「円安・株高」に陰りが見え始めた市場~「景気回復の実感を全国津々浦々まで届けられる」かは安倍総理の「発想の柔軟性」に懸かっている

「日経平均は昨年5~6月以来、約8カ月ぶりに4週連続の下落となった。1月の月間の下落幅は1376円78銭と、リーマン・ショック後の08年10月(2682円88銭)以来の大きさとなり、安倍晋三政権の経済政策『アベノミクス』を受けた株高後で最大となった」(1/31日経電子版「東証大引け、続落 再び1万5000円割れ」)

2013年、日経平均が、9日続伸し、2年連続での「高値引け」を記録した後、安倍総理の「来年もアベノミクスは買いだ!」という勇ましいスピーチで幕を閉じ、一点の曇りもない環境でスタートを切ったはずの2014年の株式市場は、リーマン・ショック以来の下落幅でのスタートとなりました。

アベノミクスがもたらした数少ない成果である「円安・株高」にブレーキがかかるというのは、安倍政権にとっても大きな痛手です。国民の7割前後がアベノミクスによる景気回復を感じていないなかで、安倍政権が50%を超える支持率を保っていられるのも、「円安・株高」によって、実感の有無に関わらず景気回復期待を繋ぎ止めていられているからに他なりません。

「景気回復の実感を全国津々浦々まで届ける」ことを今年の政策目標に掲げている安倍政権にとって、「円安・株高」は「全国津々浦々まで届けられる景気回復が実在する」という幻想を国民に抱かせる唯一の武器になっています。こうしたなかで、「円安・株高」基調が崩れてしまったら、「全国津々浦々まで届けられる景気回復」が幻想であったことを露呈してしまう結果になってしまいます。多くの国民が「全国津々浦々まで届けられる景気回復」が幻想であったと感じてしまえば、景気回復を感じていない7割前後の国民が、安倍政権を支持する理由もなくなってしまいます。そして、それは「円安・株高」の逆風となって吹き付けることになります。

「日経平均ボラティリティー指数が31日に一時30.16まで上昇し、昨年9月9日以来、約5カ月ぶりの高値水準まで上昇。日経VI先物は期近より期先のほうが低下するダウンワード・スローピングとなっており、短期的な荒れ相場を示している」(1/31ロイター「来週の日本株は波乱含み」)

メディアでは、オプション取引価格から逆算した日経平均ボラティリティー・インデックスが上昇(1/3日終値=29.11%)して来たことなど、株式市場の価格変動が大きくなって来ていることを報じています。確かに、株式市場のボラティリティーは上昇して来ていることは事実ですが、21営業日の日経平均終値から算出したヒストリカル・ボラティリティーは25.31%と、2013年の平均値25.84%とほぼ同じ水準に過ぎず、格別高いわけではありません。ちなみに、2013年5月下旬にバーナンキ前FRB議長がテーパリング(金融緩和規模縮小)に言及した後の株価下落局面では、ヒストリカル・ボラティリティーは51.2%まで上昇(6/19)しています。 【参考】日経平均株価と主要国ボラティリティ(21営業日)

過去の経験則から言うと、株価下落によってヒストリカル・ボラティリティーが30%を上回ってくると、市場が自律反発する可能性も高まって来ます。しかし、上昇して来たと言えども、足下の25%台という水準は市場が自律反発に向かうには中途半端な水準だといえます。

市場の調整は、「価格」か「時間」で行われます。仮に、ボラティリティーが足下の25%程度の水準で株価が下げ止まるとすると、その先暫くは値動きの乏しい相場が一定期間続く、換言すると、株式市場は「時間」で調整していく「日柄調整」局面に向かう能性が高いと思われます。

株式市場が「価格」で調整する方向に向かうのであれば、ボラティリティーが30%を上回る水準まで上昇することは必至です。先週末のシカゴCMEの日経平均先物の終値は、東京の終値を300円強下回る14,600円程度となっています。仮に、週明けの株式市場がCMEの水準まで下落したとしたら、日経平均のヒストリカル・ボラティリティーはどの程度まで上昇するでしょうか。

あくまで計算上ですが、週明け月曜日に日経平均株価が14,600円まで下落したとしても、ヒストリカル・ボラティリティーは25.68%と、先週末の25.31%から僅か0.37%しか上昇しません。

これは年明け以降株式市場が下落基調にあることによるものです。株式市場が下落基調にあるなかで、週明け月曜日に日経平均株価のヒストリカル・ボラティリティーが30%に達するためには、日経平均株価が先週末から750円強下落して14,152円以下になるか、はたまた650円強上昇して15,579円以上になる必要があるという計算になります。

「この道しかない。皆さん、共に、この道を、進んで行こうではありませんか」(1/24総理大臣施政方針演説)、「日本に来たのは、黄昏ではなかった。新しい、夜明けでした」(1/22ダボス会議基調演説)と、アベノミクス効果を信じきっている安倍総理の目に、直近の「円高・株安」は、新興国リスクによるとばっちりに映っているに違いありません。しかし、例え日本が新興国リスクの被害者であっても、「円安・株高」という流れが変化してしまえば、「景気回復の実感を全校津々浦々まで届ける」という安倍総理の目標達成はかなり難しくなることは確かです。

「柔軟な発想で世界を驚かせる万能細胞をつくりだした」

安倍総理は、31日の衆院予算委員会で、STAP細胞の作製に成功した小保方博士をこのように称賛しました。小保方博士がSTAP細胞作製という画期的な成果をあげられたのは、「化学系出身らしく、先入観なくデータを重視する視点が、生物学の通説にとらわれない姿勢をうんだ」と言われている「柔軟な発想」だったことを念頭においた発言だと思われます。

「9日続伸し、2年連続での『高値引け』を記録」した株式市場が、総理の大納会においての「来年もアベノミクスは買いだ」という高らかな宣言を最後に下落基調に転じて来たという「データ」を、安倍総理自身はどのように分析するのでしょうか。

小保方博士の画期的成果を生み出す背景には、過去の実績や肩書、性別に囚われずに、有望な若い研究者に研究を任せたという、「組織の柔軟性」もあったことが指摘されています。安倍総理には、STAP細胞発見という画期的な成果の陰に「組織の柔軟性」があったという事実に気付いて頂き、「柔軟な発想」に基づいて、自らの政策にお墨付きを与えるために、「過去の実績は怪しいが、肩書だけは立派な有識者」を掻き集める自身のやり方を改めて行くことを期待せずにはいられません。

「柔軟な発想」を見せるのか、「この道しかない」と「硬直した思考」を貫くのか。「景気回復の実感を全国津々浦々まで届けられる」かどうかは、安倍総理自身の発想の「柔軟性」に懸かって来ているようです。

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近藤駿介

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