デフレ圧力和らぐ?~「需給ギャップ」報道が生み出す内閣府、マスコミ、国民の間の「認識ギャップ」

「内閣府は24日、日本経済の需要と潜在的な供給力の差を示す『需給ギャップ』が2013年10~12月期にマイナス1.5%まで縮小したとの試算を発表した。7~9月期より0.1ポイント上昇し、4四半期連続で改善した。リーマン・ショックが起きた08年7~9月期以来約5年ぶりの高い水準で、供給過剰が少しずつ和らぎデフレ圧力が弱まりつつある」(25日付日本経済新聞 「デフレ圧力和らぐ」)

1週間前の17日に発表された2013年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値が実質で前期比0.3%増、年率換算では1.0%増と、民間予測の中央値(前期比0.7%増、年率2.7%増)を下回ったことで、日本経済新聞は、アベノミクスの成果が表れて来ていることを印象付ける必要を感じたのかもしれません。

25日の日本経済新聞の一面を「需給ギャップ」に関するニュースが飾るのは、ほとんど記憶にありません。それも、「需給ギャップ」がマイナスからプラスに転じたというのなら、一面を飾るに相応しい経済ニュースかもしれません。しかし、内容は「7~9月期より0.1ポイント上昇し、4四半期連続で改善した」という、一面を飾るにはそれほどインパクトのあるニュースとは言えないものでした。

「17日発表した昨年10~12月期の実質成長率は年率換算で1.0%と潜在成長率を上回り、需給ギャップが改善した」(同)

この記事では、実質成長率が潜在成長率を上回ったことが「需給ギャップ」改善の原因であると伝えています。このように、わざわざ、GDP成長率は想定よりも低かったが、潜在成長率は上回っており、「需給ギャップ」は改善してデフレ圧力は弱まって来ていることをアピールしようとしているところに、アベノミクスの効果を再認識させておきたいという日本経済新聞の意思が表れているような気がします。

ところで、この「需給ギャップ(GDPギャップ)」について内閣府は次のような解説を加えています。

「GDPギャップ=(実際のGDP-潜在GDP)/潜在GDP
GDPギャップのマイナスは供給に対して需要が不足していることを意味する。この推計に当たっては、潜在GDPを『経済の過去のトレンドからみて平均的な水準で生産要素を投入した時に実現可能なGDP』と定義している。」(内閣府 ホームページ)

内閣府が示している数式をみて明らかな通り、「需給ギャップ」を計る際に重要なのは「潜在GDP」です。「需給ギャップ」がマイナスということは、「実際のGDP」が「潜在GDP」よりも小さく(「実際のGDP」<「潜在GDP」)いて、分子がマイナスになっているということです。

そして、「潜在GDP」が大きくなり、「実際のGDP」との差が広がれば、「需給ギャップ」のマイナスは拡大することになります。

この記事内で「内閣府は経済の巡航速度を示す潜在成長率を0.7%程度とみている」と記されているように、現在、内閣府は日本の潜在成長率を0.7%と見ていますが、潜在成長率が高くなれば、潜在GDPは高く見積もられ、反対に低くなれば潜在GDPは低く見積もられることになります。

内閣府が「需給ギャップ」を算出する際に使用する日本の潜在成長率を0.7%に変更したのは、2013年4-6月期からです。2013年1-3月期まで、日本の潜在成長率は0.8%として「需給ギャップ」が算出されていました。

「潜在GDP」は「経済の過去のトレンドからみて平均的な水準で生産要素を投入した時に実現可能なGDP」ですから、「需給ギャップ」の算出に使われる「潜在GDP」が小さめに見積もられるのは、民主党政権時代から低迷していた日本経済状況を反映したものといえます。しかし、民主党政権時代の負の遺産によって「潜在GDP」が小さめに算出され、それによって、アベノミクスによる「需給ギャップ」がお化粧されている可能性があることには注意が必要です。

もちろん、「需給ギャップ」の改善をアピールする日本経済新聞は、2013年4-6月期から日本の潜在成長率が0.8%から0.7%に0.1%引き下げられたことは、全く報じていません。日本の潜在成長率が0.1%引き下げられた際には一切報道せず、潜在成長率が引き下げられたことによって改善された可能性のある「需給ギャップ」の0.1%改善は一面で報じるというのは、経済報道として客観性が保たれているといえるのでしょうか。

ところで、「需給ギャップ」は、内閣府が「最近、公表された指標についての解説や注目される経済トピックスを中心に紹介」するための、「今週の指標」のなかで公表されているものです。あくまで「公表された指標についての解説や注目される経済トピックス」ですから、「需給ギャップ」を公表するページの最後には、「本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない」とディスクレマーが記されています。

要するに、「需給ギャップ」は内閣府が責任をもって算出した公式統計ではなく、あくまで「担当参事官(経済財政分析-総括担当)付」の個人的見解ということです。ニュースとしてほとんどインパクトがないうえ、内閣府の公式統計でない「需給ギャップ」を一面で報じてはいけないということはありませんが、コンプライアンス上は、内閣府の担当参事官の個人的見解に過ぎないことは、記事のどこかで触れておいた方が賢明のような気がします。

「需給ギャップ」を公表する内閣府とそれを報じるマスコミ、そしてそれを受取る国民。この三者の間には、少しずつの「認識ギャップ」が存在しているようです。

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近藤駿介

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