表国とされた「BRICs」5ヵ国のうち、ブラジル、インド、そして南アフリカの3国が含まれていることです。

さらには、2001年11月に「BRICs」という言葉を編み出したのはゴールドマン・サックスでした。21世紀に最も経済成長が期待される国の総称として「BRICs」という言葉を編み出し市場の注目を集めたゴールドマンの後塵を拝した形になったモルガン・スタンレーが、それから1世紀どころか僅か10年強経過した2013年に「BRICs」を否定するような、最も経済状況が脆弱な国の総称として「フラジャイル5」という言葉を世の中に送り出して大きな注目を浴びることになったというのは、「江戸の敵を長崎で討った」ような何とも興味深い構図です。

投資家にとって重要なことは、証券会社などが繰り出す耳触りのいいスローガンに余り踊らされ過ぎてはいけないということかもしれません。

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近藤駿介

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